第194話「その頃、猛獣達は?II ①」
天然物の高級ジゴロシャケが無自覚に甘い言葉で魔法を解いた所為で弱っているツンデレラに「君が欲しい」「私のものになってくれ!」などと言った上、最終的に、
「僕と契約して、秘書になってよ!/人◕ ‿‿ ◕人\」
と、詐欺まがいの手口で雇用契約を結んだのと同じ頃。
猛獣達はと言うと……。
その一、セシロクマ。
彼女はその頃バイエルライン中部まで侵攻し、二度目の大規模な会戦で再び大勝利を挙げて本陣で勝利の報告を受けていた。
「セシル様、申し上げます!バイエルライン中部方面軍は壊滅!反対にお味方の損害は軽微!加えて敵本陣ごと第三王子を捕らえました!お味方、大勝利にございます!」
本陣に走り込んできた伝令役の若い軽騎兵の将校が、息を切らせながらも歓喜に満ちた表情でそう告げた。
「そうですか、ご苦労様です」
しかし、何か考え込んでいるセシルは事務的にそう言っただけだった。
「あ、あのセシル様、バイエルライン軍を追撃致しますか?」
それを見た伝令や参謀達は首を傾げた後、その中の一人がそれ以上何も言わないセシルに確認した。
「え?……ああ、放っておきましょう。逆らう者には容赦をせず、降伏するものは丁重に扱うという我々の強さと寛容さを逃げた先で宣伝してくれれば、更に敵の士気は下がり、寝返る者が更に増える筈ですから」
すると彼女は普段の野蛮さからは考えられないような、まともな意見を述べて皆を感心させた。
「「「おお!なるほど!」」」
そう、実はこの女、忘れがちだがシャケさえ絡まなければ非常な優秀なのだ。
特に軍事に関わることは。
「では事後処理に掛かります!」
「はい、宜しくお願いしますね」
そして参謀の一人がそう言うと、自軍の再編や補給、捕虜の扱いなどの事後処理の為に参謀達は一斉に動き出したのだった。
一方、一人本陣に残されたセシルは……。
「いやー、それにしても順調順調。このまま行けば一週間もしないうちにアレを手に入れられそうですね……ククク」
怪しく笑っていた。
「あ、あのー……セシル様?」
と、ここで再び伝令がセシルの判断を仰ぎにやって来た。
だが、彼女はそれに気付かず自分の世界に浸ったまま、相変わらず怪しく笑っている。
「……そうなればリアン様もきっと私のことを……グフフフ……きゃー!リアン様!そんなの恥ずかしい……」
「あ、あの!」
正直、この若い伝令は目の前でぶつぶつ独り言を呟きながら身悶える変態シロクマから逃げ出したくて仕方なかったが、そうもいかず再度声を掛けた。
「……ふぁ!?ん?なんですか!?今いいところだったのに!」
すると怪しく笑っていた一部スリムな美少女型の変態はやっと彼に気付き、キレ気味に返事をした。
「は?いえ、あのー……」
「もう!だから何ですか!」
セシルの反応に思わず言い淀んでしまった伝令は、不機嫌さ隠そうともしないセシルに先を促された。
「はい、実は敵の第三王子を捕らえたのですが……」
彼女の剣幕に気圧されながら伝令は、おずおずと報告を始めた。
「それで?」
「奴は非常に用心深い性格らしく、小姓など数十人の側近全員が非常によく似た顔をしておりまして……」
「なるほど、大量の影武者がいて見分けがつかないと?」
「は、はい……それでどうしたものかと……」
そして、困り顔の伝令が用件を告げ終わると……。
「え?どうしたもこうしたもありませんよ。答えは一つじゃないですか」
するとセシルは不思議そうな顔をしながら言った。
「え?それはどういうこ……」
そして……。
「首を刎ねさない」
まるでお茶の準備をしておいて、ぐらいの軽さで処断を命じた。
「え!?あ、あの、一応、相手は王子ですが……?あと、申し上げている通り、その王子を見分けることが……」
それを聞いた伝令は慌ててそう言ったが、セシルは気にせず、
「ん?だから全員の首を刎ねればいいじゃないですか」
サラリと合理的だが人道的に、そして美少女ヒロイン(スリム&シロクマ型)として非常に問題がありそうなことを言った。
「は!?全員!?……でございますか!?」
更に慌てた伝令が血相を変えて再びセシルに聞き返したが、
「では万事宜しくお願いしますね?私、この先の計画(という名の妄想)を考えるので忙しいので」
彼女はそれをスルーし、再び妄想世界へと帰って行ったのだった。
「は!?ちょっ、セシル様ー!?」
その後、斬首されそうになったバイエルラインの第三王子は慌てて正体を明かし、取り敢えず一命を取り留めたのだった。
皆様、こんにちは、そしてお久しぶりです。
作者のにゃんパンダでございます。
まずは、お詫びを。
更新が遅くなりすみませんm(_ _)m
最近少し忙しく、また体調不良など色々重なり書けませんでした。
ですが、本日から復活しますので宜しくお願いします(^^)
というか、今復活しないと折角皆様にご応募頂いた『夏休み企画』が『秋の感謝祭』になりかねないので(笑)
本日も本作をお読み頂き、ありがとうございましたm(_ _)m
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