第25話 友紀さんは生粋のレイヤー魂です。そして女子更衣室は万魔殿と化していた。

 撮影が始まってからは個人撮影に始まりいくつかのペアとかに分かれていた。


 きらきーあんま出番なかったし五木さんがメインで金糸雀…真理恵さんがサブで主に撮影係りになっていたけど。


 雛苺である氷雨ちゃんがやけに俺に絡んでくるので水銀燈・雛苺の撮影が増えていた。


 氷雨ちゃんは4歳故に徐に抱き着いてくる、必然的にそういった撮影が増えてしまうのだが…


 友紀さんが怖い。

 なぜって?


 真理恵さんがハァハァしながら撮影している横で同じように俺達を撮影してくるのだ。


 何がとは言わないが、捲れそうになってるところでは特に。

 コスになるとスイッチでも入るのだろうか。真紅…怖い。

 しかしそこでたまに見せる表情がどこか寂しげで…


 少し離れたところでは翠星石と蒼星石が絡み五木さんに大量に撮影されていた。

 あれ、色々な意味でやばくない?


☆☆☆ 

 しばらく撮影していると休憩とばかりにお昼にする。

 芝生にシートを引いておにぎり等の軽食をたべることになった。


 ん?コンビニとかの食べ物じゃないのか。

 そういや、お昼ご飯は用意するから持ってこなくて良いと言ってたっけ。

 実際進修館の2階には売店があって色々売っているけど。


 これ手作りじゃんよ。

 しかも出してきたの友紀さんなんですけど。


 「あ、あの。この前の運転のお礼も兼ねて作ってきました。嫌いな食材とか聞いてなかったので食べられないものがあったら申し訳ないのですが。」


 照れながら差し出してきたのはお握りと卵焼きだった。


 こういう会場では撮影に時間をかけたいので、みんなおにぎりやパンなど軽いものにする、もしくは食べない人が多い。


 食べてるところも絵になるのでそこを撮影する人もいるけど…


 「特に嫌いなものってないから大丈夫ですよ、というか自分だけ貰っちゃって良いんですか?」


 「ですからこないだの運転のお礼ですので…」

 メイク越しにも赤くなったのがわかる、それは4歳児にもバレるくらいには。


 「それなら遠慮なくいただきます。」

 「おねーちゃん照れてる~ってってれて~」


 子供は素直である。思ったことがすぐ言葉に出るから困ったものだ。

 俺は最初の一つを取って口にいれる。

 あ、ちょうどいい塩梅だ。嫌いなものとか好みについて言った事ないのに。


 「うまい。」

 「あ、ありがとうございます。」


 最後の「ます」辺りは聞き取れないくらい小さな声になっていた。


 一つ目のおにぎりを食べ終わると、次は卵焼きを口にいれた。


 「卵焼きもうまい。ちょうどいい甘さというか。」

 「か、隠し味にMAXコーヒー入れてます。」


 ぐほっ

 吹き出しそうになるのを堪えた、その様子を見て。


 「冗談です。」

 と、笑みを浮かべながら答えた友紀さん、やっぱ可愛い。


 そこで性悪キューピッド真理恵が動いた。


 「ねぇ、あーんしてみたらどうです?私シャッター切りますので。」


 こ、こいつ…

 確かにあ~んは人生で一度はやってもらいたいリストに入ってるけども…


 すると、自分の箸で卵焼きを摘まんで俺の口に持ってこようとする友紀さん…いや真紅がいた。


 あれ?これ何かのスイッチ入った?


 「おにーちゃん、あーんしないとだめだよー」

 幼女の強制ダメだしも入りました。氷雨ちゃんはどんな意味を持って強制してきたのか。


 もう負けた。やるしかない。よく見ると白米さんとみゅいみゅいさんもジェスチャーで煽っていている。 


 「あ、あ~~ん。ぱくっ」


 「きゃー、イベントスチルゲットー。さしずめ「初めてのあ~んはどんな味!?」よっ」


 超恥ずかしいんですけど。それに水銀燈の場合、あ~んは相手を挑発するようなあ~んですよ。


 あ~ん、おめーどこ中だよ?という足立区民のあ~んですよ。


 ほら、真紅…固まってるよ、俺に卵焼きを口に入れたポーズのまま。

 氷雨ちゃんが目の前を手を横に振って意識確認してるよ。


 というかこれ…関節キッスでは?

 ボンッと俺が停止した。


☆☆☆


 その後どうにか再起動した友紀さんは普通に自分の分を食べ始めた。

 あれ?それ関節キッス返しですが気付いてますか…?


 「あ、ご飯粒ついてますよ?」


 と、友紀さんが俺のほっぺについてるご飯粒を取ってくれた。

 そしてそれをそのまま自分の口へ運んでいた。


 あれ?


 こういうのって恋人とか夫婦間であればやってもおかしくはないけど…


 え?え?友紀さん気にしないのかな。

 それとも全然気付いてない?


 「おにーちゃん箸止まってるよ?」

 と氷雨ちゃんが声をかけてくるまで俺はフリーズしていた。


 ちなみにさっきのご飯粒のシーンは真理恵さんにばっしり撮影されていた。

 親指を立ててGJとやっていたからそれは理解出来た。


 その後は普通に食べた、完食した。美味かったし量もちょうどよかった。

 さらについでの話をすると、翠と蒼でもあ~んしていてそれを五木さんと真理恵さんが撮影していた。

 もうお前ら何でもありだな。


☆☆☆


 その後も撮影は続いていたが、氷雨ちゃんはさすが4歳児。

 そろそろおねむの時間がやってきた。


 「私が付き添ってるからみんなは撮影してて。」


 なぜか真理恵さんが名乗り出た。

 隠しているが親指立てていた、何かの合図だろうか。

 それを見た白米さんとみゅいみゅいさんが頷いていた。

 五木さんはやれやれという表情をしていた。


 「そろそろ水銀燈と真紅で撮影させてもらって良いですか?」


 白米さんが言ってきた。


 「あ、あまり無茶な要求でなければ。」


 「そこらへんは大丈夫ですよ。ネタ写真は撮りたい派ですけど、過激なのとか無理強いはしたくないので。」


 白米さんは紳士だった。

 というわけで友紀さんとのツーショット撮影になった。


 「はいはーい。もう少し近付いてー、はい。さーん、にー、いち。」

 パシャパシャ…

 なぜ連写と思った。


 「じゃぁ次はもう少し絡んでみて。密着とまでは言わないけど。手を合わせる感じで。」


 今度はみゅいみゅいさんが指示を出してきた。

 最初は抵抗するかと思ってたけど、友紀さんは俺に近付いてくる。もう息がかかるのではないかと言うくらい。


 そして俺の手を取り、手と手を合わせてきた。

 そこで流し目…


 「いいねー3、2、1」

 パシャパシャパシャ…


 とまたも連写された。


 そんな感じで多少身体が触れ合う程度の絡みで撮影が続けられた。


 結構撮られてたと思う。


 気付くと昼寝から目覚めた氷雨ちゃんも友紀さんのカメラで撮影していた。

 今時の4歳児恐ろしい子。


 真理恵さんが鼻息荒くして撮影していた。氷雨ちゃんの横には五木さんがいてみてくれている。


 真紅地面に寝転がる。水銀燈、それに覆い被る。

 

 ちょ、近い、近い。友紀さんの…


 「あーおねーちゃんにきすしようとしてるー」


 という氷雨ちゃんの発言で真紅…友紀ちゃんがボンッとなりそのまま固まってしまった。


 かくいう俺もあと数cmという距離で固まってしまった。


 当然真理恵さんは連写していた。


 白米さんとみゅいみゅいさんもいろんな角度から撮影していた。


 固まった友紀さん…真紅はお人形さんみたいで超可愛かったと後に証言した。


 まきますか?まきませんか?と聞かれたら巻きますと即答するくらいには。


 あ、次のイベントはまきまきに参加かもしれない。(まきますか?まきませんか?という薔薇乙女オンリーイベントの略)


 

 固まった俺を五木さんがうまいこと起き上がらせ、友紀さんは真理恵さんがうまい事起動させた。



 その後さらなる問題が発生した。


 カナが水銀燈に絡みだしたのだ。普通逆だろと言いたいが。


 「ねぇ…ちょっとだけ…」


 と、悪乗りする金糸雀…もとい真理恵さんがスカート部分を捲りだしたのだ。

 

 「ちょ、ちょっとこの変態妻、旦那助けてー」


 俺の下着…正確にはその上から穿いてる縞パンが露わになる。


 そこをすかさず撮影しているのがみゅいみゅいさんと五木さんだ。


 なぜか複雑な表情をしているくせに連写しまくってる友紀さんもいた。


 「な、なにをするきさまらーーーーー」


 今ならガラ○ドの気持ちが理解できる。


 「アイスソードは貰った。」

 真理恵さんが股間に手を伸ばそうとして…


 パシンッと真理恵さんの頭を叩く旦那・五木さんの姿があった。


 「流石にそれはNGだよ。悪乗りしすぎ。」


 「ちぇ。」


 「確かに私が最初に触っちゃだめだよね。」

 と、俺にしか聞こえない程度の声で呟いた真理恵さん。


 それってどういう意味ですかねー?


 連写しながらも顔を真っ赤にした友紀さんがこちらを見ていた。


 もうボスけてー


☆☆☆☆☆


 「そろそろ3時近いしお開きにしましょう。氷雨ちゃんが参加する条件の一つとして、4時遅くても5時までに帰宅させる事と言われてるそうなので。」


 「では着替えますか。着替えたら入り口付近集合で。」




 ――――男子更衣室にて――――


 「結構色々撮られてましたね。」

 と言ってくるのは五木さん。貴方は今日ほぼ保護者でしたね。


 「えぇ、まぁ。歩とんと貴方の嫁さんですけどね。後で見せてもらうのが怖いですよ。」


 「えーどうしてです?結構色々絡めて私は楽しかったですよ。残念なのは翠と水銀燈の絡みが少なかった事です。私もあーんとかして欲しかった。」


 「いや、あなたは蒼との仔といっぱい撮ってたでしょう。」



 「むぅわかってないなぁ。原作も大事ですけど、アレンジも大事なのですよ。あと個人的に私がまこPさんと濃厚な絡みをしたかった。」

 それはそれで問題発言だなぁオイ。

 

 「あまり濃厚すぎるのはちょっと勘弁して欲しいですけどね。」

 白米さんがぼそっと呟いた。


 実は白米さんとみゅいみゅいさんは付き合っているのだ。

 他の人との過度な絡みは避けて欲しいと思ってるのだろう。

 え?今伝える事かって?


 今まで機会がなくて言えなかっただけでんがな。

 白米さんもメイクを落とせば普通の青年。ぱっと見れば好青年。

 みゅいみゅいさんはぱっと見れば美少女。ただしツイてる。

 少し前に絡みの多い撮影をしていたら、互いに惹かれてそれ以来付き合っているそうだ。


 性行為については…入れて入れられてで二度美味しいとか言ってやがったのを覚えている。

 ただれてるなとは言えない。

 愛の形は人それぞれなのだ。


 「五木さん、嫁の暴走は止めて欲しかったです。もう少しで貞操の危機が…」


 「流石にあそこまでやるとは想定外でしたので遅れてしまいました。申し訳ない。捲るくらいでやめると思ってたんで。」


 「まぁ、ぱんつ下ろされたり股間触られたりまではしてないので良いですが、これ逆だったら事件発生ですよ。」


 「確かに今回は小さな子もいる前だし、やりすぎでしたね。後で言って聞かせます。」

 実際氷雨ちゃんは興味深そうにまじまじと見ていたんだよ。教育に良くないよ。


 「ほどほどにしてくださいね。ぶっちゃけ童貞には刺激が強すぎます。」


 「まこPさんそっちが本音だったかー」

 けらけらと笑うみゅみゅいさん。



☆☆☆☆☆

 

 一方その頃女子更衣室(やや真理恵視点)


 「もう、三依ちゃんいい写真は撮れたけどやりすぎ!」

 ここには友紀・三依・氷雨の三人しかいないので本名で呼び合っても問題ない。


 「あはは、ごめんなさい。調子に乗っちゃいました。」

 てへっと反省しているのかわからない反省をする。


 「真人さんの恥ずかしい…もとい恥じらうシーンが撮れたのはGJでしたが。ただ、それが自分の手で出来なかったのが悔しいというかなんというか。」


 「あー、そのね。友紀さん、お昼にもっと恥ずかしい写真撮れてるじゃない。あ~んとかご飯粒とか…」


 「え?ちょ…え?どど、どういう事?」

 友紀は無意識の行動のようだった。あ~んはともかくご飯粒の方は。


 「ほら。」

 そういって写真を見せてくる。

 そこには確かにあ~んして互いに照れてるシーンと、ご飯粒を取って自分の口に運んでるシーンが動画のように連写で撮影されていた。


 「はふぅっ」


 ボンッと爆発し後ろに倒れ込む友紀。


 荷物の束がクッションとなり頭をぶつけたりはしていない。

 「おねーちゃんが萌死したー」


 「あら、氷雨ちゃん良く知ってるわね。」


 「うん。おねーちゃんにえーさいきょういく?というのを受けてるの。今はオンドゥル語をべんきょーちゅーだよ。」


 ちょっと友紀さん、貴女姪っ娘に何を刷り込んでるの?と思った真理恵であった。

 ちなみに補填する形で親である霙も少し絡んでいた。


 「これで少しはまこPさんの事意識してくれれば良いんだけど。」


 「?」

 首を傾げる氷雨ちゃん。


 「おねーちゃん、おにーちゃんのことすきだよー。だって一緒にねてたしー」


 幼女爆弾投下。


 「それどういうこと?」


 「元日の日にね、おねーちゃんを迎えに行ったら、おねーちゃんの部屋で寝てたー。」


 「同じ布団で?」


 「ううん、おねーちゃんはベッドでおにーちゃんは下の布団でー」


 そ、そう。致してたわけではないのね。大方不安だから一緒に寝て欲しいとかそういう類だったのかな。


 「まえに聞いたけど、おねーちゃん男の人苦手なんでしょー、それなのに一緒に寝てるってことはすきってことでしょー」


 幼女の洞察力恐るべし。私もそう思ってますよ。えぇ。


 「友紀おねーちゃんを応援しましょう。氷雨ちゃん。」


 「うん。」


 こうしてもうすぐ30歳人妻と、4歳幼女の間で友紀おねーちゃんを後押しする会が結成された。


 恐らく次のイベントはバンアレン帯…もといバレンタイン。


 これが私なら自分をチョココーティングして舐めてとかやっちゃうんだろうけど。


 実際やって旦那に引かれたけれど。


 どんな名目にすれば友紀さんは動きますかね。


 運転の御礼は今日のお昼ご飯で返したと思ってるだろうし。


 よし、氷雨ちゃんの面倒を見てくれたお礼という事にしよう。


 「氷雨ちゃん、バレンタインって知ってる?」


 「うん、すきなひとにチョコ送るやつだよね。あとは家族とかに日頃の感謝をこめてとか。あとはお友達にあげるとか。」


 「そうそう。友紀おねーちゃんがおにーちゃんにチョコをあげるように後押しして欲しいの。たとえば今日氷雨ちゃんの面倒を見てくれたお礼とか言って。」


 「そうだねーひさめもおにーちゃんにお礼のちょこつくるー。」


 「氷雨ちゃんと一緒なら友紀おねーちゃんも作ると思うよ。特別良いの作ろう。」


 「みよりおねーちゃんはつくらないのー?」


 「私は自分の旦那のを作るので精一杯なの。だから真人おにーちゃんにあげる分は友紀おねーちゃんと二人で作って欲しいな。」


 「うん。わかったー」


 ふ、ちょろいぜ。

 そして次のイベントが決まったぜ、リアルの方のだけどなナ。


 という会議が女子更衣室で行われてました。

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