マークタイム・マーチ!

作者 鉈手ココ

君は八峰スワンが飛ぶのを見たか

  • ★★★ Excellent!!!


部活、あのどうしようもなく窮屈でかけがえのない集団。

高校生のマーチングを題材にした本作は、一つの目的に向かって進むという人生における大切な時間を嘘偽りなく鮮明に切り抜いています。

舞台となる八峰高校吹奏楽部、通称『八峰スワン』は最近は全国大会出場が遠のいている、ぐらいのポジション。
第一章の主人公となる相良さんは、かつて八峰スワンでマーチングの要・ドラムメジャーをしていた従姉妹に憧れて入部する。目指すはもちろんドラムメジャー。しかし、そう簡単にはいかない。始まったのは激しく鮮烈な日々。大変な練習、人間関係、どうしようもないこと、それら全部を抱え込んで彼女は一歩一歩進んでいく。大会の結果は、ドラムメジャーの夢は――。

この明快な筋に迫真の肉付けが成されているのが本作の素晴らしいところ。八峰スワンの面々でも同じ全国大会出場という目標を持ちながらも個人個人で温度感やスタンスの違いがあったり、気に入らないところがあってもお互いの距離感を測り合って腹を割ったりはしなかったり。存分にマーチング強豪校の『リアル』があって、かつ嫌味を感じさせない描写には舌を巻きました。この文章力があって初めて高校生という頃の、いや人生のどの時期にだって現れる、答えが出せない難問に直面した時の暗闇、または何か些細な出来事への屈託のない喜びを味わうことができました。

八峰スワンの名は白いユニフォームと、マーチングコンテスト初出場にして全国大会出場&金賞受賞を決めた年の演目「白鳥の湖」に由来しています。伝説を背負う高校生達は悩みぶつかり色々あっても、全国大会出場への返り咲きという悲願の為一つとなります。身を寄せ合い、一糸乱れぬ動きで飛び立つ白鳥達、その行く先は。
第二章まで読み終えた今、眩しく力強いその姿を応援したくもあり、応援されているような気もする、不思議な満足感です。

この物語を、みなさんも一緒に見守ってみませんか?

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