第52話 気持ちと繋がる魔法
初期魔法の練習の事を思い出して固まっていたはるかだったが、言葉をかけてくれたカイルを見てみると、あぁ……やっぱりな、という表情をしながら立っていた。
「自分も魔法が使える自覚を……持っておこうな?」
カイルからこう言われ、なんだか諭されてしまった気分になったが、言われている内容はもっともだった。
「はい……」
少し恥ずかしい気持ちになりながらはるかは小さく返事をした。
「じゃあまずは武器を用意してくれ」
「わかった」
短い返事をして、はるかは腰元を飾る装飾品を右手で強く引っ張った。
ブチッ!
やはり壊してしまう感覚になり、また少しどきりとしてしまう。
壊れてないよね……?
そんな事を考えている間に自分と同じ背丈の武器が姿を現した。
「これってもしかして……引き千切らなくても変化するのかな?」
はるかはまだ少しどきどきしている心臓を落ち着かせようと努力しながら、気になってしまった疑問をカイルに投げかけた。
「変化するぞ。でもそんなに楽に元に戻せるならそのままでいいんじゃないか?」
こういった事に関しては大雑把なカイルらしい答えが返ってきた。
「うーん……ちょっと心臓に悪いけど、緊急事態の為に慣れておくつもりでやろうかな」
「その考えでいいんじゃないか? いざ、何かが起きた時に不慣れだと困るのはハルカだからな」
そんな事、ないように祈るばかりだわ……。
内心そんな事を考えているはるかの手は自然と力強く武器を握り直していた。
「それじゃ、やり方を説明するぞ。まずはさっきの薬草のイメージをしっかり頭に描け。そして自分の魔力の感覚を体の外に広げていきながら探すんだ。これもイメージでいい。やってみたらなんとなくわかるはずだ」
「イメージね! とりあえずやってみる」
「言葉はなんでもいいが、俺は『探知』と言ってる。ハルカも自分がわかりやすい言葉でいい」
「わかった。ありがとう!」
こうしてはるかの薬草探しが始まった。
まずは左手に収まっている先程の辞書をよく見てみる。
2枚の桜の花びらのような葉を持つ薬草。
それは縁だけが鮮やかな牡丹色をしている萌黄色の葉っぱだった。
これならイメージしやすいかも。
「探知」
はるかもわかりやすい言葉で呪文を呟く。
そして武器を持つ手に力を入れた。
自分の体からじんわりと何かが漏れ出ている感覚に陥る。
その感覚に意識を向け、薬草と広がるイメージをひたすらに頭に描きながらはるかは前を見据えていた。
薬草のイメージはしっかり出来ているのだが、魔力を広げていくなんて事が初めてなはるかは苦戦していた。
うまく広げられないなぁ……。
そう考えた瞬間、魔法が途切れた。
「あっ……! 消えちゃった?」
「何か別の事を考えたりしたか? 慣れないうちは違う事を考えるとすぐ魔法が途切れるから気にするな」
「魔力がなかなか広がらないなぁって考えちゃって……」
はるかは情けなくなって力なく答えた。
「そうか? 初めてにしては上出来だったぞ? 自分は出来ると信じてやってみたらいい。何回やったって構わない。練習あるのみだ」
いつも前向きな言葉で励ましてくれるカイルの言葉はとても温かい。
「ありがとう。もう1度、やってみる」
「焦らなくていい。無理もしなくていい。ゆっくり取り組む事だ」
「うん!」
カイルの励ましのお陰で先程の気落ちした気分は嘘のように無くなり、はるかはまた薬草探しに集中した。
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