第12話 壁を超えるということ


 いよいよ10階層の守護者と戦う。


 3人は前回の戦いでトラウマを植えけられたかもしれない。そこで今回、俺は前面に出ず、また召喚獣のサポートもなく3人主体で戦ってもらうことにした。


 もちろん危険になればサポートすると説明したが、最初にその提案をした時に3人は静まり返る。


「でも、これを乗り越えなければ、その先の厳しい戦いに挑めない、ということね」


 と納得した様子からもその意図を理解してもらえたようだ。当然のことながら、何もアドバイスしていないわけではない。


 相手の攻撃パターン、弱点、そして3人の連携方法などについて提案しているし、何かあればすぐに回復させるし、積極的に自分も攻撃に参加すると説明してある。


「10分で倒そう」


 そう俺が声をかけると、3人は覚悟を決めて守護者の部屋へ足を踏み入れた。



 守護者の部屋に入るのは二度目だが、一度目と違って空気が重く感じた。そして異様な雰囲気に気付く。


(何か変だぞ。鳥の化け物もちょっとごつくなっている気がする。いちおう警戒しておこう)


「マッキー、エリ、ワカナ、もしかしたら前に俺が戦った時よりも強いかもしれない。その場合、遠慮なく加勢する。まずは打ち合わせ通り第1パターンでいこう」


 3人が黙って頷くが、表情は固い。緊張と恐怖が表面を覆っているかのようだった。しかし戦いは始まる。



 鳥の化け物が翼を広げた、そして4人はその違和感に気付いた、明らかに前回出会った時より大きいと。


 だがもう戦いは始まっている。すかさず予定通りに僧侶のワカナが防御魔法スキルである「守りの壁」を全員にかけた。


 前回は数分しかもたなかったようだが、レベルが9に上がった今なら、15分間は全員の防御力アップを維持できるだろう。


「いくぞ~!!!!!」


 戦士のマッキーが戦士スキルの攻撃力上昇を発動、防御力が高いうちに短期決戦で相手の体力を削りにかかる。前回対決した時はレベル4だったが、今はレベル9まで上がっており、攻撃力上昇も前回の1.2倍から1.45倍まで上がった。


 鳥の化け物は防御に徹していたが、激しい斬撃に羽が飛び散る。しかし距離を取り、翼を広げ風魔法を発動しようとした瞬間、魔法使いエリの火球砲弾が炸裂する。


 レベル9でも一度で致命傷を与えるのは難しいがダメージはゼロではない。そして、相手に風魔法を使わせるタイミングを逃すことにも成功した。そして戦士の攻撃が続く。


 それでも鳥の化け物はひるむことなく、脚や翼を使った反撃でマッキーやエリにダメージを与えていくが、絶妙なタイミングでワカナが回復魔法をかけて状況を維持する。


 このローテーションを徹底し、相手に必殺技を使わせずに体力を削り、隙を見て致命傷を与える作戦だ。


 しかし鳥の化け物にいまだ致命傷を与えられていない。時間は過ぎて目標の10分まで残り2分。回復魔法の使用回数から見ても、もう一度ワカナが「守りの壁」を使うのは厳しいだろう。


 この状況を見てナックルは理解した。ソロで戦う時と、4人で戦う時では相手のレベルが違うことを。


 そしてこの強さであの風の刃を使われると、かなりマズいことになることも。


「ここからは自分も参戦する。第2パターンに変更!」


「「「わかった!」」」


 もともとナックルはこの状況を予想していた。ソロで鳥の化け物に挑んだ時、思いのほか手応えがなかったのだ。そしてドロップしたアイテムも、10階層の守護者としてはレベルの低いものであった。


 だから4人で挑んだ場合、難易度が変わる、もしくは攻撃パターンが変わることを想定していた。まさにその状況だったのである。


 そしてナックルたちの第2パターンは、それを想定した速攻撃破パターン。ナックルは周囲に10の火球砲弾を展開。鳥の化け物に向けて発動した。


 この火球砲弾は煙幕が目的でダメージを狙ったものではない。


 そして鳥の化け物に着弾させた後、背後に回ったナックルは翼の根元を傷つけた。このスピードと瞬発力は魔法剣士ならでは。これで風魔法は使えないし、相手の機動力も奪った。


 そこにエリの魔力最大火球砲弾が炸裂、動きの止まった鳥の化け物にマッキーの会心撃が直撃。そして鳥の化け物の叫び声が響き渡り、その巨体が沈んだ。


「これで魔力はすっからかんだ。これで倒せないと…」


「私も無理だわ」


「私も限界です」


 座り込んだ3人は祈るような気持ちで鳥の化け物を見つめていたが、その祈りは叶った。


「おめでとう。10階層クリアだ」


 ナックルが3人をそう称えた瞬間、鳥の化け物は光の渦に消えていく。


 そして4つのアイテムがそこに残されていた。



「ミナ」へつづく

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