第112話「祝勝会⑧」
マリーが熱血指導?を終え、そこから飲み直し、少し経った頃。
マリ・アネだけで話が盛り上がり、一人暇になったリゼットは、いつ間にかライムバック氏とナイフ投げで遊んでいた。
その横で、今度はアネットがマリーに同じことを尋ねた。
「ねえマリー、そういえば逆に聞きたいのだけど、マリーは王子様とどんなことしたいの?」
マリーは少し考えた後、語り出した。
「え?そうですね……まずはデートですね」
「うんうん」
そして、今度はうっとりした表情になり、話を続けた。
「で、私は沢山お義兄様に甘えるのです!抱きしめてもらって、頭を撫でてもらって、キスしてもらって、そして……」
「そして?」
「一緒に添い寝して貰いたいですね」
と、マリーがそこまで言ったところで、
「……ねえ、アタシの時と言ってること違くない?」
アネットがジト目でツッコミを入れた。
「それでいいのです!私はまだプラトニックな愛でいいのですよ」
が、マリーは平然とそう答えた。
「えー……」
「何か文句でも?私は他のメス共と違って、ちゃんと頭の中で物事を考えてから行動しているのです」
「まあ、確かにそうね」
「そして、私は計画的に愛を育む予定なのです。何故なら私は、自分だけでなく、全員の利益を考えていますから。それらのことを考えた上で、私はじっくりとお義兄様との距離を縮め、いつかセシロクマを抜き去る予定なのですよ」
と、マリーがそこまで自分の考えを述べたところで、
「ねえ、マリー。聞いて?」
アネットが静かに話し始めた。
「何ですか?」
「この際ハッキリ言うけど、貴方、可愛げがなさ過ぎると思うの」
そして、ストレートにそう告げた。
「な!?この無礼者!世界一可愛いマリーちゃんに向かって何てことを!」
当然、プライドが高く、可愛さには誰よりも自信があるマリーは大激怒だ。
「ええっと、見た目の話じゃなくてね?なんて言うか……こう、もう少し年相応の無邪気さ?とか純粋さ?素直さ?みたいなのがあってもいいと思うの」
が、アネットはそれに怯まず、話を続けた。
「は?意味がよくわからないのですが……」
マリーは怪訝そうにそう呟いた。
「確かに理性的に動けるのは凄いと思の。けど、それをマリーぐらいの女の子で考えたら、なんか不自然なのよ。それに……」
「それに?」
「あんまり無理してると、疲れちゃうわよ?」
そこで、アネットが心配そうな顔になった。
「う……く、こ、このアネットのくせに!何をわかった風な口を!私は『あの時』自分の甘さを捨てると決めたのです!子供らしさなど、とっくの昔に砂場に埋めてきましたよ!」
アネットにハッキリそう言われてしまったマリーは……今まで見たことがないほど激昂した。
「ねえ、聞いて?たまにでいいから、その張り詰めたものを緩めてほしいの。じゃないと、いつかマリーが壊れちゃうわ」
怒り狂うマリーに、優しくアネットがそう言うが、彼女はそれでも頑なにそれを受け入れようとはしない。
「それでも構いません。たとえ自分が壊れても、お義兄様や、大切な人達の為に尽くすと決めたのです!もしそうなっても後悔など……」
と、マリーが自分の悲壮な覚悟を吐き出したところで、
「ダメ!絶対ダメ!そんなのアタシがさせないんだから!」
「もぎゅ!」
アネットが叫び、マリーを抱きしめた。
「ねえ、辛くなったら辛いって言っていいの。疲れたら休んでいいの。ね?だから、無理しないで?そんな時は、私を頼って?ね?」
そして、優しく語りかけた。
「アネット……」
「さっき、マリーがアタシのことを認めてくれて……嬉しくて、なんだか救われた気がしたの。それに頼って欲しいって言ってくれたのも、凄く嬉しかったの!だから……マリーも、アタシを頼って?ね?」
「……わかりました」
「マリー!」
そして、再び、ぎゅう!っとマリーを抱きしめた。
「もぎゅ」
「話を聞いてくれてありがとう……それじゃ、飲もっか!」
「はい!」
こうしてお互いの欠点を指摘し、理解し合った二人は、更に友情を深めたのだった。
そして、それから他愛のない話をしながら飲み続けて、暫く経った頃。
「……そこでぇ、セシロクマがぁ……ふみぅ」
と、何を言いかけたマリーが、そこであざとく、そしてゆっくりとアネットの方へ倒れ込んだ。
「もぎゅ……もうダメれすー」
マリーはアネットの胸に顔を埋めながら、力無くそう呟いた。
「マ、マリー!?大丈夫?」
「マリー様ぁ!?」
二人は突然マリーがダウンしたのを見て、慌てたが……。
「くぅ……」
「あ、寝ちゃっただけか」
「ふぅ……」
静かに寝息を立て始めた彼女を見て、一安心。
「でも、なんで?……って、ああ!それ、ポン酒じゃなくてショーチューじゃないの!?ちょっと!てんちょー!」
そこでアネットが原因に気付き、ライムバック氏に詰め寄った。
「ははは、すまん……。あまりにいい飲みっぷりだったから、遂な」
と、彼は苦笑しながら頭をかいた。
「師匠ぉ、困りますよぉ。でもぉ、取り敢えず大丈夫そうなのでぇ、良かったですぅ」
「ええ」
と、二人が安心したところで、突然背後から声がした。
「さて、宴もこれでお開きですし、帰りましょうか」
「「え!?」」
二人が慌てて振り返ると、そこには平常運転のレオニーがいた。
「「レオニー(様ぁ)!?」」
「何ですか?そんなに驚いて?」
「ア、アンタ何で……」
「そうですよぉ!」
訳がわからず、二人はレオニーに説明を求めた。
「全くリゼット、貴方まで……ほら、よく言うでしょう?『他人を欺くにはまず味方から』と」
そして、彼女は薄く笑いながら答えた。
「「ま、まさか!?」」
「本当は直ぐにお連れしようと思っていたのです。しかし、今日のマリー様は本当に楽しそうにされていたので、気が済むまで自由にさせて差し上げようと思ったのです」
「アンタ、意外に優しいのね」
「さあ、どうでしょうか」
と、レオニーは肩をすくめてから、
「あ、そうそう、マリー様は兎も角、貴方達はムチ打ちとパイルドライバーのどちらか好きな方を選ばせてあげますから、明日までに考えておいて下さいね」
直後に凄くいい笑顔で、幅の無い選択肢を二人に突き付けたのだった。
「「!?」」
「さてと、ではライムバック先生、私達はこれで失礼致します」
と言って、彼女は代金を渡した。
「ああ、お疲れさん。気をつけてな」
「はい、あと……また近いうちにお手合わせ願えますか?」
「おう、もちろんだ!待ってるよ」
「ありがとうございます、先生。では参りますよ、マリー様」
ライムバック氏に挨拶を済ませたレオニーは、おねむのマリーにそう言った。
「ふみぅ、帰るのー?」
「はい」
マリーはそれに、無意識にあざとく答えた。
「わかったー、もぎゅ」
そう言ってマリーは、何故かアネットに抱きついた。
「「「え?」」」
そして、幸せそうに彼女の胸に顔を埋めた。
「フカフカー」
「ちょっ!マリー、帰るわよ?」
と、言ってアネットはマリーを引き剥がそうとするが、
「いやー!」
寝惚けた彼女は頑なに離れようとしない。
「我が儘言わないの!ああ、それにあっちにもっとフカフカなのがあるわよ?」
と、アネットはレオ・リゼの方を指差したが、しかし。
マリーはチラリとそちらを見たあと、プイッと横を向き、再びアネットに抱きついて言った。
「いやー!アネットのがいいのれすー!レオニーのは夢も希望も詰まっていない上にー、物騒な感じがして嫌なのれすー」
「……物騒?」
「あと牛女のはー、大きいだけれー、弾力がたりないのれすー」
「まだ垂れてないのですぅ……」
そして、二人して凹んだ。
「ねえ、マリーってば!」
「ふむゅー、お母様ぁ……」
「「「……」」」
普段は悪魔のような彼女が見せた、天使のような顔に三人は苦笑した。
「フフ、仕方ないわね。じゃ、一緒に帰りましょうか」
そして、アネットは慈母のような優しい笑みを浮かべ、マリーの頭を優しく撫でたあと、そう呟いた。
その直後、マリーが……。
「うみぅ、みんな……パイルドライバーの刑なのれすー……」
「「「え!?」」」
皆様こんにちは、作者のにゃんパンダです。
本日で、読者様参加型企画の居酒屋編及び、年末年始の連続投稿を終了致します。
年末年始の忙しい時期にも関わらず、多くの感想等の応援をありがとうございました!
お陰で、何とか走りきることができました。
皆様には感謝しかありません。
さて、今回の企画ですが、私としては可能な限り、読者様のリクエストを反映させたつもりですが、もの足りなかったらごめんなさいm(_ _)m
全ては未熟な私の所為です。
正直なところ、自分以外の方が考えたテーマで話を書くというのは、新鮮な感覚で楽しかった反面、非常に大変な部分もあり、凄く良い経験になりました(^^)
こんな私の気まぐれ企画にお付き合い頂き、ありがとうございました。
あと、リアンと鉢合わせる、その後宿屋へGO!、等のリクエストをくれた皆様、叶えられなくてすみませんでした。
話の構成上、まだ彼女達とリアンが顔を合わせる訳にはいかず、泣く泣く不採用とさせて頂きました。
そして、ダイアクマリー、セシロクマのようなアネットの新しいアダ名をつけたら?というリクエストも頂きましたが、ごめんなさい!期間内に思い浮かびませんでしたm(_ _)m
もし、どなたかアネットの良いあだ名が有れば教えて頂けると嬉しいです。
長くなりましたが、最後にもう一度お礼を。
このような突然の企画を応援して頂き、本当にありがとうございました!
そして、長文をお読み頂き、ありがとうございました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます