第14話 二人の生活と特訓 6
「やぁぁぁ!」
ダンジョンに響き渡る声。
「アクト様、動きがぎこちないです、よっ」
ナイフを何度も振り回しても、簡単に避けられてしまう。
モンスターには通用したが、リリアには全く通用しない。
「はぁはぁはぁ……」
肩で息をし、だんだんと動きも単調になってきた。
「少し休みましょうか」
ダンジョン一階層。
ここはモンスターも少なく、広い部屋のようになっている。
ダンジョンにはこうしたポイントが何か所あり、その場所を使ってリリアとナイフの使い方について教わっているところだ。
「なんでリリアには当たらないんだ?」
「簡単ですよ。動きが単純なんです。ナイフはリーチが短い武器です。相手の動きを見て、予測して、懐に入らないと決定打が打てません」
「動きか……」
リリアは俺の前に立ち、ナイフを構える。
「いいですか、ナイフを使う時、自分の動きは最小に。そして、相手の動きを良く見てください。相手の攻撃を躱し、隙をついて、相手に近づきます」
リリアが俺に手を差し伸べ、引き起こされる。
「ナイフの使い方もいいですが、少し組手もしましょうか?」
「組手?」
「手刀をナイフに見立て、相手に攻撃します。もちろん、受け止めても躱してもよいです」
「わかった、行くぞ!」
リリアと組手を行い、時間を忘れて練習する。
相手の動きを見る、予測する。躱すのか、受け止めるのか、流すのか。
その判断も素早く行わないと、逆にダメージをもらってしまう。
考えるよりも先に体が動くようにならないと……。
――
「ふぅー、いい汗かきましたね」
「だな。リリアも疲れたか?」
「そうですね。そろそろクエストを完了させて戻りますか?」
ダンジョンにこもってから結構時間は経過したと思う。
あまり遅くなるとまたフィーネさんに怒られてしまう。
「そうするか。よし、必要分のラビットを狩って帰ろうか」
「では、行きましょう」
俺はバッグに手を入れ、あるものを取り出す。
「あの、リリア。これ使ってみるか?」
リリアに差し出したのはベルト付きの鞘。
腕や足に取り付けができ、ナイフをしまうことができる。
昨日武器屋で見つけて買っておいたものだ。
昨日の夜は倒れてしまったし、今朝も慌ただしく起きたのですっかりと渡しそびれてしまった。
リリアは無言で受け取り、ベルト付きの鞘を見つめている。
あれ、気に入らなかったかな?
「いいのですか?」
「あぁ、もちろん。鞘も結構ボロボロだったし、使ってもらえるか?」
「ありがとうございます。大切に使わせてもらいますね」
今まで使っていたリリアのナイフが入っていた鞘をバッグに入れ、新しい鞘をリリアは装備する。
リリアは新しい鞘を腕ではなく太ももに着けたようだ。
「腕じゃなくていいのか?」
「腕だとナイフを使う時にバランスがとりにくくなります。足に着けておいた方が動きやすいですから」
新しい装備が嬉しいのか、リリアも笑顔になり、二人でダンジョンの奥の方へ向かって歩き出す。
毎日練習すれば少しは俺も強くなれるだろうか。
少しの不安と、期待が入り混じる。
――
「はい、これが今回のクエスト報酬ですね」
「ありがとうございます!」
クエストをこなし、報酬を得る。
そして、リリアと一緒にギルドを出て、宿に戻った。
「今日も一日お疲れ様」
「はい、アクト様もお疲れ様でした」
部屋に戻って普段着に着替える。
リリアは着替えても、ナイフだけは装備したままだ。
「それ、外さないのか?」
「湯汲とか寝るときは外しますよ。その、できるだけ身に着けておきたくて」
「そっか。よし、ご飯食べに行こうか」
「はいっ!」
リリアと一階の食堂に行き、シャーリに食事を頼む。
今日はちゃんと夕飯を食べることを伝えていたので、怒られることはない。
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