第44話 コエザとコヤマザ

「クックック、コヤマザどうするのじゃ? 買取の金額で言えば冒険者ギルドが1番不利じゃのう。元々冒険者ギルドにソウタは良い印象をもってないしのう」


とコエザは冒険者ギルド長コヤマザに言う。


(確かに、元々冒険者ギルドで買取した素材を、錬金術ギルドや商人ギルドに売ってた訳だから、直売した方が高く売れるに決まってる)


「ぐぬ、しかし冒険者ランクが──」


「ほう、ランクはダンジョン攻略の実績だけで、上がるはずじゃが、それ以上にあげるつもりか? そんな事は冒険者ギルド全体で許されないはずじゃがのう。最もソウタは自分のランクアップなんて、どうでも良いと思ってるぞ。なんたって子爵様じゃからのう」


(確かに冒険者ランクが上がるメリットって無いんだよなぁ。指名依頼なんて面倒なだけだし、お金に困って無いし、名誉なんて要らない)


「ふぐっ……」


「そうそう、と言う事は1番仲の良い我々錬金術ギルドで、買取させて貰う方向かな?」


「いやいや、我々商人ギルドもソウタ男爵には、何かと便宜を図ってますからなぁ」


「くっ……」

冒険者ギルド長コヤマザは押し黙る。


「まあ、冒険者ギルドの事情も分かるのじゃ。Dランク冒険者として登録しているソウタが、ダンジョンを攻略したのは公然の事実。冒険者ギルドの本部からも報告を求められておるのじゃろう」


「くっ、そうなんだ」


「まあ、これまで一緒にこの都市を支えてきた仲間じゃ、条件によっては、妾がソウタを説得して、冒険者ギルドに買取させても良いのじゃ」


(コエザさんに交渉は任せてるから、全く問題ないよ)


「お! その条件とはなんだ」


「採取士ギルドではのう。この度のダンジョン立入の件で、冒険者ギルドと同じランク制を取る事にした。採取士ランクE~Sじゃ。Dランク以上の採取士が『翠露の迷宮』に入れると言う事じゃ」


「ふむ、それがどうした?」


「だがのう採取士ギルドはこの都市にしかない。将来他の領地や他国へ行くことになった場合、採取士ランクは他では全く使えんのじゃ。そこで、採取士ランクと同ランクの冒険者ランクを採取士に発行して欲しい」


「この先、ずっとか? それはのめる条件では無いなぁ」


「勿論、エルダートレントの魔石だけじゃ無い、該当ランクに上がる為のモンスターの素材を冒険者ギルドに渡すのじゃ」


「成る程、実質冒険者ギルドの受付を採取士ギルド側で行うと言う事か……、カモリナがそちらに行ってるから、問題は無さそうだな……。良しカモリナがいる内はその条件を認めよう。但し、採取士ギルドの受付が変わった場合は、別途話し合いの上で決めるなら了承しよう」

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