疲れたかお


 

うるさいセミの声すらも快く感じるような青い空だった。


太陽の光がまぶしかった。


ゆれる木の葉。


青空に映える白い壁の家。


どこにでもある、とっておき、と言いたいくらいの、夏の景色。


 だがしかし、景色を堪能するより、私は今の身体の感覚のほうが気になって仕方なかった。


 こんなに熱帯の中にいるのに、ぬぐうほどの汗は出ない。


ただただ、顔も、背中も、身体中がべとべとしていた。


若い頃は、水を頭からかぶったような勢いで、滴るくらいの汗をかいていたのに。


 年寄りの汗かなぁ・・・。何にせよ嫌な汗だった。


 私の母は。


 沖縄の産まれだった。


 だから、こんな日は、母の帰省についていった小さい頃を思い出す。


 私にとっては、食べ物が不味い以外、景色もきれいで素敵な思い出だけど。


 母はいつも疲れた顔をしていた。


 今、手を繋いでいる長女と、背中でおんぶされている二女は(そりゃ暑いわ!)とても楽しそうだけど。


 今度は、私が「疲れた顔」をする番かぁ。


 あの時の母って好きじゃなかったけど。


 疲れた顔もしたくなるわなぁ。


 私は、改めて


 親への距離を、また少し近くに感じたのだった。




 

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