第29話 遺跡3日目と合流


 エリとマッキーと同様にサトルたちも大きな岩を見つけた。


 その岩にはやはりこう記されている。



~古の力、ここに託す。なんじ欲すれば、その意を示せ~



「サトルさん… これって…」


 ワカナは昨日の転移トラップをまだ引きずっていることもあり、警戒しているようだ。しかしサトルは待ちに待ったとばかりに笑みがこぼれる。


「これだよ、これ。こんな仕掛けを探していたんだ!」


 サトルはガッツポーズを見せて大喜び。その姿を見たワカナは若干引いたほど。ただ信頼するサトルの反応から、この仕掛けに危険性はないと判断し落ち着きを見せた。


 そんなワカナの気も知らず、サトルは岩の周囲を探りながら何かを探している。すると岩の背面に何かを見つけ、「よし!」と笑みを浮かべている。


「ワカナはソーマジック・サーガの第二章をどこまでやりこんだ?」


 唐突なサトルの質問に戸惑いながらも、ワカナは必死に記憶を整理して答えた。


「やりこんだほどでは…ないと思います。確か地底王国の秘宝を探す内容だったと思いますが、寄り道せずすぐにクリアしました」


「なら、秘宝の先の隠しダンジョンは知らない?」


「えっ、そんなのがあったんですか?」


「第二章は秘宝が表向きのテーマだけど、10週クリアするとその先が出てくるんだ。その先の隠しダンジョンで出てくるメッセージが、まさにこれなんだよ」


「…」


 ワカナはサトルの異常なやりこみを聞いて完全に引いているが、そのやりこみが今の状況に繋がっていることもあり複雑な心境だ。


「俺の予想が間違ってなければ、この先で新たなスキルがもらえるはず。


ボン、マッキーとエリにもこの岩を探すように伝えてくれ。そしてそこに書かれているメッセージを教えてくれるように」


“わかりましたラ”



 すでに同じ岩を見つけていたエリとマッキーからすぐに返事が届いた。そしてその内容は、サトルが予想していたものと一致している。


「2人で手を繋いでくれ。そして岩の背面にある紋様に魔力を流して。おそらく別の場所に行くか、何かが起こるはずだ」


 ボンを通じて指示を出す。


「わかったわ。サトルを信じるわよ」


 エリとマッキーはサトルの指示通りに手を繋ぎ、岩の背面にあった紋様に魔力を流した。


 そしてサトルとワカナも同様に手を繋ぎ、岩の背面にあった紋様に魔力を流した。ワカナは少し顔を赤らめていたが、サトルは気付かない。


 すると白い光があたりに充満し、4人は別々の場所へ飛ばされたのである。






 光が収まると、そこに一人の女性が立っている。


 シーナだ。


 リアル・ソーマジック・ギアを使い、この世界に来る前の初期設定で会って以来である。


 このシーナは実際のゲームであるソーマジック・サーガのチュートリアル画面で登場する人気キャラクター。派手な衣装におとなしめの雰囲気は変わらないが、あの時とは緊張感というかプレッシャーが段違いだ。サトルにとっても、この状況で彼女が出てくるのは想定外だった



『古の力を欲しますか?』


 シーナが静かに語りかける。サトルは意を決して話しかける。


「質問は可能か?」


『どうぞ』


「他の3人は無事か?」


『問題ありません。彼女たちもあなたと同様の状況にあります。いずれ4人が揃うことになるでしょう』


「古の力とは何か?」


『あなた方ではスキルと呼ばれるもの。この場でしか手に入らないものでもあります』


「どんなスキルなのか?」


『以下の中から一つだけ選択してください。取得後の変更はできません』


 シーナが提示したスキルはこの5個。驚いたことにどれも「ソーマジック・サーガ」の世界にないスキルであり、初めて聞くものばかり。


 大まかなスキルの内容は教えてくれたが、見たことも使ったこともないのでその効果ははっきりとわからない。


・ルークス(対象の感覚を鈍らせる)

・レイエン(対象の速度を低下させる)

・ルアイン(対象を睡眠の状態にする)

・ヴィント(対象を混乱の状態にする)

・イリアン(対象の魔法を封じる)


 ただ「古の力」と呼ばれるのだから、スカーレット王女が使っていた魔法と共通する何かであるのは間違いない。


 サトルは悩んだ末に「レイエン」を選んだ。5つの中でもっとも現実的であり、自分の戦闘スタイルとも共通性が高いというのがその理由だ。


『かしこまりました。それでは古の力、レイエンを付与いたします』


 シーナが手をかざすとサトルは柔らかな光に包まれ、頭の中に何かが入ってきたように感じた。


「なるほど…。こんなことが可能なんだな。ありがとう」


『礼には及びません。それではここから先はいかがいたしますか?3人との合流を目指しますか?』


 サトルはボンを通じて他の3人とのコンタクトを試みたが、シーナがいる空間ではボンを出すことができなかった。そのため他の3人の状況はわからないこともあり、何よりも合流を優先すべきと判断した。


「あぁ、他の3人と早く合流させてほしい」


『承りました。それでは4人すべての準備が整い次第、同じ場所へ転移させます』


 シーナはそう語るとその場から消えた。


 数分後サトルたちはそれぞれ新たなスキルを手にし合流したのである。





~~~


「よくやってくれた。スキルの付与は大変だっただろう。ご苦労さん」


「ありがたきお言葉です。ですがマサノリ様が私に気を使うことはありません。あのレベルのスキルでしたらどうということはありません。最近は暇でしたし、もっと使ってほしいくらいです」


「そうだな。久々にメシでも食うか?」


「本当ですか!嬉しいです。ぜひお願いします」


「せっかくだからスカーレットも誘うか?」


「いえ、それだけは無しで。あの女は無しで、絶対に無しで、2人だけでお願いします」




「遺跡4日目と攻略」へつづく


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