オーソニガラム

 三人の博士は、その星を見つけた。遠く西の空に輝く、未知の星だ。それを見つけたのは彼らだけだった。彼らは、その星の下に何かあるに違いない、ひょっとすると偉大な王がお生まれになったのかもしれない、と意気投合して旅に出た。

 端的に言えば、彼らは酔っていたのだ。王の誕生という伝説的な空想にではない。強い酒に、だ。彼らが星を見た夜は、彼らの国では祝日だった。博士達はめいめいひどく酔っ払って、視界に、ある筈のない星が瞬いたのだ。

 酔った勢いで旅に出た彼らは、酔いの覚める暇もなく、飲みに飲んで、飲み続けた。なぜなら、酔いが覚めそうになるたびに、美しく瞬いている星が消えかけてしまうからだ。偉大な王に謁見するため、酒を切らしてはいけない。

 やがて彼らは身も知らぬ地の果ての国で、ひと組の慎ましやかな家族に出逢った。大工の夫とその妻、そして健康そうな赤ん坊だ。

 酔い痴れた彼らの目には、その赤ん坊の笑顔がひときわ美しく見えた。家の中を照らす数本の蝋燭の灯が、赤ん坊の頭に冠のように輝いた。

「我らが王となるお方だ」

 三博士は跪き、困惑する夫婦にも構わず、赤ん坊を祝福した。赤ん坊は酒の臭いにも嫌そうな顔をせず愛想良く笑う。博士達は感激のままその家を辞し、帰り道にはもう酒は飲まなかった。輝く星は、もう必要なかったのだ。

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