第51話 アルフェリズ駅にて
「久しぶりだな」
「ああ」
アルフェリズの中央駅。テレーザが魔導汽車から約束通りの時間に降りて来た。
革の鎧はもうやめていて、最初に会った時の様な白いローブとマント姿に変わっている。
しばらくは王都ヴァルメーロに戻っていたが、何やら話があるという手紙が来たので出迎えに来た。
「今後はどうすることになったんだ?」
「正式に王都に戻ることが決まった。卒業後は新たに編成される対魔族の宮廷魔導士団に属することになりそうだ。
ああいう魔族には従来の手法では対応できないからな」
確かに。バフォメットもだったが、物理攻撃への耐性が半端じゃない。
それに並みに攻撃魔法では大したダメージも行かないようだしな。
あんなのがぞろぞろ現れては敵わないが……一度現れた以上、二度目が無いとは言えない。
対策は必要ってことだろう。
「良かったじゃないか。
あの魔族は文献を調べたところヴェパルというらしい。
海に現れ船を霧と嵐に巻き込み、死者を下僕とする。木を腐らせる能力を持つ海の淀みに現れる魔族。
腐らせるの方については痛い目にあわされて身にしみてわかっている。
しかし事前情報なしでよく倒せたもんだ。知ってたら逃げてたな。
バフォメットよりは高位らしいがあれでも記録に残っている魔族の中では中の上くらいらしい。恐ろしい話だ。
あとから渡された討伐点と報酬も相当だったが、正体を知れば納得だった。
ヴェパルを倒し、次席のローランが自爆をやらかしたから、魔法学園の主席も確定的だろう。
これで思いかなって彼女の能力には正当な評価が与えられたわけだ。
「いつまでこっちにいるんだ?」
俺も今回の戦いで評価も大いに上がった。
あの後もいくつかのパーティから誘いが来ている。当面は仕事に困ることはないな。
「そういえば、新しい触媒を手に入れたようだな」
それには答えず、俺のカタナを見ながらテレーザが言った。
魔道具店の店員に聞いたところによると、これは東方から伝来した武器でこういう片刃の剣はカタナと言うらしい。
長くて腰にさせないので今は背中に担いでいる。抜くのにコツがいるので練習中だ。
「ああ。ていうか、お前が手配してくれたんじゃないのか?」
「私がそんなことをするはずがないだろう」
テレーザが表情を変えずに言う……こいつしかありえないと思うが。
値段だけは調べてみたら青ざめる価格だったぞ。
「なるほどな。お前じゃないのか」
「その通りだ」
すました顔を崩さないままにテレーザが答える。
……あくまで白を切るのか。意味がないと思うんだが
「そうか……しかし困るんだよな」
「何がだ?よい物に見えるがな」
「これはやたらとバカ長くてさ、今までの剣と使い勝手が違い過ぎて困る……」
「えっ……それは、あの」
と言ってテレーザが口をつぐんだ。やっぱり隠し事ができないタイプだな。
気まずそうにテレーザが視線を逸らす
「この私が十分な吟味をしたものに不満でもあるのか?」
「ありがとよ。大事に使うさ」
「……ふん。感謝しろ」
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