第30話 遺跡4日目と攻略


 白い光に包まれほんの数秒が過ぎたころ、今までとは違う場所に移動していた。


 サトルは周囲を警戒するが、探索に魔物を示すサインはない。


 すると3方向から誰かが歩いて来るのを察知した。


「サトル!」


「サトルさん!」


「やっと会えたな」


「みんな大丈夫だったか?」


 1日ぶりに4人が揃った。みんなの精神状態を心配したが、それどころか誰も疲れなど見せずご機嫌な様子。


 そして4人はそれぞれここまでの経緯を語り合い、それぞれの無事を確認した。


「ところで、みんなはどんなスキルを…」


「待った!」


 マッキーがみんなのスキルを気にかけたところで、サトルの探索にモンスターが映し出された。


「突然現れた感じだな。かなりデカイやつがいる。この先か…」


「ヤバそうか?」


「もう少し近づかないとわからないが、今のレベルでもやれると思う。あの魔物に比べれば微々たる魔力だ」


 ここまできて撤退はない。そもそも転移続きで来た道すらわからないのが本音でもある。



 サトルは迷わずに告げた。


「行こう」




 先に進むと厳かな雰囲気の空間が出てきた。高さはおよそ20mほどだろうか、石造りの装飾された壁と柱が連なり、いかにも古代遺跡といった雰囲気だ。


 その中を進むが、音もなく風もなく4人の足音だけが響いている。



 300mほど進むと大きな扉が目の前に現れた。


「対象のモンスターはこの扉の先だ。他に道はなく、おそらくこいつを倒せば道が示されると思う。用意はいいか?」


 3人は無言で頷き覚悟を決めた。




 サトルが扉に触れると自動ドアのように重い扉が開いていく。そして祭壇の上にドラゴンのような巨大な生物が座っていた。


 4人が部屋に入ると扉は締まり、ガチャっと音を立てて鍵が閉まった。その音でドラゴンは目を開き4人を一瞥している。



「こいつは、ドラゴンでいいんだよな?」


「見た目は日本のゲームやアニメで見るようなドラゴンだな。この星の生き物かどうかは疑問だが、俺たちを待っていたかのようにも思える。」


 サトルたちは警戒しながらも、ドラゴンに向けて足を進めた。


「ワカナ、俺が合図を出したらすぐに防御魔法を張ってくれ。エリは攻撃呪文の準備を。俺が相手の注意を引き付けるから、マッキーは隙を見て攻撃。


念のため言っておくけど、もらったばかりのスキルは使わないほうがいい。効果の内容や時間を検証してからの方がいい」


「わかった」


「了解」


「いつでも大丈夫です」



 ドラゴンが立ち上がると、その威圧感はかなりのものだった。


 しかし先の魔物との戦いが彼らを成長させたのか、その威圧に動じることなく4人は見事なフォーメーションを組んでいる。






<ふむ。これなら大丈夫だな>


 マサノリはドラゴンを操作しながら、4人が強力なモンスターとの戦いに恐怖していないことに安どした。


<あんなんで心が折れていたら計画が台無しだからな>


<では仕上げといこうか>



『おぬしらは何をしに来た』


 ドラゴンがサトルたちに話しかけた。が、サトルはそれを想定していたかのように動じることなく答える。


「国の依頼でこの遺跡の調査にきました。この遺跡は何で、あなたは何者ですか?」


『ほほぅ。我が威にひるまぬとは、なかなかのヒト族だ』


『我に名前などない。そしてこの場所の名前など知る由もない』


『我は眠りにつくためこの場に来たのみ。お主らが我が眠りを妨げるならば、その命はないものと思え』



 そうドラゴンが語った瞬間、先ほどまでとは雲泥の差ともいえるプレッシャーが4人を襲った。


(これは凄いな…。ただ悪意も殺意も感じない。つまり…)


「それは失礼しました。国の方には、あなたの存在とあなたの眠りを妨げぬよう、報告させていただきます。そうすれば、ここに誰かが来ることはないでしょう」


『賢明な判断だ。それでいい』


「ひとつお願いがあります」


『申してみよ』


「この遺跡にあなたがいたことを証明するために、何か証拠となるものを持ち帰ることを許してください」


『なるほどな。お主らの発言だけでは信頼されぬというわけか。まぁ良かろう。これでも持っていけ』


 ドラゴンは体をひねると鱗を剥がし、サトルに向けて投げつけた。


「ありがとうございます。ちなみにこの遺跡から出る方法はご存じでしょうか?」


『この先に転移魔方陣らしきものがある。勝手に使うがよい』


 長い尻尾を振った先に空間があり、そこに何かが書かれているのが見えた。すでにドラゴンは首を垂れて眠りにつこうとしている。


「よし行こう」


 サトルは3人に話しかけたが、先ほどのやりとりを見ていた3人は驚きが隠せないでいる。


「あらためて感じたけど、あなたはやっぱり規格外ね。あんなドラゴンを相手に堂々と交渉ができるなんて」


「日本にいれば一流の営業マンになれるぞ。スカウトしたいくらいだ」


 エリとマッキーは半分呆れた様子で、サトルの後を付いていった。


 先の空間にはドラゴンが話していたように、転移魔方陣らしきものが存在している。



「ま、この期に及んでバラバラに転移はないだろう。じゃ行くぞ」


サトルの合図とともに4人は魔方陣に足を踏み入れた。



「4人の新スキル」へつづく


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