066話 仲間が、いる。

―― 『……ほう』

リヴァイの双眸そうぼうが細まる。


―― 『…ただの、コバエ …ではないと……よかろう』

その双眸そうぼうは、無傷でそらに留まる、アイリーンとヒュウガを映していた。


リヴァイが放った鞭のような髭による攻撃は、確かにアイリーンと、ヒュウガの身体を一閃したのだが、恐らく《ノアの杖》による保護だろう……二人は何事もなかったかのように、そこにいて、リヴァイと対峙している。


「…ヒュウガ…あんた実は…スゴイ人!?」

アイリーンは、確かに一度は分断された自身の身体を、マジマジと確認したあと、横にいるヒュウガに懐疑の目を向けながら呟いた。


ヒュウガの凛とした表情に、一瞬、笑みが混じる

「…スゴイのは貴女たちです。私には闘う力がありません!…ですのでっ!私は皆を全力で護ります!……なので…だから……」

ヒュウガの視線が一度、下を向いた。

そして再び、上げた視線には熱が宿る。

「私達は、力を合わせて闘いましょう!」


アイリーンは、鉄壁の防御に気を緩めたのか、リヴァイから視線を一旦外し、満面の笑みをヒュウガに返した。

「私の命、ヒュウガに預けたわ!ふふ、ヒュウガが居れば、私達は負けないじゃん!」


アイリーンの、ヒュウガに向けていた笑顔は、素晴らしい名案でも思い付いたかのような表情に代わりながら……ゆっくりとこちらを向いた。


……イヤな予感しか、しないのだけど。


「というわけで、ショコラ!髭で身体を叩かれようが、おぞましい牙に、身体を喰い千切られようが、恐れることはない!その大剣で、あの竜の首を、かっ切って来るのよっ!」

そう言いながら、アイリーンの人差し指が、ビシッとリヴァイに突き付けられる。


そして、得意気に、こう付け加えた。

「安心して…私は、竜だけを、弓で狙うわ」

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