断片.稚児の記憶


 ──ある日、白衣のお姉さんとお別れしました。


 私の事をお求めになられた方が現れたのです。

 新しいご主人様は夫婦で、少し変わった方でした。


 薬師のお方で、その助手として私をお求めになられたのだそうです。

 ですがそれは初めてのお仕事なので、私は仕事がうまく出来ません。沢山失敗をしたけど、怒られることは殆どありませんでした。叩かれも、殴られもしませんが前のご主人様のように優しくはしてくれません。


 そして、お仕事をしないとご飯をくれません。


 でもお仕事をすればご飯もお布団も下さいます、私が望めば抱き締めてもくれます。


 抱き締めて貰えると嬉しい、嬉しい筈なのになんだか心の奥がきゅっとなります。痛くないのに、悲しいのです。白衣のお姉さんに抱き締めて貰った時は、胸の奥がぽかぽかしたのに。



 なぜでしょう、なぜこんなにも寒いのですか────

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