第87話 獣人国の王と王妃

ブリュンヌと共に王と王妃の寝室に入った。王のプライベートルームだ。


(しかし他人に見せる事は無い部屋のはずなのに、なんて豪華な部屋なんだ)


綺麗で清潔に保たれた天蓋付きのベッドに眠る王と王妃はやせ衰え微かに息をしている状態だった。


ソウタは鑑定のゴーグルで王と王妃を鑑定する。

(やはりペストにかかっているようだな)


そして懐から八尺瓊勾玉やさかにのまがたまを取り出した。


「クロリス」

ソウタがクロリスに声をかけるとクロリスは頷き八尺瓊勾玉やさかにのまがたまに魔力を流す。


八尺瓊勾玉やさかにのまがたまから闇が溢れ出て王と王妃を包み込んだ。


「な、な、何をしている!」

「王を守れ!」

「下郎! ただではすまさんぞ」

王の護衛が騒ぎ出した。


「ああ、ブリュンヌ集中出来ない。このままでは治療出来ないかも知れないぞ。護衛達を抑えてくれ」

(まあ、いきなり闇が王と王妃を包めば焦るのは分かるけどね。普通治療や回復するのは聖魔法だから光が包むからなぁ。だけど、下郎とは酷い言われようだよ)


「分かった!」

ブリュンヌは両手を広げて護衛達が向かって来るのを止める。


「これは治療だ。今、父上と母上を治療しているのだ。邪魔は許さん」


「何をおっしゃいます。明らかに王様に害を与えているではないですか!」

「一刻の猶予もありません」

「その賊どもを捕えて王を助けるのだ」

「姫こそそこを退けて下さい」

「ええい! やむを得ない」

「姫! 御免」

護衛達はブリュンヌを突き飛ばしてソウタ達に迫った。


「ちょと! 治療してるんだってば」

「落ち着いてよ」

モモカとナナミが慌ててソウタを庇いソウタと護衛の間に割り込むが、護衛達はモモカとナナミも突き飛ばし剣を抜いた。


「リャンゾウ!」


(任せてキュ)


リャンゾウが護衛達の前に躍り出ると雷撃を放った。


バリバリバリバリ!!!


いつもより多目に出たようだ。


(モモカとナナミに酷い事をして許さないキュ)


倒れる護衛達。


王と王妃を包む闇は王と王妃の身体の中に入り込み消えていった。

「ふぅ。治療は終わったけど………」

後ろを振り返りため息のソウタ。


倒れている護衛達。


突き飛ばされたブリュンヌとモモカ、ナナミがソウタに駆け寄る。


王と王妃は規則正しい呼吸となり安らかに眠っていた。


「父上! 母上!」

ベッドに眠る王と王妃に抱きつくブリュンヌ。


「この回復薬を飲ませて下さい」

ソウタはブリュンヌにヤコイケ印の回復薬を手渡した。


「え! 信じられない」

「治ってる……」

「ペストを治療出来るなんて」

「奇跡よ」

「奇跡だわ」

「せ、聖者様……」

執事とメイド達がヒソヒソと話している。


「聖者様、有難う御座いました。王都に到着されてすぐに治療もされてお疲れでしょう。お部屋に案内しますので、本日ほごゆっくりお休み下さい」


(治療以外で疲れたよ)


執事がソウタ達に声をかけ、メイドに案内されてソウタ達は客室に向かった。

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