第30話 ギルドで起きたこと
「なんだこれは?」
翌日、冒険者ギルドに行ってみると、冒険者ギルドの依頼の掲示板からは討伐依頼が根こそぎ無くなっていた。
というか、空っぽの掲示板なんて初めて見たぞ。
「おや、おはようございます。ライエルさん、それに首席殿」
装備を整えたローランが戦士を従えてカウンターの方から歩いてきた。
「そちらもこれから討伐ですか?」
ローランが薄笑いを浮かべながら言う。
「我々はこれから討伐です。主席殿、負けませんよ」
討伐依頼の紙を見せびらかすようにひらひらさせつつ、ローランが出て行った。
普段はこの時間ならそれなりに居るはずの冒険者が全くいないところを見ると……金を払って依頼を全部そいつらにやらせるようにしむけたのか。
それともギルドに圧力でも掛けたのか。
こういうことがアレクト―ル学園でも起きていたのならば……確かにテレーザが学外での戦いに活路を求めるしかなかったのもわかるな。
しかし。
何とも陰湿に思えるが。貴族なんてあんなもんなのか?接点が無さ過ぎてよく分からん。
苛立たし気にテレーザが床を蹴った。静かなホールに音が響く。
もう一度睨むように掲示板を見た。
護衛や採集の掲示板にはまだ十分に依頼があるが……護衛や採集は時間がかかるし討伐評価は低い。
「なあ」
「なんだ?」
「他の町に行ってみないか?」
アルフェリズの周りにはいくつもの町がある。其処に行けば依頼もあるかもしれない。
「移動にどのくらいかかる?」
「
テレーザの顔に一瞬不満げな表情が浮かんだ。
移動して、依頼を受けても動けるのは翌日からだ。今は1日の差も惜しいんだろう。
「だが、ここで待っていても仕方ないぞ。討伐依頼が次に貼られるのはもう少し先になる」
討伐の依頼は、魔獣の発生があり次第、ギルドに通告があってもたらされる。
この辺は魔獣との遭遇が多いから依頼はなんだかんだで絶えないが、それでも次に何かが現れるまでには間があるだろうし、それに次の依頼の討伐評価が高い案件とは限らない。
「……それしかないのか?」
「それが最善だと思う」
流石に昨日今日で周辺の町の依頼まで手をまわしているなんてことはあるまい。
「それに……俺もお前には目指す場所に辿り着いてほしいと思っている」
この気持ちにウソは無い。
テレーザがしばらく考え込んで頷いた。
「分かった、お前の言う事だ。間違いはあるまい。すぐに移動しよう」
「よし、行くぞ」
次の発車に間に合うといいんだが。
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