第18話 魔剣退治と不気味な一軒家 2
今までは一階の各部屋に張り込みをしてみたが何の反応もない。
色々なところを探しては見たものの、特に魔剣に関する手掛かりはなかった。
ギシギシと音のなる階段をゆっくりと上がり、二階にやってくる。
光があまり入ってこないので、二階も暗い。
一階よりも薄暗く、今にも何か出てきそうな雰囲気だ。
先にアクトが歩き、そのあとをリリアが。
しかし、リリアの手はしっかりとアクトの袖を握りしめている。
「……リリア?」
「はいっ!」
びっくり顔のリリア。
そんなにびっくりすることないのに。
「なんで袖つかんでるの? 歩きにくくない?」
「そ、そんなことありません。えっと、そのアクト様とはぐれないようにですね……」
そんな広いところではない。
二人で並んで歩いているだけなので、離れるはずもない。
「ま、いいか……。よし、今日はこの部屋にしてみようか」
――ギィィィィ
開ける扉の音が、家に響き渡る。
一階の方からは風の吹き抜ける音が不気味に聞こえ、窓から差し込む夕日の光がなんとも言えない怖さを演出してしまっている。
ふと、リリアが振り返り、そんな一階の光景を見てしまった。
――バタァァァァァン!
突然、何かが倒れるような音が聞こた。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
先に部屋へ入っていたアクトに後ろから力いっぱい抱き着く。
「ア、アクト様ぁぁぁぁぁ!」
「だ、大丈夫だ! そ、そんなん力いっぱい、抱き着いたらぁ」
半泣きになっているリリアの全力抱きしめパワー。
全くの無防備状態で抜け出せないアクト。
「な、何かいます! ここには、絶対に何か!」
リリアの言うことはあっている。
そもそも魔剣の駆除クエスト。魔剣がいるに決まっているのだ。
「お、落ち着けリリア! 大丈夫、ただ何かが倒れた音だよ。こんな家だもの、それくらい普通だろ?」
指先でリリアの涙をぬぐい、頬の涙を拭いてあげた。
そして、頭をポンポンと軽くたたき、撫でてあげる。
「ほら、もう大丈夫。この部屋は空っぽだ」
入った部屋には何もない。
何もない部屋。ただの机、空っぽの本棚。
そして、空っぽのベッドしかない。
「何も、ないですね……」
「隣の部屋に行ってみようか?」
「あ、あのお願いが……」
リリアは俺に抱き着きながら話してくる。
「手でもつないでおくか?」
リリアは満面の笑みで返事をする。
「あ、ありがとうございます」
リリアの手を握り、空っぽの部屋を後にする。
何にもない部屋の扉を閉め、隣の部屋に移る。
そう、たった今扉を閉めた一つの部屋。
何もない、空っぽだった部屋。
真っ暗な部屋なのに、部屋の中心で何かが薄っすらと光だし、やがて細長い何かになった。
薄っすらと光るその形はまるで一本のナイフにも見えるし、剣にも見える。
ゆっくりと切っ先を横にし、閉まった扉へ近づく。
そして、そのまま扉をすり抜け、廊下へ出て行ってしまった。
『ソコノアナタ、ワタシヲミテ、ワタシヲミツケテ、ワタシノコエヲ、キイテ……』
隣の部屋の扉を開け、中を覗き込むアクトとリリア。
二人はゆっくりと中に入り扉を閉めた。
部屋の中に二人が入った直後、淡い光に包まれた何かは、二人の後を追うように扉をすり抜けて中へ入っていく。
「ここも何もないですね」
「引き出し付きの机だけか……。中には何か入っているかな?」
アクトは机の引き出しの中を覗き込む。
そこには一冊の手帳らしきものが。
「お、何かあったぞ」
「なんですか? 何か重要なアイテムですか?」
部屋はすでに探索された跡がある。
特に重要なアイテムではないだろう。先に探索している冒険者たちもみんな見ているはずだ。
「よし、とりあえず読んでみようか」
カーテンを開け、少しだけ光が入ってくる。
その光を頼りに二人で手帳を開いてみた。
「アクト様、もう少しこっちに」
「ん、見えにくいか?」
アクトの隣にべったりくっついたリリア。
さっきまで怖がっていたのに、なぜか今は満足顔になっている。
『日記帳』
手帳の表紙にはそんな文字が書かれていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます