vs大オーク①
鎧に肩を抱きつかれながら僕は色々と考えを整理する事にした。
(何故、トラックに突っ込まれた瞬間から意識を無くし、目をさました場所が、この身に覚えのない森だったのか?
そして、襲ってきたあの豚化は一体何だったのか?
とどめに何故こいつは腕に抱きついてきてるのか?)
ただここで、一つの既視感が僕を包んだ。
(なんか今の僕に似たような状況、どこかで見たことがあるな、、たしか漫画で結構見たような、、)
そして、しばらく考えた瞬間、一つの答えにたどり着く。
「異世界物か!!」
異世界物とは、主人公が異世界に何かしらの原因で連れてこられ、そこから始まる壮大なストーリーである。
ラノベや漫画などでよく使われるジャンルの一つだ。
そしてぼくの今の状況はこの異世界物に当てはめたらすべて合点がいくのだった。
(つまり、ぼくがトラックに突っ込まれた事によって異世界のこの森に飛ばされ、そこで豚化、すなわちオークに襲われたと考えたら、、)
初めて漫画を読んで来た事が役に立ったと思うと同時に、すぐにある事を確認するため近くでお亡くなりになったオーク?の斧の反射を使って自分の姿を確認する。
(よし異世界に来てるとしたら転生ではなく転移だな。)
そんな事を思っているぼくの前に、緑色で文字が浮かぶ。
(この、さまよう鎧を装備しますか?)
(YES) (NO)
(きたっ!漫画とかで異世界に来た時によくあるステータスの可視化!という事でおめでとうございます。僕はやっぱり異世界に来ていました(泣))
予感は悲しいかな確信に変わる。
そして異世界に来た事については一旦横に置いといてとりあえず、この鎧を装備するかについて考える。
(装備て、、してもいいけどなんか洗脳とかされないかな?体乗っとられるとか?さっき助けて貰った恩はあるけど、、信用して大丈夫かいな、、)
鎧をチラ見すると、もちろん自分を装備してくれという雰囲気をガンガンに出して、僕を見つめている。(顔ないけど、、)
「洗脳したり、体乗っとたりしない?」
鎧が首を縦に振った。
(、、うーん、つってもな、、)
しかし、だんだん考えるのが面倒になってきた。
「もうやぶれかぶれだ!どうにでもなれ!」
半端やけになって、難波は勢いよくYESを押した!
その瞬間!まばゆい光が辺り一面を包んだ!
そして次の瞬間!僕は黒い鎧を装備していた。
その着心地はとても体に馴染み、奇しくもサイズもピッタリだった。重さは一切なく、体を動かしても全く違和感がない。
関節もじつに滑らかで、というかむしろ、この鎧を装備する前よりも明らかに、、
「体も軽いし。なんか力がみなぎってくる!!これってもしかしてこの鎧の力!!」
柄から剣を抜く。
重量感たっぷりの本物の剣がとてつもなく軽い。まるでおもちゃみたいだ。
試しに近くにある大きな木を切りつける。
太刀筋はもちろんだがヘッポコ。
ただ、そのスピードはとても速く、実際の自分よりも何倍も早いのは充分に分かった。
そして剣先が食い込んだ木はバターみたいに真っ二つになって、ゆっくり音を立てて倒れていく。
「すごいなっ、、これがこの鎧の力か」
事前に心配してた鎧の洗脳や体が勝手に動くなどと心配も今の所はないようだ。
(この鎧があれば、もしかしたらこの世界でも、なんとかやっていけるかも知れない。)
そう思った矢先に、後ろから大きな雄叫びが上がる。
「ギャアアアィィ!!」
あまりの声のデカさに思わず耳を塞いだ。
そして、振り返ったその先にはなんと、さっきの鎧に殺されたオークより明らかにでかい一頭のオークが佇んでいた。
その見た目から、もしかしたらさっきのオークの親分かもしれない!
もちろん持ってる斧も馬鹿でかかった。あれぐらいデカイともう斧とは言えない。
しかも三体のオークの亡骸を見たのか分からないが明らかに鼻息が荒く明らかに興奮している。
そして次の瞬間、その大斧を振りかざし、ものすごい勢いで難波に襲い掛かってきたのだ。
余りの迫力とスピードに、ビビリながらもなんとか初手の大斧による攻撃はジャンプして避けた。
しかし空中で身動きができなくなった所を狙われパンチはまともに受けてしまう。
その瞬間にものすごい衝撃と共に後方に吹き飛ばされる。
そして数本の木々をなぎ倒しながら、一本のでかい木に叩きつけられた。
(ああっ、この鎧を装備してなかったら一発で死んでたろうな、、)
鎧に感謝をして、立ち上がろうとした瞬間、身体中に走る痛みが、立ちあがるのを拒ませる。
しかも大オークはすでに僕に向かって雄叫びを上げながら向かってきていた。
(すぐに立ち上がらないと、、)
そう思った瞬間、ぼくの体は恐怖と痛みでまったく動けなくなっていた。
「ヤバイ、ヤバイ、このままじゃ絶対やばい、動け!動け体!」
この状況であの大斧の一発はマジでヤバイ事は分かっていた。
この鎧の力、そしてこの剣で上手く立ち回れば、多分だがなんとかなるのでは、という事ももちろん分かっていた。
しかし初めて対峙する死を賭けた戦いに体が動かなかった。
そして大オークとの距離が約10メートルを切った瞬間、、思い浮かんだのはオーク三体を軽々と倒した鎧の後ろ姿だった。
「助けて鎧!僕を助けて!お願いだからあいつを倒して!」
僕は叫んだ。
すると目の前にYESと文字が表示された。
さっきまで雄叫びを上げながら半狂乱で暴れ、生きている事を誇示ながら、ぼくに向かってきた大オークは上半身と下半身が綺麗に分けられた肉塊となって、炎炎と燃えていた。
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