~65~ 花村家
翌日。
天気予報は曇りのち雨となっていたが、見上げる空は雲一つない青空が広がっていた。
「今から羽琉くんのところ?」
玄関先で出掛ける準備をしていた佐知恵に、再婚相手である
「えぇ。だけど今日は羽琉が何か話したいことがあるらしいから、帰るのは11時頃になるかも」
「分かった。気を付けて行っておいで。羽琉くんによろしく」
穏やかに微笑む誠也に、佐知恵もにこっと微笑み返す。
佐知恵が離婚した後も羽琉のために動けるのは誠也の心の協力があるからだ。誠也も佐知恵のように羽琉のことを心配していた。同居することを提案してくれたのも誠也の方からだ。今となってはその提案はご破算になってしまったのだが、その言葉が苦悩していた当時の佐知恵の心に眩いほどの光と勇気を与えてくれたことは言うまでもない。衰弱してても頑として動かなかった羽琉と諦めず向き合うことが出来たのは、誠也の陰ながらの支えがあったからだった。
「あなたも気を付けて行ってらっしゃい」
「あぁ」
手を振って別れると、佐知恵は駐車場へと向かった。
昨日電話で言っていた羽琉の話の内容が気になる。眠れない程ではなかったが、改めて時間を割いて欲しいと言っていた羽琉の口調から、何か重要な話をされるような予感がしていた。
羽琉ももうすぐ20歳になる。子供と大人の境目とはいえ、母親として羽琉の考えや意見を尊重する姿勢を持つことも大切だ。話される内容がどんなことであっても、寛大な気持ちで受け入れる準備をしておかなければならないと心構えしつつ、運転席に乗り込んだ佐知恵は月の光へと車を走らせた。
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