5分後に立場逆転の恋/恋する実行委員会
PrincessKnight 来海未来
高校生。それはまだまだ青春が続く、楽しくて仕方ない時代。
勉強は
それだけじゃない。たったひとりの、大切な
あの子がいるから、私は笑える。幸せに感じる。なんだってできる。
……だけど、ひとつだけ
「あ、ヒメちゃん! 待ってたよー」
「ごめんねゆーくん。部活が長引いちゃって」
「
「…………」
ああ、神様。
どうして、私より彼氏のほうが
私だって『可愛い』には興味がある。可愛くなりたい。可愛いものがほしい。そうやって思うのに、いま
私の恋人、ゆーくんこと
で、それに対して私はというと、とりあえず
なぜなのか。正直それは自分でもわかっている。わかりすぎているから困っているのだ。ほら、そんなこと考えている間にもまた……。
「
「ああ、ありがとう……いただくよ」
よく私の練習姿を見にくる後輩の女の子だ。私がお礼を言って差しだされたクッキーをもらうと、彼女は顔を赤くしながらほかの後輩とキャーキャー言っている。
つまり、そういうことだ。普通にはモテない。『普通』って言い方は
……けど! 私はついにそれを
帰り道の今だって車道側を歩いてくれているし、前にショッピングデートをしたときは荷物も持ってくれようとした。ただ、それは私が嫌だったから断ったけど。
でも、一番
なのに、ゆーくんはそれでもその小さいおしゃれもどきに気づいてくれて、しかも「可愛い」って、「がんばったね」って、そうやって言ってくれた。すべてをわかってくれたような気がした。
私は、ゆーくんが大好きだ。ゆーくんと
もっと一緒にいたい。そうやって思っても、一緒の帰り道はすぐに終わってしまう。あともう少しでお別れ。そんなときにゆーくんは悩ましげな顔をしながら口を開く。
「んー……僕もがんばって自転車で来ようかなぁ。そしたらもっとヒメちゃんと一緒に帰れるし」
ゆーくんは結構遠いところから通ってるから電車で通学しており、私はそこまで遠くはないため、自転車で通っている。下校デートは、学校から徒歩十分弱の駅まで一緒に歩いて終わりになってしまう。
たぶん、ゆーくんは私の家の前まで一緒に帰って、そこから一人で帰ろうというプランを立てているんだろうけど……。
「さすがにやめなよ。ゆーくん、自転車だと相当時間かかるでしょ?」
「それでも、ヒメちゃんとはもっと一緒にいたいし……」
なんだこの可愛い生物は。私だってもっと一緒にいたいよ! とは思うが、ゆーくんは本当はもっと早く帰れるにもかかわらず、わざわざ部活でいつも
「帰りが遅いのは
「大丈夫だよ! 僕は男の子だもん!」
「うんうん、それでも早く帰ろうね?」
「ヒメちゃんのいじわる……」
わかりやすくしょぼんとしているが、こればかりは仕方がない。学校だって同じクラスだし、一緒にいられる時間は長めだ。帰りは
そんな雑談で下校デートも終わり。駅前に着いてしまう。
ゆーくんは少し
そして大きく手を
────翌日。部活中のことだ。ゆーくんから今日も待っているという
「ちょっと! それヒメちゃんのでしょ!」
「うるさいな。あいつのせいで俺は
「……っ! この……!」
……この声はゆーくん? それに、矢寺ってたしか、昨日クッキーをくれたあの後輩だ。
「それで
「あいつが女の子だぁ? ははっ、あんなやつ、俺らと一緒に水泳の授業やってても気づかれねーよ。どこに女の子らしさがあるっていうんだよ」
「ヒメちゃんをバカにしやがって……!」
……わかってる。私が女の子らしくないって。そんなの、私が一番わかってる。でも……ああ、そうか。
実際にそうやって言われると、こんなにも悲しくなるんだ。
「とにかく、それを返せ!」
「お? 来るなら来いよ。まあ、お前が勝てるわけねーけどな」
「勝てる勝てないなんて関係ない……それよりも僕はあの子の彼氏なんだ。ヒメちゃんは僕が守るんだ!」
それが聞こえた
「え……ヒメちゃん……?」
ゆーくんはどうしてここにと言わんばかりの表情を
そして、私は口を開く。
「私の恋人に手を出すな」
それは、頭で考えた言葉ではなかった。心の底から、ただただ本心を無意識に述べていた。
そのときに私の顔がどんな表情だったのかはわからない。ただ、男子生徒は相当おびえた顔をしていたから、そういうことなのだろう。
手を放すと、男子生徒は着替えを置いて謝りながらそそくさと
って、それよりもだ!
「ゆーくん!
「うん、僕は平気。でも……ごめんね」
「なんでゆーくんが謝るの。謝るのは私のほう! こんな危ない目に
すると、ゆーくんは急に暗い顔をする。
「……やっぱり、僕は彼氏失格だね」
「ゆーくん……?」
意味がわからない。彼氏失格? こんなに私のために立ち向かってくれたのに?
「僕さ、ヒメちゃんとつきあう前に、一人だけつきあってた子がいてさ」
そして、ゆーくんは悲しそうに目を閉じる。
なんとなく、
「前に彼女がいたこと、ヒメちゃんは
「そんなことで怒るわけない。別に今私とつきあってるんだから、昔のことはどうでもいいよ」
だから急にそんな話をしないで。そういう意味も
「でも、振られちゃったんだ。その理由が、
……そうか、ゆーくんは彼氏らしさを意識してたんだ。車道側を歩くことも、荷物を持ってあげることも、
全部、私のために。私の、彼氏であるために。
「でも、
「……ヒメちゃん?」
全部を聞いて、理解したうえで私は批判する。だって、彼氏らしさとか、おかしいじゃないか。
「彼氏らしさとかどうでもいいよ。男らしさとか、女らしさとか、そういうの関係ないんだよ。私はどんなゆーくんでも好き。強がりなんていらないよ。どんな姿でも大好き。ゆーくんは私を幸せにしてくれてるけど、私だってゆーくんを幸せにしたい!」
もう、言葉があふれて自分でも何を言っているのかわからなかった。でも、彼氏だからとか、そういう立場で区別するのはおかしい。
「立場が逆転したっていいんだよ。
彼氏彼女という言葉になった瞬間、彼氏は彼女を守るという立場に置かれてしまう。
だけど、それは違う。恋人同士なら、お
「あはは……ほんとに立場逆転しちゃってるね……こういうかっこいいことは、
「だから、そういうのはいいんだって。そりゃあ、ゆーくんに守ってもらいたいって気持ちはあるよ? だけど、それに負けないくらい、私も守ってあげようって、そうやって思ってるんだから」
「うん……うん。ありがとね、ヒメちゃん……」
少し
私は、そんなゆーくんの頭を
「ゆーくん」
私は、この言葉をずっと言われたかった。そして、この言葉で告白された。
だけど、だからこそ、私もゆーくんに、この言葉を、この
彼女だから言わなくていいとか、そんな必要はない。
大切なキミに。この誓いを
「あなたを幸せにしてみせます。あなたを守ってみせます……大好きです」
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