第6話 現代は古来より危険?

「な、長かった・・・・・・やっと私は自分の世界に帰って来ることができた。こんなに嬉しいことはない。」

 もう戻って来れないと考えたこともなかったが、葉月は渋谷に戻って来て感激している。

「コケッ。」

 葉月、おまえ、じんわりし過ぎだろう。と思うチキン。

「いや~、自分の世界はほっこりしますな。」

 自分の世界に戻って来て、ここがどこだかも知っているので安心する葉月。

「コケッ!?」

 しかし、異世界に行った時の同様、初めて現代に来たチキンはパニックしていた。

「コケッ!?」

 なんだ!? この人の多さは!? 鉄の塊がすごいスピードで動いている!? 赤、青、黄色!? あの光はなんだ!? この時代には干支よりも偉い神がいるというのか!?

「大丈夫!? チキン!? あなた、すごい鳥肌よ!?」

 ニワトリだけに鳥肌である。チキンの毛は逆立っていた。イメージを例えるなら、スーパーサイヤ人である。

「コケッ!?」

 身振り手振りで、この世界はなんだ!? と訴えるチキン。

「まったく、ほっこりしない奴だな。それでもニワトリか?」

 チキンの態度に呆れる葉月。

「コケッ!?」

 ニワトリかどうかは関係ないだろう! と反抗するチキン。

「そうか、そうか。分かるわ! チキンの気持ちが! 不安なのね。私もエトワールに行った時は右も左も分からないで不安だったわ。クスン。」

「コケッ。」

 おお! さすがは私の干支守! 葉月は私の気持ちが分かってくれるのか! と同情されたチキンは少しだけ葉月を見直した。

「そんな私の頭を、よくも血が出るまで突いてくれたわね! チキンー!!!」

「コケッー!?」

 恨みを思い出した葉月。

「キャアアアアアアー!? ニワトリがいる!?」

 その時、見知らぬ群衆の一人が渋谷のハチ公の像の前で叫ぶ。

「ニワトリ!?」

「本当だ!? ニワトリがいるぞ!?」

 そして群集心理により、その場にいる群衆がチキンに関心を寄せる。 

「え?」

「コケッ?」

 その光景に唖然とする葉月とチキン。 

「写真を撮れ!」

「動画だ! ユーチューブに投稿して、いいねを稼ぐんだ!」

 あっという間にスマホを向けられて、無法地帯でチキンの撮影会が始まる。

「コケッ! コケコッコー!」

 我は干支である! 我を崇めよ! まんざらでもないチキンはポージングする。

「あんた何やってるのよ!? 逃げるわよ!」

「コケ?」

「このまま、ここに居たら、捕まって丸焼きにされて食べられるわよ!」

「コケッー!?」

 保健所に送られて殺処分されるかもしれない。

「走るわよ! チキン!」

「コケッ!」

 葉月とチキンは群衆の輪から逃げ出した。

「ああ!? ニワトリが逃げたぞ!?」

 渋谷の若者は気力はないので追いかけてまでニワトリを撮影しない。

「ふ~う、危なかった。」

「コケ~。」

 命かながら逃げ延びた二人? 一人と一匹。

「仕方がない。私の家に行きますか。」

 葉月はチキンを自宅に連れていくことにした。

 つづく。

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