第4話「映画は前戯」
朝から快晴の日曜日。
今日はキタちゃんと映画を
いや、ハリウッド映画を観に行くこともあるけど、今日はたまたまアニメなのだ。私だって普通の映画くらい観るし興味もあるが、今日は
せっかく出かけるのだしおめかししたいところだけど、残念ながら
何千円もかけて化粧道具を買うくらいなら、漫画とゲームを選びたい。そう考えている時点で私に化粧など早いのだろう。そういうオシャレは大学に入ってからでもいいと思っている。近所のお姉さんも都会の大学に行って別人になって帰ってきたことだしな。あれ
せめて
ウネウネくるくるの
服はベージュのワンピースにレギンス、カーディガンを着て、よし。
いわゆる森ガールっぽい感じに……
■□■
「キタちゃーん」
集合場所は駅前の広場。十分前についた私だったが、キタちゃんはすでに
「相変わらず早いね」
「小さいころからの習慣ってだけよ。一分でも
キタちゃんのおじいさんというのは元警察官であり、退職後に
「リホが最近来ないから、じいちゃん
「あのじいさまにそんな
「あるある。今度の休み、漫画の打ち合わせがてらうちに来なよ」
「じゃー行く。道場やってる? 汗に
「じいちゃんに張っ
痛い目にあってもいい、男たちの戦う姿を見られるのなら。
「行こう。それとシュシュ、似合ってるよ」
「へへ」
照れ笑いしたら気持ち悪いと言われた。なぜだ。
■□■
ショッピングモール内にある映画館は、休日もあって多くの人で
「あ、リホちゃんだ」
なぜお前がここにいる、
どうか間違いであってくれと
「……おはようございまーす」
「すげー
これから観るアニメ映画に向けてぐんぐん上がっていた私のテンションは、神谷に
くそ、なんでここにいんだよ。家でDVDでも観てろよな。
「ケータぁ、この子だれ?」
神谷の彼女だろうか、
「ショータの妹だよ」
「えぇっ、うっそぉ!! ショータくんのぉ!? 全然似てなぁい」
私だってそう思っているけど他人に指摘されると腹が立つのはなんでだろう。というか彼女は同じ高校生だったのか。そのことに私は一番びっくりした。
「眼鏡取ったらけっこう似てるよ、ほら」
「ちょ、」
視界がぼやける。勝手に眼鏡を取られてしまった。小学一年生のときから年々視力が悪くなっている私は、眼鏡なしでは近くにいる人の顔さえよく見えない。キタちゃんどこだ。
「うーん、似てると言われれば似てるようなぁ」
「目がそっくりだと思うんだけど」
「ショータくん、いっつも
「はは、言えてる」
なんですかこいつらは、人の眼鏡を取っておいてチャラチャラと。
見えないなりに睨みつけると、ぼやけた視界の中で神谷が笑った気がした。
「やっぱり似てる」
「似てませんよ。眼鏡返してください」
「あれ、怒った?」
怒らいでか。
私は想像の中だけで奴の顔面にグーパンを入れた。あくまで想像なのは、ヤンキーの兄の友人だけあって神谷もけっこう
「友達待たせてるから行きたいんですけど」
「友達なら
「なにー!?」
そりゃないぜキタちゃん! 時間を
「何観んの? やっぱアニメ?」
「そっとしといてやろうって
「えー、ショータくんの妹ってオタクなの? ウケるー!」
うわー……。
妹には散々バカにされてきて慣れてはいるものの、初対面の他人に笑われるのはツラいものがある。しかもこの人声大きいし、周りに見られてる気がするし。ヤダな。眼鏡取られててよかった。
「おい」
「えーなにー?」
「俺のダチの妹、
お前も馬鹿にしてなかったか!
と思ったが
「あーもう
「は? 何言ってんの、」
「映画なんてセックスしやすくするための
そんな前戯聞いたことねえよ。
ていうか私さっきからツっこんでばっかだな。神谷ボケ体質なのか。
「なっ、マジムカつく! 死ねよ!!」
それまで甘ったるく
「ごめんな、リホちゃん」
「高校二年生にとっては
「けっこう冷静だねー」
そう言いながら神谷が眼鏡を
「それで、一人で映画
「どうしよっかな。リホちゃんと
「今日観るのは三部作のうちの二作目ですよ。観るなら一作目観てからにしてください」
「そりゃ残念」
私の頭を
兄の友人というのは、だいたいがああいうわけの分からん連中ばかりだ。兄
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