第43話 あなたを待っていた
少しだけそわそわしながら鍛冶屋の中を見ていたはるかに、扉が開く音が聞こえた。
「少し待たせすぎたかの?」
そんな事を言いながら武器選びが終わった様子のセドリックさんがひょっこり姿を現した。
ただし、武器に隠れて手足だけしか見えていない。
「あ、あの! お手伝いしますよ?」
はるかは思わず声をかけた。
セドリックさんよりも背丈のある武器達を運んでいるので、どうにも大変そうだったからだ。
「ありがとう、優しいお嬢さん。だけれど平気じゃ。ドワーフ族は皆、力自慢じゃからの」
そう言うと本当に軽やかな足取りでこちらまでスタスタ歩いてきた。
ドワーフ族だったんだ!
はるかは漫画やゲームも好きな方だったので多少の知識はある。
ファンタジー等でよく見かける存在なので普段なら驚かない。
だが、実際目の前に現れたら話は別である。
感動で見つめ続けていたはるかを他所にカイルがセドリックさんに声をかけた。
「結構あるな。もう少し少ないかと思っていたが……」
カイルの声が少しだけ驚きを含んでいるような気がした。
「ハルカさんの事を色々考えていたらついつい持ってきてしまったんじゃよ。中々楽しい時間じゃった」
そう言いながら持ってきた武器達をセドリックさんは丁寧に壁に並べ始めた。
本数は8本。
見本となった棒状の武器はとてもシンプルな見た目だったのだが、目の前の武器達は様々な装飾が施されていた。
「さて、ハルカさん。ここからは何も考えなくていい。見た瞬間、わかるはずじゃ」
セドリックさんからそう言われたが、急には難しい。
何故なら先程見た時に装飾に目を奪われていたからだ。
少し、目を閉じてみようかな。
はるかはそう思い、目を閉じ、自分を落ち着かせるようにゆっくりと深呼吸してみた。
……よし。
そしてはるかが目を開いた瞬間——
先端に花の蕾のような石の装飾が付いている武器が光ったように見えた。
……呼ばれた?
そう思わずにはいられなかった。
「ほうほう。また気難しい子に呼ばれたもんじゃの」
セドリックさんにも何か伝わったようだった。
「わかるんですか?」
「わしが作った子達じゃからな。なんとなくわかるもんじゃ」
その言葉を聞いてカイルの方が先に反応した。
「セドリックの特製を出してくるなんてよっぽどだな」
「久々にこんな可愛らしい黒の魔法使いに出会えたからの。ツンツンしている黒の魔法使いには飽き飽きなんじゃ。そして——何か期待をしてしまうような存在に思えるんじゃよ」
はるかは最後の言葉に何か特別な響きを感じた。
「それはどういう事ですか……?」
「いずれわかる事じゃろうな。この子が反応したのが何よりの証拠じゃ。今のわしから言える事は……」
「「言える事は?」」
カイルも気になったみたいで声が揃う。
「この先わしとあまぁい情熱的な関係になるかもしれん、とだけ言っておこうかの!」
ほっほっほっ、と楽しげに笑ってはぐらかされた。
自分で見つけろって事だよね……?
はるかがそう考えだ瞬間——
「このっ……クソじじい!!」
何故かカイルの方がブチ切れていた。
「冗談でも言って良い事と悪い事があるだろっ!」
「おぉ! そんな感情がまだ残っておったのか! 人間らしくなったの、カイル!」
怒れるカイルから楽しげに身をかわすセドリックさんを、はるかはただただ眺めていた。
このお爺ちゃん侮れない。
そう思った瞬間、はるかは笑い声をもらしていた。
「ふふっ。カイルもまだまだなんだね」
「そうじゃそうじゃ! 精進するんじゃぞ!」
「あのなぁ……」
その言葉を聞いた瞬間、カイルの怒りは鎮まったようだった。
呆れた声に諦めの感情がこもった気がした。
「うむうむ。今日は珍しいものが沢山見れたの。ほほっ」
セドリックさんはそう告げると、優しい眼差しではるか達を見つめながらこう続けた。
「さぁ、この子を手に取ってみておくれ」
その言葉にはるかは先程自分を呼んでくれた武器へと手を伸ばした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます