第45話 驚きの仕掛け
先程のセドリックさんの呪文で姿を変えた武器はキラキラとはるかの腰回りを輝かせた。
「わぁ……!」
その綺麗さにはるかは感嘆の声を上げていた。
棒状の部分がチェーン状になり、先端の葉のような部分と石の部分はだいぶ小さな手の平ぐらいの大きさの装飾品となっていた。
「どうじゃ? この姿もまた綺麗じゃろ?」
「はい! とっても綺麗です……」
武器の時とはまた違う美しさではるかは魅入っていた。
「石の装飾がすぐ触れるように利き手の方に下げておくのを忘れずにの」
「どういう事ですか?」
「いきなりの戦闘に巻き込まれた場合はその装飾部分を思いっきり引っ張るのじゃ。今、やってみるかの?」
そう言われてはるかは少しだけ戸惑う。
かなり細いチェーン状なので千切れてしまうのではないか?
と、思い少し不安になったのだ。
そんなはるかに対して優しく微笑みながらセドリックさんが力強い後押しをしてくる。
「思いっきりやるんじゃぞ? もし壊れてもここにはわしがいる。だから安心して壊すがいい」
「……はい!」
その言葉に勇気づけられ、はるかは本当に思いっきり引っ張ってみた。
すると——
ブチッ!
「あっ!」
「おっ?」
「ほほっ」
それぞれの声が響いたところで、千切れたチェーンはそれが当たり前だというように元の武器の姿に戻った。
「び、びっくりした……」
「驚かせたくてあえて言わなかったんじゃが、良い表情じゃったな」
「こんな仕掛けだとは誰も思わないだろ」
本当に壊してしまった驚きではるかはまだ胸がどきどきしていた。
そうしている間にも先程の楽し気な声ではなく、優しげな声でセドリックさんが続きを説明してくれた。
「いきなり襲われたりしたら魔法なんて使っている暇はないからの。作り手か持ち主の魔力に反応するようになっておるんじゃ。仮に——別の人間が引き千切ろうと思ったら千切れんから安心しておくれ」
「すごい仕掛けですね!」
「そりゃ便利だな」
「ほっほっほっ。もっと褒めてくれて構わぬよ」
セドリックさんは満足気にうなずき、更にこう付け加えた。
「もう1つ便利な事があるんじゃ。ハルカさんはもう収納石をお持ちかの?」
「……いえ、まだです」
名前からして収納道具の事……だよね?
そんな事を思いながらはるかは返事をした。
「それはよかった。是非この先端の石の部分を使ってやっておくれ。収納できる容量は普通の収納石より少なめじゃが、これも簡易な収納石じゃ。大切な物をしまっておくといい」
「ハルカと一緒に選ぼうと思っていたが……この武器、便利すぎだろ」
「そうじゃろ? まぁ収納石はいくつあっても問題ない。また必要になった時にでもカイルと選んでおくれ」
「はい! 素敵な武器をありがとうございます!」
何もかもが嬉しすぎて、はるかは溢れる想いを込めて感謝を伝えた。
「なんのなんの。この子はハルカさんに出会うために生まれてきたんじゃ。こちらこそ礼を言おう」
出会うもの全てに意味がある事をこんなにも教えてくれる世界に、はるかの心は温かさで満たされていった。
そんなはるかにセドリックさんから課題が出される。
「それじゃもう1度、その武器を腰の装飾品に戻してみるかの」
その言葉にはるかは一瞬、固まってしまった。
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