~15~ 再会② ー夢の声ー

「また会えましたね。ハル」

 そう言って目の前の人物は嬉しそうに微笑む。

 陽を受けて輝く金髪は、優月の言っていた通り、目を奪われるほどの「きれいなもの」だった。

「……」

 エクトルを凝視したまま無言を返す羽琉に、エクトルは悲しそうに苦笑し「やっぱり忘れてしまいましたか」と呟く。

「こ、え……声が……」

 信じられないものを見ているかような羽琉を、怪訝に思いながらもエクトルは「声?」と聞き返した。

「声が、聴こえました。多分、あなたの……」

 夢で聴こえた――。

「私の?」

 羽琉の言う言葉の真意が掴めず、エクトルも少し困惑してしまった。

 不安そうな表情や口調から、何か羽琉の中で混乱しているのだと察したエクトルは、座っている羽琉と同じ目線になるようしゃがむと「ハル」と名を呼んだ。

「私のどんな声が聴こえたんですか?」

「……どんな?」

「どんな言葉が聴こえたんですか?」

 そう言えば、どんな言葉だったっけ?

 エクトルから目を逸らした羽琉は、夢の中の言葉を思い出すように探り始めた。

 ――分からない。何かを言われたような気がするが、『大丈夫』という言葉と『羽琉』という自分の名前を呼ばれたこと以外は何も聴き取れなかった。ただ日本語ではなかったと思う。そしてその日本語ではない言葉を、何故か頭では理解していたような気がする。自分を救うような安心する優しい声音。しかしそれ以上は曖昧でよく思い出せなかった。

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