第33話 バレンタインって大統領ですか?

 「知らない天井だ。」


 なんてお決まりのセリフで起きてみると真人さんが心配そうに覗きこんでいた。

 うん、やっぱり真人さんの家の真人さんの寝室みたい。


 風邪とか引いてないか心配された。そうだよね、あんなところで寝てたら…


 携帯はやっぱり忘れていたみたい、メールも電話も返しがないのは当然だよね。


 だって玄関越しに着信音聞こえちゃったもん。


 これ以上送っても仕方ないから玄関前で待ってようって、そうしたら留守電やメールの内容に恥ずかしぬと思ったら顔覆うしかないじゃん。


 疲れが祟って本当に寝ちゃったけど。

 それにしてもMAXコーヒーに縁があるよね。


 温めたからと持ってきたのMAXコーヒーだし。

 好きだから良いんだけど。


 ちょっと熱かったのでちびちび飲むことにした。

 その間に真人さんはリビングの方に行ってしまった。


 その行動が何を意味するかわからなかったしその時は止める術がなかった。

 まさかメールと留守電を聞いていたなんて。


 

 「あ、あの。携帯確認した。ごめん、忘れてなければ待たせる事も寒い思いする事も…寂しい思いする事もなかったのに。」

 あ、やっぱり確認されてた。


 「あああああああああ、らめぇぇぇぇぇ」

 らめぇぇぇなんて現実で言う事になるなんて思ってもみなかった。


 「ああああああ、留守電とかメールの内容とか忘れてえぇぇぇぇぇぇぇ」

 いや本当に忘れてーーーー

 今日何度目の恥ずかしぬのー

 そして私、こんなに大きな声出せるんだと自分でもびっくり。


 ぽかぽか叩きましたよ。ダメージにはなってないでしょうけども。

 恥ずかしいんですよ、あんな内容。もう告白みたいなものじゃないですか。


 ……告白……か。うん、もう言える分だけ言っちゃおう。

 「……やっぱり大丈夫。」

 胸に顔を埋めても嫌な気はまったくない。むしろものすごく心地よくて安心する。


 「真人さん、私…私、真人さんの事特別に想ってます。自分ではこの感情が何なのかはっきりわからないけど、妹や三依ちゃんに言わせると、それは「好き」「恋心」だと言います。」


 「それを聞いてもしかしたらそうなんじゃないか…と少し自覚し始めてる自分がいます。だってこんなにドキドキしてる。」

 私は胸から顔を離し真人さんを見上げると…

 真人さんの右手を両手で包み取り…

 自分の胸に押し当てた。


 「ほら、すごく鼓動早いでしょう。」

 いやもう自分でもわかるって。さっきの真人さんもちょっと鼓動早かったし。

 

 

 「こんな言い方はずるいと思うけど、多分好き…なんだと思う。でなければ、男の人とこんなに密着出来ない。」

 だって未だに見ず知らずの人とかは怖いし。今考えると始発で人少ないとはいえ良く電車でコ○ケ行けたなって思う。

 

 「でも…まだ勇気が出ない。話せる勇気が出たら…返事聞かせて欲しい。」

 その時に受け入れられたらもう人生を捧げても良い。そう感じてたと思う。


 真人さんも何か人には言えない秘密があるみたい。

 お互いに奥手っぽいもんね、そうなるに至る原因とかってあるよね。


☆☆☆


 持ってきたガトーショコラをまだ手渡してない事に気付き…

 「お詫びとお礼は本当は建前。私が受け取って貰いたかった。」


 と言って手渡した。

 その意味するものを察して欲しいってさっき告白まがいの事したじゃん。もー。


 

 「おー綺麗なガトーショコラ。雪まで塗してあって…あれ?雪で友紀さんてシャレ?」

 さっそく見破られました。


 「むぅ、勘のいい人は嫌いです。」

 だからちょっと意地悪しようと思ったけど。


 「なんて、冗談です。でも韻を踏んだというか狙ったのは事実です。」

 私にはそういうのは出来ないようです。


 食べる前に真人さんはあちこちの角度から撮影してました。

 初めて貰ったものだし記念にしたいようです。


 それは作った側からしてもそうして保存してもらえるのは嬉しい。

 それに美味しいと言われてさらに嬉しい。

 

 氷雨ちゃんも手伝ってるのですべてが自分の製作ってわけでもないけど。

 2切れずついただきましたが残りは明日食べるそうです。


 あれ?そうすると私はこの流れだと帰る事に?

 それはやだ。といっても何をするわけでもないけど、もっと一緒にいたい。


 「あの…今日は帰りたく…ない。」

 そう口に出していた。

  

 「え、あ、う。着替えとか…ないよ。」

 そうくると思って持ってきてます。


 「下着は持ってきてる。」

 下着と化粧品くらいはね。


 「パジャマは貸して欲しい。真人さんの匂いとぬくもりの詰まったパジャマ貸して欲しい。」

 あ、もちろん洗ったやつで良いんですよ、匂いフェチじゃありませんし。


 異性の家なのに大丈夫かって心配してくれてるけど、私は大丈夫です。

 

 家主が先に入るスタイルは前回大晦日でもあった事だしそれで良いと思ってます。

 

 お風呂を沸かして待ってる間に驚きの言葉を聞くことになりました。

 中学の時会った事あるよねって、舞○駅と利根川付近で。


 「やっと思い出してくれましたか?2度目の時、セーラー服の胸の所に名前書いてあったのに。」

 本当にそうですよ。名前書いてあったのに、やっと気付きましたか。

 15年経ってれば忘れるのが普通かもしれないけど。


 

 「あぁ、うん。そこはまぁ大丈夫。でも友紀さんはもっと前に思い出してたんだね。」

 そう言ってきたので


 「ふふんっ」


 私はない胸張って威張ったのでした。


 

☆☆☆


 真人さんが入ってる間に………


 妹と三依ちゃんにメールする。


 「バレンタインのために作ったガトーショコラを手渡しました。色々あってその前にプチ告白ちっくな事しちゃいました。返事はこちらから待ってもらう事にしました。まだ、あの事を伝える勇気までは湧いてません。」

 「でも、この感情が好きなのかもとは伝えました。何かが変わると良いなと信じてます。それと今日は真人さんの家に泊めてもらう事にしました。もちろん今日何かするなんて事はありません。」

 「そういう事は、過去を話して受け入れられないと前に進めそうにないからです。」

 「真人さんは紳士的なので、今日の事は受け入れてくれました、後は私の勇気次第です。でも、ホワイトデー期待するくらいは良いよね。」


 と、メールをそれぞれ送信した。


 返信はまずは妹から

 「やったじゃんお姉ちゃん。これで越谷さんからも好きだって言われたらお赤飯だね。いきなり無理する事はないし、一緒にいる事が大事だからがんばってね。」

 家族には今まで迷惑と心配かけてたからね。うまくいくかはわからないけど、前には向けた気がする。


 続いて三依から

 「おめでとー。はよ付き合っちゃいなよ。ってこれはヘタレまこPさん次第か。でも大丈夫だと思いますよ。気が早いけど友人代表の挨拶は任せといてください。」

 いや三依ちゃん、まだそんな関係じゃないし。そうなれたらいいなと今なら言えるけど。

 

 もう一通三依ちゃんから。

 「ごちそうさまでした、今日は酒解禁します。」

 アル中でもなんでもないけど、天草家ではあまりお酒を飲まない。

 子供が中々出来ないから色々やってると聞いたからその一環かな。


 あ、そうだ。異性の男性宅に入ったらやっておかないといけない事があった。


 「ベッドの下ー」

 何もない。


 「本棚の本の裏ー」

 何もない。


 「押入れー」

 ざっとみたけど何もない。


 「布団の下―」

 何もない。


 まずい。これただの変態だ。盗賊だ。ド○クエの主人公だ。


 「良かった。あの同人誌みたいにっがなくて。」


 しかし逆に心配になってくる。エロ本一つない事が。

 だが気付きようもなかった。自分がそうであるが故に気付かなかった。

 隣の部屋も越谷真人の所有している部屋だという事に。


 戦利品はそっちの部屋に置いてある事に。

 ただ、そんなにえちぃのは置いていない。

 やっぱり真人も闇を抱えてるので、そんなにそういった事に積極的ではないためあまり購入しない事に。

 

 やがて真人さんが風呂から出てきた。

 私は探索の疲れから動揺している。

 

 疲れてるだろうしゆっくり浸かってと言う、優しいな。

 温泉の素も入れてるって。


 それから私は衣服を脱いでいく。

 下着は小分けの袋にいれて持ってきたポーチへ。

 全裸になった私は自分の身体を見てみる。


 貧相な体型だなと我ながら思う。真人さんがどんな身体付きが好みかわからないけど…


 上から78・57・82が私のスリーサイズである。

 悲しいぜ。人は小柄で良いねって言ってくるけど、上から目線なのわかってるんだよぅ。

 おまたに毛もないし。これ病気?


 注:作者のメインヒロインはみんなこのスリーサイズである。


 GOKURI…


 洗濯機に目が行った。

 こ、この中に……

 だ、だめ。そんな変質者みたいな…


 段々手が勝手に洗濯機の方へ伸びていく。

 そ、そんな右手が勝手に…

 私の右手がああぁぁぁ


 洗濯機の蓋を開けた。

 何故か一番上にYシャツが入っていた。

 右手がそのYシャツを掴みとる。

 左手は洗濯機の蓋を閉める。

 

 だ、だめ……

 そ、そんな…

 左手も添えて両手が掴んだYシャツをだんだん顔に近付けてくる。


 あぁ…私の両手が……

 誘惑に負けました。

 ついにはYシャツが顔に埋もれました。

 Yシャツに顔が埋もれました?

 顔がYシャツに埋もれました。


 すぅ~~~~

 あ、これもう変態だ。

 良い匂い。安心する。温かい。

 だから気付かなかった、真人さんの声に。


 「友紀さーん。友紀さーん、バスタオルとパジャマ忘れてたので洗濯機の上に置いておきますね……」


 ガラガラガラ


 扉が開いて、バスタオルとパジャマを持った真人さんが入ってきたことに。



 「え?きゃあぁぁぁぁぁぁ」

 と思わず後ろを向いちゃいましたけど、この角度お尻丸見えです。


 

 「あぁぁっぁぁごごごごめんなさい。声かけたけど返事なかったので…バスタオルとパジャマ渡すの忘れてたので洗濯機の上にでもおいて置こうかと思って。」


 「だっだっだだだだだだ大丈夫です。減るものじゃないですし。それにまだ入ってない自分にも落ち度はあるので…」


 2人ともテンパってしまった。


 そのため私は慌てて風呂場に入ったため、Yシャツをそのまま持っていた事に後から気付きました。


☆☆☆


 Yシャツを隅に置いて、髪と身体を洗い、湯船に浸かっている。


 やっぱり申し訳ないので身体を洗うタオルは使えなかったので手で洗った。


 おまたは特に念入りに洗った。別に何かをするわけではないけど…


 「うぐぅ、全部見られちゃったよね。」


 全部というのは身体だけでなくYシャツの匂いを嗅いでいたところも含めてである。


 「別に匂いフェチじゃないんだけど、誘惑に勝てなかった。それにやっぱり安心した。」


 むしろTシャツやパンツに顔を埋めなかった自分を褒めてやりたい、とさえ思った。


 Yシャツならまだ言い訳も出来る。


 「そういえば…真人さん、反応してた。」


 ばっちり見られてますよーまことさーん


 「やっぱり真人さん相手だと全然嫌な気がしない。むしろこんな貧相な身体に反応してくれて嬉しかったり。」




 それと一つだけ他に謝らなければならない事があった。


 顔をお湯に浸けてから口元まで出てきて呟いた。


 「私、本当は魔法使いじゃないんだよね……」



――――――――――――――――――――――――――――


というわけで友紀さんサイドでした。

少し変態になってきてどうしよう。

テンパった結果という事でどうですかね。


次回は友紀さんの風呂上り後からになります。


 

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