第78話 ペスト医師3

ペスト医師の一人が衛兵達に魔法で火球を飛ばした。


「ぐあっ」


慌てて火球を避けた衛兵。

火球は衛兵の後ろにいた住民に当たった。


「すまん。大丈夫か」

衛兵は住民に走り寄り、火を消して回復薬をかけて抱き抱える。


「くっ……」

住民はペスト医師を睨む。


「そこを退け! 聖者を引き渡さないと町を燃やすぞ」

ペスト医師の言葉に衛兵達は戸惑い後退る。


「待て!」

ソウタは衛兵達を掻き分けペスト医師の前に現れた。


ソウタの足元には雷獣のリャンゾウ、隣にはドリアードのクロリスがいる。


その後ろにナナミとモモカが心配そうな顔で、だが武器を持って続く。


「聖者! 俺達と一緒に来る気になったか?」

ペスト医師達の中央でリーダーらしき者がソウタに声を掛ける。


ペストマスクで顔は見えないが、「面倒を掛けるな」と言いたいような、イラついた感情が声に出ていた。


(コイツら本当に傍若無人だな。衛兵に攻撃して国家間の問題にならないのかな?)


「俺はお前らについて行く気はない。こんな事をして只で済むと思っているのか?」


ソウタはリーダーらしき者から目を逸らさず告げた。


「ははは、そんな事は知らん! 俺達は俺達のやる事をやるのみだ。聖者よ、一緒に来て貰うぞ。おい、連れて来い」


リーダーらしき者は周りのペスト医師に命令すると、周りにいたペスト医師がソウタに近付きソウタの腕を掴もうとした。


屈辱の表情でソウタとペスト医師達を震えながら見ている衛兵達。


「聖者様、すいません。町が燃やされるのは……」


ドカッ!


ソウタは近付くペスト医師を殴り飛ばした。


ペスト医師は鳥の嘴型のペストマスクを着けていて、ペストマスクの目の部分は黒く瞳が見えない造りになっていた。


その事が幸いとなりソウタからすると、ペスト医師はモンスターと何ら変わらぬように感じていた。


モンスターであれば、いつも狩っている存在だけになんの躊躇もなく攻撃出来た。


「行かないって言ったら行かないぞ! クロリス! リャンゾウ! 頼んだ!」


「承知しました」

「分かったキュ」


ソウタの言葉にクロリスが右手を斜めに振り上げた。


すると、ペスト医師達の足下から蔦が生えてきて、ペスト医師達を拘束する。


「なに?」

驚くペスト医師。


「何だこれは? 魔法か!」

慌てるペスト医師。


「ちっ、こんなモノ!」

強引に蔦を引き千切ろうとするペスト医師。


「燃やしてやる!」

魔法で燃やそうとするペスト医師。


そんな奴らをリャンゾウの雷撃が襲う。リャンゾウが光り放電する。


「ぐあっ……」

「ふぐぅ……」

ペスト医師達は次々と倒れていく。


バチイイイイン!!


「起きろ!」


ソウタは倒れているペスト医師のリーダーに近付き頬を平手打ちした。


「うっ、うう……」

蔦に絡まれたペスト医師が目を覚ます。


「くっ……」

ペスト医師はソウタを恨めしそうに見上げた。

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