第149話「番外編 バッドエンド集③」
『……では健闘を祈る。エル・プサイ・コングルウ』
マリーに軟禁されたシャケが、暫くのちにその生涯を終えた瞬間、謎のメッセージが彼の魂に届いた。
「ふぁ!?」
そして場面は戻り、三度目の婚約破棄騒動の直後へ。
シャケが記憶を取り戻して廊下に立ち尽くしているところから。
気がつくと、私は一人で廊下の真ん中に立っていた。
ん?あれ?これは一体……というか私は何をしていた?
だが、まずは……、
「俺は狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院……◯真だ!(キリッ)」
と、言わなければいけない気がしたので、取り敢えず痛いセリフを決めポーズと共に言ってはみたものの……。
さて、えーと、これからどうしようか。
あ、そうだそうだ。
今、私は追い詰められているのだった。
確か私は……。
中略。
「では、私が助けを求めるべき相手は……」
【選択肢を選んで出荷先を決めて下さい】
①クリア済み
②クリア済み
③ここは第三者である私付きのメイド、レオニーに意見を聞いてみようかな?
④いや、ここは愛を貫き、アネットと裁きを待つべきか
⑤??? まだ選択出来ません
⑥??? まだ選択出来ません
さてと、何だかセシルやマリーなどの身内は危険な匂いがするから……ここはやはり、第三者に相談するべきだよな!
ということでここは、③を選択だ。
……あれ?クリア済みが増えた?
「ここは第三者である私付きのメイド、レオニーに意見を聞いてみようかな?」
きっと第三者である彼女ならば、良いアドバイスをくれるに違いない!
では、早速レオニーを探しに行こうか。
……。
…………。
………………。
約三十分後。
私は父上の私室付近に来ていた。
実はさっき偶然近くにいたホルスタインみたいなメイドに聞いてみたら、
「レオニー様ならぁ、シャルル陛下のお部屋の方へ行かれると言ってましたぁ」
と、眠そうな目をしながら教えてくれたのだ。
そして、私がその付近の廊下まで来ると、ちょうどレオニーがいた。
さて、声を掛けるか。
「レオニー、少しいいかな?」
「これは殿下、私などに何かご用で?」
私が声を掛けると、彼女はいつも通りの無表情で答えた。
では早速……。
「ああ、実は相談が……うわっ!」
だが直後、私はタイミング悪くそこで脚をもつれされ、バランスを崩して前に倒れ込んでしまった。
そして、咄嗟に手を突き出すような格好になった、次の瞬間。
ムギュっと、両手で弾力と柔らかさを兼ね備えた物体に手を付き、なんとか転ぶことを免れた。
だが、それは重要ではない。
当たり前だが、その物体とは……。
「……」
レオニーの胸部なのだから!
つまり、現在私はレオニーの胸を両手で鷲掴みしている状態なのだ。
「ふぁ!?」
と、私がそれを認識した瞬間、遅れてレオニーのいい匂いと、掴んでいる物体の感触がこれでもかと伝わってきて、私の脳はパニックを起こした。
「……」
ゆっくりと顔を上げれば長身のレオニーが無言のまま、まるでゴミを見るような目をこちらへ向けていた。
「わあっ!レオニー、すまない……今のは事故で……」
その恐ろしい視線に射抜かれた私は慌てて彼女から離れ、弁明を試みた。
しかし、
「……殿下」
無常にも返ってきたのは絶対零度の声。
「ひぃ!?」
私はそれが聞こえた瞬間、悲鳴と共に自らの死を確信した。
そして、レオニーは淡々と話し出した。
「私はお仕えしてから今日まで、貴方様の愚行を数多く見て参りました。しかし、女性を泣かすようなことだけはしない、という点だけは評価をしておりました」
「……そ、そうか」
と、そこまで冷たく言った彼女は、ここで急に雰囲気を変えて……いや、そんな生易しいものではないな。
はっきりと、露骨に殺気を垂れ流し始めた。
「……だが、まさか……それが私の思い違いだったとは……。全く、私も見る目がないな」
と、ついでに口調も変わった。
あ、これヤバいヤツだ……。
「……」
私はそう悟ったのだが、レオニーが放つ殺気に当てられて逃げることも出来ず、そのまま話を聞くしかない。
「あのガサツで乱暴で身体の一部がスリムでも我々のような下々に対して優しく接して下さるセシル様を不必要に傷付けたばかりか、血迷って突然臣下の女に手を出そうとは言語道断!」
「ひぃ……」
「最早、身分など関係ない!貴様のような下半身で物事を考える腐りきった天然ジゴロ男など、この暗部一の使い手であるレオニー=レオンハートが直々にここで成敗してくれる!」
そして、レオニーはまるで時代劇のように啖呵を切った。
「成敗!?」
ふぁ!?
上様か!?仕事人か!?
よくわからんが、なんかカッコいいぞ。
まあ、成敗されると身としては冗談ではないが。
「最期に言い残すことはあるか?」
私がバカなことを考えていると、レオニーは指をポキポキと鳴らしながらそう聞いてきた。
なるほど、私程度は素手で十分、刃物は不要という訳だな。
ではなくて!言い残すこと!?
ええ!?
辞世の句?
遺言?
えーと、PCは絶対に起動せず、速攻でハードディスクを破壊してくれ!とか?
って、違ーう!
でも言い残したいことと言われてもなぁ。
うん、わからん。
もう、いいか。
どうせ私はここで死ぬのだ。
あ、でも最後にちょっとだけいい思いが出来てよかったな、不可抗だけれども。
ああ、最初で最後の……。
「……人生初めての女性の感触、柔らかかったな……はっ!」
あ、ヤバ!
無意識に口に出してしまった。
「ほう……」
私の正直過ぎる思いを聞いたレオニーは、今日一番の冷たい視線で私を射抜いた。
おいおい、そこは鈍感系主人公みたいに「え?何だって?」とか言っておけよ……。
「あ!いや、それは違っ……」
が、私のセリフは彼女に遮られ、
「貴様という男は……最期の最期まで……死ね!」
無常にも死刑執行を告げられた。
「ま、待てレオニー!……ああああああああああ!」
その少し後、現場からはボコボコにされた瀕死のシャケが発見された。
バッドエンド③『シャケのタタキ』
猛獣図鑑No.3
獅子ニー(学術名ジュンジョオーデ=セクシーナ=オンナスパーイ)
獅子ニーは、イヨロピア大陸中部に生息する強力な戦闘力を持った肉食獣である。
特徴は他の猛獣達同様にリアン鮭の持つ特殊な成分を摂取しないと生きていけない点である。しかし、この生物の場合は成分が不足しても凶暴化せず、しょんぼりとするだけである。
また、セシロクマやコアクマリーなどの攻撃的な猛獣とは違い、この生物は理性的な上、かなり純情である。加えてこの生物は、そもそもリアン鮭を捕獲しようという発想がないばかりか、逆にいつか自身を捕食して欲しいという乙女チックな幻想を抱いている。
なお、これは未確認の情報であるが、本人も知らない双子の妹が存在するらしい。
キャラクター解説
レオニー=レオンハート 二十三歳 最強無敵のお色気多めのスパイ(純情派)
ではクイズの答えから。
正解は、オー◯ーロードのソ◯ュシャン=イプシロンです。勿論、レオニーは金髪縦ロールではありませんが。あと、意識はしていなかったのですが、レオニーの人格的にはナー◯ラル=ガンマが近い気がしました。
で、隠密モードは、スターオー◯ャン3のネ◯=ゼルファーがモデルです。
次回はアネットですが……ごめんなさい。
彼女は全てにおいてオリジナルキャラなのでクイズはお休みですm(_ _)m
さて、気を取り直してレオニーの紹介ですが、彼女は元々脇役の一人で終わる予定でした。ですが、第36話「コーヒーブレイク③」が終わった辺りで、読者様方からかなり良い反響がありましたので、脇役からサブヒロインへと昇格させました。それからはご存知の通り、皆様の応援もあり、今や本作人気No.1ヒロインの座をめぐりセシロクマとシノギを削っております。
今後も彼女には存分に活躍して貰う予定ですので、ご期待くださいませ。
あと、彼女の魅力についてご意見を下さった皆様、どうもありがとうございましたm(_ _)m
あ、そうだ!折角ですからファンサービスということで、レオニーの水着回やラッキースケベを増やして読書様方に媚び媚びして……ん?またまた誰か来た?ふん、もう騙されないぞ!誰がドアを開けるもんか!……え!?窓から!?……嘘だって!そんなことしないよ!…………ああああああああああ!
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