★★★ Excellent!!! マーチングバンドにかける青春と健気な奮闘 成井露丸 従兄弟のお姉ちゃんに憧れて高校のマーチングバンドに入る主人公。 部活の性質上、初めの数話で登場人物が量的に多く出てきて追い切れるかと、ちょっと当惑しましたが、一章を通じて、じわじわと染み込むようにキャラクターが読み手の中に浸透してきました。物語の展開があり、人間関係が動き出します。 作者がきっと良く知る世界なんじゃないかなと思うのですが、とても解像度の高い部活の描写でヴィヴィッドに物語が紡がれていきます。 第一部の終わりの見せ場と最後の展開で、久しぶりに僕はカクヨム作品でうるっと来てしまいました。 シンプルなレビューですが、以上で! ――笑子! 頑張れっ! レビューいいね! 3 2020年12月31日 22:50
★★★ Excellent!!! 「一人じゃない」だから厳しい、だから楽しい、だから美しく高く、飛べる! 市亀 マーチングバンドという、大人数ならではの迫力と美しさで人々を魅了する音楽。 しかしその裏には、全員で精確に組み上げなければいけないという緊張感があり、ひとつのポジションを巡る葛藤があります。そもそも、大人数で一つのことに取り組むのは、それだけで波乱の可能性を孕んでいます。 そんな歓喜と苦悩、多彩な人物の織りなすドラマを、本格的な音楽・マーチング描写と共に描いているのが本作です。コンプレックスも強みも人それぞれな、けど喋りだすと途端に賑やかなキャラクターたちは、男女問わずキュートな愛しさに満ちています。 それぞれらしく楽しんでしてほしい、しかし全員でのマーチングのためには個人の願望ばかりでも成り立たない……そんな、バンドの中での軋み合いが生まれる中で。 それでも、「みんな」と響かせる音楽だから、踏み出す道だから、こんなに素晴らしい――という意義を、高らかに歌うような物語です。立場どうしの横のつながり、年代を越えた縦のつながり、それぞれが重なってどこまでも熱く眩しく進んでいくバンドの在り方は、とてつもなく尊く映りました。 諦めざるを得ないことが多すぎたこの時代に、それでも進み続けるための、カラフルなエネルギーが詰まった物語です。この行進の続き、一緒に追いかけてみませんか? レビューいいね! 2 2020年12月31日 01:36
★★★ Excellent!!! 君は八峰スワンが飛ぶのを見たか しのびかに黒髪の子の泣く音きこゆる 部活、あのどうしようもなく窮屈でかけがえのない集団。 高校生のマーチングを題材にした本作は、一つの目的に向かって進むという人生における大切な時間を嘘偽りなく鮮明に切り抜いています。 舞台となる八峰高校吹奏楽部、通称『八峰スワン』は最近は全国大会出場が遠のいている、ぐらいのポジション。 第一章の主人公となる相良さんは、かつて八峰スワンでマーチングの要・ドラムメジャーをしていた従姉妹に憧れて入部する。目指すはもちろんドラムメジャー。しかし、そう簡単にはいかない。始まったのは激しく鮮烈な日々。大変な練習、人間関係、どうしようもないこと、それら全部を抱え込んで彼女は一歩一歩進んでいく。大会の結果は、ドラムメジャーの夢は――。 この明快な筋に迫真の肉付けが成されているのが本作の素晴らしいところ。八峰スワンの面々でも同じ全国大会出場という目標を持ちながらも個人個人で温度感やスタンスの違いがあったり、気に入らないところがあってもお互いの距離感を測り合って腹を割ったりはしなかったり。存分にマーチング強豪校の『リアル』があって、かつ嫌味を感じさせない描写には舌を巻きました。この文章力があって初めて高校生という頃の、いや人生のどの時期にだって現れる、答えが出せない難問に直面した時の暗闇、または何か些細な出来事への屈託のない喜びを味わうことができました。 八峰スワンの名は白いユニフォームと、マーチングコンテスト初出場にして全国大会出場&金賞受賞を決めた年の演目「白鳥の湖」に由来しています。伝説を背負う高校生達は悩みぶつかり色々あっても、全国大会出場への返り咲きという悲願の為一つとなります。身を寄せ合い、一糸乱れぬ動きで飛び立つ白鳥達、その行く先は。 第二章まで読み終えた今、眩しく力強いその姿を応援したくもあり、応援されているような気もする、不思議な満足感です。 この物語を、みなさん… 続きを読む レビューいいね! 1 2020年12月30日 20:26