BCC.報告書02


 正午を過ぎた頃、未確認生物の襲来を確認。既存生命体の枠に当てはまらない造形をしており、独自の言語体系を有している可能性がある。ある程度の知性を有しているとおもわれるものの、意思の疎通及び和解は不可能。


 先の襲撃時に現れた魔人とは異なり、此方の力量を理解した上で遊んでいたような気配があった。加えて魔術耐性が高いのか、姉さんの魔術を防御する素振りすら見せずにいた。

 交戦中に紫蘭が駆けつけ、未確認生物に対し背後からの強襲を試みるも失敗。彼女は反撃を受け腹部に直径五センチ程の貫通創を負うものの、即死には至らず。傷口から触腕をねじ込まれたというのに活動を続け、暫くの間意識を保っていた。

 その姿を見てか、隠れていた紫ちゃんは無謀にも未確認生物へ向け突撃。紫蘭と同じ結末を迎えるかと思われたが、紫ちゃんは天使としての機能を発揮し危な気なく未確認生物を討伐。未確認生物の遺体は消失し、飛び散った血液すらも煙のように消え失せてしまった。なんのサンプルも得られなかったのは非常に残念だが、記憶を頼りに情報収集を行う事にする。

 また不可解ではあるが、未確認生物を討伐した直後に紫ちゃんは意識を失ってしまった。目立った外傷もなく心音にも異常は見られなかった為、極度の疲労による昏睡であると思われる。


 また即死は免れたものの、紫蘭の容態は芳しく無く私達の治療技術での救命は絶望的。

 そんな状況下で現れ、紫蘭を救ったのは移住希望のソフィーティアという少女であった。何処からともなく現れた彼女は後の自己紹介において過拡張亜人種だと言っていた。また彼女曰く紫蘭も過拡張亜人種らしいのだが仔細が異なるとの事であり、肉体の作り手が私達の創造主とは違う次元にあるらしい。

 ……本件についての真偽は一旦保留とする。

 本来なら保留すべきではないのだろうが、シンモラ倪下暗殺の件を調べる方が重要だ。もし本当に暗殺されたというのなら、早急に対策を行う必要がある。治世的な要因も大きいが、アレの役割はもっと別のところにあるのだから。


 また、ソフィーが連れ帰った者の処遇については要検討とする。本人は深淵狗をうたっており、首を落としても死なないなど異様なまでの生命力を有している。紫蘭を姉と呼び慕うものの、紫蘭は記憶にない様子だった。


 ……以上で報告を終える。


 記録者. メネ

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