第19話 マッサージ(全身コース※一部除く)由弦君のターン
「待ったか? 愛理沙」
「い、いえ……大丈夫です」
ソファーに腰を下ろしていた愛理沙は、風呂から上がった由弦をそう言って出迎えた。
何故か、彼女はそわそわとしていて、由弦と目を合わせようとしない。
風呂に入ったばかりだからか、それともそれ以外の理由か……愛理沙の肌は薔薇色に紅潮しているように見えた。
「……どうかしましたか?」
「い、いや、何でもない」
愛理沙の問いに対し、由弦は少し言い淀みながら答えた。
というのも由弦の目には、愛理沙の姿は大変、艶っぽく見えたからだ。
肌色の面積が非常に多い。
勿論、ビキニ姿をしているというわけではなく、単なる半袖の白いシャツとショートパンツなので健全な“部屋着”ではあるのだが……
ここ最近は肌や体のラインが隠れやすい冬服を着ていたこともあり、相対的に刺激が強く感じられたのだ。
体操服と同じ程度の露出度と言えばその通りではあるが、マラソン大会の時は走る時以外、彼女は上下にジャージを着込んでいた。
走っている時は愛理沙の胸が若干、揺れているところは観測したが、しかしその肢体をじっくりと見たというわけではない。
それに愛理沙が着ている衣服は……体操服よりも薄い。
運動用の衣服である体操服はしっかりした生地になっているのだが、愛理沙が着ている上下の衣服はおそらく部屋着や就寝用の、非常に“ラフ”なものだ。
そのため生地も薄く、愛理沙の体の凹凸がくっきりと浮き出ていた。
それだけでなく、下に着ている白いキャミソールも透けて見えている。
履いているショートパンツは黒色なので下着は透けていないが、しかしその分愛理沙の白い肌が眩しく感じられた。
何より、普段のとてもお洒落な服装とは異なる、ラフで生活感がある……有体に言えば“無防備”な姿は由弦の情欲を駆り立てた。
(……狙ってやっている、のか?)
マッサージしましょう!
などと言って男の部屋に上がり込んで、こんな格好をしているのだから、普通に考えれば狙ってやっているとしか思えないし、誘われているような気もする。
だが同時に愛理沙は若干、天然なところもあるので、本気で素の可能性も否定できない。
「あの、由弦さん? そんなに見られると……」
「あ、ああ……すまない」
どうやら、愛理沙をジロジロと見てしまっていたようだ。
恥ずかしそうにもじもじとする愛理沙。
由弦は軽く謝罪をして、目を逸らす。
(誘っているにしては、この恥ずかしがり方は違う気がするな……)
今のは男を誘惑するような恥ずかしがり方、というよりは男に罪悪感を覚えさせてしまうような、そんな可哀想な感じの恥ずかしがり方だった。
イメージは触れたら壊れてしまいそうなガラス細工だ。
非常に可愛らしいのは間違いないのだが、実際に襲うのは躊躇してしまうような感じである。
(……恰好は狙ってやったけど、いざ俺を目の前にしたら急に恥ずかしくなって、後悔しちゃった感じなのだろうか?)
何となく、これが正解な気がした。
頭は良いが、ちょっと抜けているところがある愛理沙らしい真相である。
まあもっとも、愛理沙がアホな処女だとすれば由弦もアホな童貞なので、本当のところは分からないのだが。
「マッサージ、どうしようか?」
若干、空気が気まずくなったので由弦は誤魔化すようにそう言った。
すると愛理沙は握りこぶしを前に出してきた。
「じゃんけん、しましょう。勝った方が先にしてもらえるということで」
「そうだね」
ジャンケンの結果、勝ったのは愛理沙だった。
「では、失礼します……」
そう言って愛理沙は由弦のベッドの上に、うつ伏せになって寝ころんだ。
由弦の目の前には、薄いシャツ越しに愛理沙の華奢な背中が映っている。
(……冷静に考えると、よく分らない状況だな)
もっとも、由弦と愛理沙の関係がよく分らない状況なのは今更な話だ。
客観的に見れば恋人同士だろう。
そして婚約者同士ということになっている。
そしておそらくお互い両想いだ。
しかし思いは伝え合っていない。
「じゃあ、揉むぞ」
由弦はそう言ってから、愛理沙の肩に触れた。
僅かに触れただけだが、かなり凝っていることが分かる。
やはり胸部に錘を付けて長時間走れば、それなりに肩の筋肉が張るのだろう。
「あんっ……」
親指で少し強めに指圧すると、愛理沙が小さな呻き声を上げた。
痛がっている、というよりは反射的に声が漏れただけのようだ。
「これくらいの力加減で良いか?」
「んっ……もっと、強くお願いします……」
そう言われたので、由弦は体重を掛けながら愛理沙の肩や背中を揉んでいくことにした。
かなり強めに圧力を掛けているが、硬直した筋肉にはちょうど良いらしい。
「んあっ……ン!!」
「……」
相変わらず、狙っているのか、素なのか。
揉むたびに艶っぽい声を上げる愛理沙。
(どうでも良いことだが……愛理沙の胸、今どうなってるんだろう……潰れていると思うけど。痛くないのか?)
そんなどうでも良いことを考えるほど、由弦の理性は若干、溶けかかっていた。
とはいえ、ここはグッと堪える。
今、ここで理性の砦が陥落したら、諸々の計画が台無しになるからだ。
「どうかな? 愛理沙」
「はぃ……気持ちいです……」
とろん、と蕩けた声で愛理沙はそう答えた。
本当に気持ちよさそうだ。
……おそらく、声は素なのだろう。
(打算的にやっている部分と、天然の部分を混ぜないで欲しいんだがなぁ……)
もっとも、そんな部分も愛らしく感じてしまうのは惚れた弱みだろう。
そんな風に脳内で惚気ながら、由弦は愛理沙の右腕を取った。
ぐっと、愛理沙の腕を伸ばしながら掌で背中の右側を押すようにマッサージをする。
「あぁ……それ、好きです……」
一瞬、由弦の心臓がドキっと跳ねる。
「……気に入って貰えて良かったよ」
気軽に好きとか言わないでくれ。
と、そう思いながら反対側の腕を取り、反対側の背中もマッサージをする。
「ここも結構、凝っているね」
「んっ……そうですか?」
少しずつ、由弦がマッサージをする箇所は下へと下がっていく。
由弦は愛理沙の腰を指圧しながら……少しだけ視線を下げた。
そこには年齢の割には大きな……愛理沙の臀部があった。
薄いショートパンツを履いているためか、くっきりと形が浮かび上がっている。
目を凝らすとショーツまで透けて見えるような、見えないような。
(……お尻って、案外、良い物なんだな)
もしかしたら、胸よりも尻の方が好きかもしれない。
由弦はそんなことを思いながらも……さすがに尻に触れるのは一線を超えてしまう気がしたので、やめておいた。
よって、次は脚だ。
「脚に行くぞ」
由弦は愛理沙の白く長い美脚に視線を向けながら言った。
透き通るように白く、そして柔らかそうだった。
「はい……あっ!」
愛理沙の太腿の付け根に触れた途端。
びくり、と愛理沙の体が震えた。
「……痛かった?」
「いえ、少し擽ったかっただけです。大丈夫です」
大丈夫らしいので、由弦はマッサージを続けることにした。
しかし触れてみて分かるが……
柔らかそうな脂肪の下には、しっかりとした筋肉があった。
筋肉の土台の上に、薄く柔らかい脂肪の層。
これが愛理沙の美脚の秘密なのだろう、と由弦はどうでも良いことを理解した。
そういうどうでも良いことを考えていなければ理性が飛びそうなくらい、愛理沙の脚は美しく、そして艶っぽかったのだ。
(尻も良いなと思ったけど、脚も良いな……甲乙つけがたい)
胸・尻・脚の中から一つを選ぶことはできない!
そんな浮気性の男のようなことを考えながら、由弦は愛理沙のふくろはぎに触れる。
疲労のためか、少しむくんでいるように感じた。
「んぁ……良いです、それ……」
「俺にも後でやってくれよ?」
「はぃ……」
眠たそうに愛理沙はそう言った。
しかし今、眠られると由弦は愛理沙からのマッサージを受けることはできない。
それは少し困るので、由弦は愛理沙の足裏のマッサージに移ることにした。
土踏まずの部分を、折り曲げた人差し指の関節でグイっと押す。
すると……
「ひぐぅ!!」
可愛らしい悲鳴が上がった。
少し痛かったようだ。
「大丈夫か? 愛理沙」
「い、いえ、大丈夫です……っくぁ……」
足裏を押すたびに、ビクビクと体を震わせる愛理沙。
ギュッと、シーツを両手で握りしめている。
そんな姿を見ると、少し可哀想に思えてしまう。
「痛いようならやめるけど……」
「こ、これくらい、大丈夫です。続きを……ひぎぃっ!」
愛理沙の口から悲鳴が漏れる。
とはいえ、大丈夫と言うならば大丈夫なのだろう。
由弦は愛理沙の言葉を信頼し、強めに愛理沙の足裏をマッサージしていく。
指圧するたびに愛理沙が体を震わせるのは……少し見ていて、面白い。
少しだけ、少しだけ……嗜虐心を擽られる。
「はぅ……由弦さん」
「どうした?」
「……後で覚えておいてくださいね」
ジト目で由弦を睨む愛理沙。
ちょっと怒った顔も可愛いなと、由弦は内心で惚気るのだった。
______________________________________
次回は愛理沙ちゃんのターンです
私も好きです♥
という方はフォロー、評価(目次下の☆☆☆を★★★に)をしていただけると私も好きです♥
ちなみに口絵の方を活動報告で上げました。
是非、ご覧ください。愛理沙ちゃんの水着イラストが見れます。
※小説家になろうの活動報告に移動します
https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/430380/blogkey/2688222/
またpv及び特設サイトが公開されました
それに関しても活動報告でurlを上げています
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます