第67話 旅の指針
「またいつでも来てね! カイルくんはもう無茶しないように!」
店を後にしようとするはるか達をサリアさんは扉まで案内しながら、カイルに注意を促していた。
「セドリックにも同じような事を言われたばかりだ」
「そりゃそうよ! 大体の人はそう思ってるわよ」
「カイル……普段一体何してるの?」
カイルがここまで心配されているのを見ると、私まで心配になってきた。
だからこそ聞いてみたのに、カイルの返答がサリアさんの怒りに触れた。
「別にそんな変な事は……」
「ほら! 自覚がないからみんな心配しているのよ!」
穏やかな表情は一変し、もの凄い形相のサリアさんの声が店中に響き渡る。
「わかったから! 行くぞ、ハルカ」
「あっ! こらっ! またちゃんと顔出しなさいよ! ハルカちゃんまたね!」
「サリアさん、今日は本当にありがとうございました!」
カイルからいきなり手を引かれ、はるかは強引に店の外へ引っ張られながらも、サリアさんにお礼を伝えた。
「筆記具と日記、ありがとう」
「フェザーラパンの素材の金だから気にしなくていい。ハルカのお陰で手に入れたようなものだからな」
あの後、私はすぐに買う決心をした。
そしてはるかの決めた事だからとカイルは何も言わずに支払いをしてくれた。
「まだ日記は書けないけれど、沢山書いて覚えるね!」
「あぁ。やれる事を1つずつしっかりとやっていこうな」
そんな会話を楽しみながら、少し早いが2人は宿屋へと向かって歩き始めた。
***
「ルチルさん喜んでたね」
「いつも世話になってるからな。たまにこうやって食材を運んで恩を返しておかないとな」
フェザーラパンの事を伝え、カイルはルチルさんに収納石を預けていた。
これから仕込むから楽しみにしててね! とルチルさんはウキウキしながら厨房に消えていった。
「さぁ、少し時間もある事だしコルトの町の事を説明するか。それとも精霊獣の説明がいいか?」
「まずは精霊獣でお願いします!」
「わかった」
はるかが勢いよくそう言うと、カイルは笑いながら精霊獣の説明を始めた。
「じゃあもう見せた方が早いだろうから俺の精霊獣を見せるぞ」
「ぜひぜひ!」
「なんでそんなに食い付きがいいんだ?」
「精霊獣って町中で見かけていた不思議な生き物の事でしょ? すっごい気になってた!」
はるかは無類の生き物好きで、ずっと不思議な生き物の正体が知りたかったのだ。
「そこまで好きならハルカの精霊獣にも出会えるかもな」
「どこで出会えるの!?」
「落ち着けって。今回、行く先のコルトの町だ。精霊獣の生まれる町、それがコルトだ」
私の魔法探しの為だけに行くのは少し申し訳ないと思っていたけれど……遠慮なく頼んじゃえ!
そう決断したはるかは思い切ってカイルに頼み事をした。
「ぜひ……ぜひ連れて行って下さい!」
「迷いがなくなったみたいだな。さっきの話で連れて行く気しかなかったから大丈夫だ。ついでに精霊獣を見に行こう」
「やったーーー!! ありがとう! カイル!」
喜びが抑えられないはるかの歓喜の声が部屋中に響き渡った。
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