第84話 獣人国王城

「あああああ、いいからそこを退けええええええ!」


バキッ!

ドゴッ!


ブリュンヌは熊の獣人とサイの獣人を殴り飛ばした。


「はあ、はあ、はあ、こんなところで待ってる時間は無い! 一刻も早く父上と母上を治療して貰わないと間に合わないかも知れないだろう! お前ら責任を取れるのか!」


「はぁ、本当に我が国の者達は……、強い者には従うが弱者には厳しいのが、悪いところだ」


「聖者様達はブリュンヌ様や我々が束になっても敵わない実力だぞ」


「えええええ!」

「そんな、まさか……」


ペストマスクの従者の言葉に驚く、サイと熊の獣人。


「儂等と力比べして貰えんかね」

「うんうん、ブリュンヌ様より強いなんて信じられん」


「はぁ、お断りします」

(なんでここまで来て戦わないとダメなんだよ)

サイと熊の獣人の言葉にため息まじりで拒否するソウタ。


「そこをなんとか」

「是非、実力を見せて──」


スパパパーン!


「そんな事はしている暇は無い!」

キラキラした目をしてソウタを見るサイと熊の獣人にブリュンヌは平手打ちをした。


「いやいや、暇があっても戦わないよ」


「さあ、急ぎましょう」


サイと熊の獣人を置いて、ブリュンヌは森の中を進み、ソウタ達も後に続いた。


獣人国の王都は人影が見えず閑散としていた。

(ペストが大流行していて、出歩く人も少ないのか)

ソウタ達はその不気味な街中を急ぎ足で通り過ぎる。


暫く歩くと、獣人国の王城に着いた。

(城って言うか……、屋敷だね)


木造の大きな屋敷には、お寺の門に似た屋根付きの大きな三門があり、その門の前にも二人の門番が槍を持って立っていた。


門番は象の獣人とキリンの獣人。その巨躯が冥界の門を守るケルベロスのように何人たりとも通さず、そんな偉容が溢れていた。


そこに遊びから家に帰る子供のように、トテトテトテとブリュンヌが駆け足で駆け寄る。


(自分の家に帰るだけだもんね。恐れなんてある訳無いか)

それを見守るソウタ一行。


「ブリュンヌだ! 今帰った。そこを退け!」


「おお、ブリュンヌ様。お帰りなさいませ。どうぞお通り下さい」


ブリュンヌが通るため、横に避ける象の獣人とキリンの獣人。


「しかし、その者達は通せませんな」

ソウタを睨むキリンの獣人。


(ふむ、そりゃそうだよね。近所の子が遊びに来たのとは訳が違う。王城に知らない人を黙って通すなら門番の意味が無いよな)


「いや、この方達は聖者御一行。王と王妃の病を治療して頂くためにブリュンヌ様がお願いして来て頂いたのだ。失礼は許されませんぞ」

ペストマスクの従者の1人がソウタとキリンの獣人の間に入った。


「聖者?」

訝しむ象の獣人とキリンの獣人。

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