第19話 松江⑤
ダンジョンから外に出された俺は、当然の様にトランスフォームが解け、JKだらけの中で素っ裸で立っている状態だった。
「キャァ変態」
「あ、確かに被ってるね」
「結構大きいかな?」
微妙にメンタルを削られる発言はあったが、さすがに20人の女子高生たちに囲まれた状態で、裸なのは抵抗が有ったので、収納から衣服を取り出して、黙々と身に付けた。
「ここのダンジョンは無事に消えたよ」
と何事も無かったように、みんなに伝えた。
うさ耳先輩達も、その場は空気を読んでそれ以上突っ込んでこなかった。
「なんだか愛美さん凄いの獲得してないですか?」
「うん、転移とか貰っちゃった」
「愛美、ガネーシャの能力は何を獲得するんだ?」
「これって一つしか入れ替えられない? それとも全部でもいいのかな?」
「ミコその辺りはどうなんだ?」
「元々の項目があるだけ全部でも入れ替えは出来るのじゃ」
「それなら、同じ6個だから全部入れ替えの方が良いかもだね」
「うん、そうするよ」
愛美は☆6ガネーシャの能力を持つ☆3イナバニーになった。
それにプラスして、転移能力も使える。
ジャイロブレードの能力が無くなったら、うさ耳に付いてた刃の部分は無くなって、普通に柔らかい真っ白なだけのうさ耳になっていた。
「これで、愛美の耳モフリ放題だな」
「あら? 耳だけでいいの?」
と言いながら胸に手を当てて持ち上げ、なまめかしいポーズを取った。
「愛美さん、誘惑禁止」
里香が、俺と愛美の間に入って視線を遮った。
「これで松江ダンジョンは、無くなったけどどうする? まだモンスター自体は大量にいるし、建物の中に隠れてる人も沢山いると思う。助け出して上げたいとか思うなら、それは自分たちの自由だけど、助けても、今の状態だと食料を用意してあげる事も出来ないから、よく考えて行動しろよ」
「あの、勇気君?」
「愛美どうした?」
「私は今後も勇気に付いて行きたいんだけど、駄目かな?」
「他のうさ耳先輩達はどうするんだ? 愛美抜きで、このままここで生きていくのは難しいぞ?」
「避難所に行くのが一番いいと思うの。みんなもそれで良いよね?」
愛美が、他の先輩達に聞くと「この地域に居ると馬男も普通に存在するから、出来れば他の地域に行きたいよ」
という意見が大勢を占めた。
「俺は、他に知っている街は山口県の防府市くらいしか分からない。防府でいいなら避難所に案内する事も出来ると思うぞ」
「えーと、私がちょっとみんなの意見を纏めて結論出すから、ちょっと待っててもらってもいいかな?」
「解った。ミコと里香はうさ耳先輩達が話している間、周囲を守ってあげてくれ。俺は付近の商店から持ち出せる物が有ったら手に入れて来る」
「うん。了解だよ」
そう伝えて俺は付近の探索を始めた。
ダンジョンの近辺は最初に被害を受け始めるから、店舗の中も他の人間に略奪される暇もなく放置されていて結構な量の物資を確保出来た。
生鮮品は流石に駄目だが、生活用品や保存食、飲料などを一通り収納する。
「防府の状況はどうなってるかな?」
と思い、ダンジョンで手に入れたスキル念話を使って、妹の夢に連絡を入れてみた。
『夢、聞こえるか? これは念話って言う方法で話してる。聞こえてたら俺に返事をするイメージで、頭に思い浮かべれば伝わる』
『お兄ちゃん? え、凄い。電話が通じなくなってるから、もう連絡取れないし、どうしようと思ってたんだよ』
『そっちはどうだ? みんな無事か?』
『それが…… お兄ちゃんが食料とかくれた次の日に、お父さんとお母さんと私市役所追い出されちゃったの』
『え? おい何でそんな事なってるんだよ』
『お父さんが、上司の人にお兄ちゃんのくれた物資の事で、たてついたからだって言ってたよ』
『で、今、夢たちは何処にいるんだ?』
『自衛隊の人が、自衛隊基地に誘ってくれたから、そこに居るよ』
『そうか、父さんは何かそこでも仕事してるのか?』
『うん、自衛隊の人に協力して、市役所と同じように配給のお手伝いとかしてるよ』
『そこは、モンスターからは守れているのか?』
『今のところは、まだ大丈夫だけど、それでも毎日自衛隊の人は、被害が出てるみたいだよ』
『そうか、父さんには連絡しても大丈夫かな?』
『あ、うん。今丁度戻って来たよ』
『じゃぁさ、夢から伝えてくれよ、父さん念話なんてファンタジーな事、いきなりされると、叫び声上げそうだろ?』
『あ、確かにそうかもね。解った、父さんに伝えるから2分後くらいに、念話してあげて』
俺が物資何て持って行かなかったら、大丈夫だったのか?
どうすれば良かったのか、解らないな。
約束の2分が過ぎた頃に父さんの顔を思い浮かべて念話をする。
『父さん俺だ』
『勇気か、無事でよかった。勇気はどうやら他の人達が誰も持って無い様な能力を身に付けてる様だな。この間の支援物資は助かった。ありがとうな』
『父さん、俺が余計な事をしたから、市役所から追い出されたんだろ? ごめん』
『馬鹿野郎、人の役に立とうとして行動した事を謝る必要なんかは何処にもない。自分の行動に自信を持つんだ』
『でも結局は、父さんや夢に迷惑かけたし……』
『迷惑どころか、嫌な上司の居ない場所に来れて、俺は喜んでるぞ。ここでは役所の職員だから奉仕するのが当たり前だろ? みたいな見方する人いないし、何かをすればお礼を言って貰えるからな。給料は出ないが』
『そうか、それなら良かったよ、どうなの今の自衛隊基地は? 支援物資とかは必要?』
『ああ、食料や水は物流センターから自衛隊のトラックが大量に運び込んで来てるから、大丈夫なんだが、衣服や生活用品は不足してるな』
『そうなんだ。そこはスペース的に余裕はあるの? 今女の子を20人程松江で保護してるんだけど、こっちは、死体だらけだからとても暮らせる状況じゃ無くて』
『そうか、恐らく大丈夫だ。連れてきたら何とかなるだろう』
『なぁ父さん達はもう変異してるか?』
『俺達はまだだが、自衛隊の人達はみんな尻尾が生えてるな』
『そうか、父さん達はモンスターを倒さずに居てくれよ。最初に倒すモンスターが何なのかで、その後の状況は結構違うみたいだから』
『そうなのか? 一度勇気の知っている知識を、俺達に教えて欲しいんだが可能か?』
『えーと、まだ俺自身もよく解って無いし、父さんが本当に信頼できるような人だけなら、質問に答える形でなら教えられることもあるかもだから、そっちに女の子達を連れて行った時に、また連絡するよ』
『解った。待ってるぞ』
俺は父さんとの会話を終えると、里香たちの元へ戻った。
そこではなんだか、随分楽しそうにはしゃいでた。
「あ、勇気おかえりー。みんな、勇気の指示に従うって事になったよ」
「そうか、それは良かった。なんだか楽しそうだな」
「うさ耳の刃とかを消す方法が分かったから、これならうさ耳のガールズダンスユニットとか作ったら、アイドルになれるんじゃない? とかの話で盛り上がってたんだよ」
「そうか…… 何だかたくましいな。えーと防府に行く方法なんだけど、愛美の転移能力を使っていけたら良いと思うから少し実験してみよう」
俺は愛美の転移能力を調べるために、近距離で何度かの転移をして貰った。
手を繋いだ状態であれば、複数人数でも同時に転移は出来た。
ラノベでよくあるMPの消費の様な物は無いのかな? 距離や重さの制限はなさそうだけど、今見えてる範囲には行けるが、見えて無い場所をイメージしても転移できなかった。
この能力を覚えてから先で、行った事のある場所が対象になるみたいだな。
その間にも兎や馬は襲い掛かって来てるから、里香とミコが倒しまくっている。
「俺は一度、愛美連れて防府の自衛隊に行って来るから、その間は里香とミコがうさ耳お姉さん達を守ってくれ」
「解ったよ。早く帰って来てね」
安全確保の為に近所のビルの屋上へ一度全員で転移して、俺は愛美と二人でちょっと離れた場所へと移動した。
「愛美、ちょっと大きめのにトランスフォームするから、ビビるなよ?」
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