第329話Ⅱ-168 神殿突入3
■ネフロス神殿
グレネードランチャーで発射した榴弾が引き起こした土煙の中を神殿に突入して左右に分かれた。ヘッドセット越しに左の部屋に行ったミーシャへ呼びかける。
「4人倒したら、猿人を二人中に入れて俺達に合流してくれ」
「了解した」
右に曲がった俺達は兵士たちがいる部屋の前で止まって入り口にドラム缶を二つ並べてから、その後ろにしゃがみ込んだ。スタングレネード(閃光音響弾)のピンを抜いて二つ部屋に投げ込み、俺もサリナも目を瞑って部屋の中に白い閃光と空気を揺らす炸裂音が広がるのを待った。
光と炸裂音を感じるとドラム間の横から室内を伺う。立っている人間がほとんどいないことを確認して、ドラム缶を取り除いて部屋へ入り、右側にいる兵士にアサルトライフルで7.62㎜弾を叩き込んでいく。兵士は
―ギャァーッ! ―アォッッ!
時たま悲鳴が聞こえると言うことはサリナが撃った相手は生きている奴もいると言う事だろう。
(こっちは終わった、合流するか?)
「そこの4人を連れてこっちへ来てくれ。全員死人か?」
(そうだ、血が出ていない。シンディと一緒にそっちへ行く)
ミーシャの無線に応答しながら、サリナが倒した魔法士で血が出ていない
「サリナ、奥の扉を見ておいてくれ」
「わかった!」
6人いた魔法士の中で着ている服が一番豪華に見えた奴の顔に水をかけて頬を叩きながらしゃべることが出来るようになるのを待った。
「た、頼む・・・たす、助け・・・てくれ・・・」
「安心しろ。殺したりしない。だが、俺の質問に正しく答えればだ。わかったか?」
「わ、わかった」
「お前は魔法士か?神官か?
「し、神官だ。転移の魔法陣も使える」
良い感じだ。一人目で目的の人間を見つけることが出来た。だが、敵の情報を確認しておかなければならない。
「昨日、俺達のところへ来た “鬼”は何匹ぐらいいるんだ?」
「鬼?・・・鬼人は、神官長が送った・・・、今はいない。詳しいことは神官長しか・・・」
―あの素早い鬼は危険だが、本当に他に居ないのだろうか・・・。
「奥の部屋には何があるんだ?」
「転移の間と、虜囚の部屋がその奥にある」
「兵士や魔法士は奥に居るのか?」
「いいや、全員ここにいるはずだ」
―思ったよりもすらすらと話してくれたが、信じるべきか・・・。
「嘘じゃないだろうな? 嘘だと死ぬよりつらい思いをするぞ」
「ほ、本当だ! 何一つ嘘はない。ネフロスの神に誓う!」
邪神に誓ってもらっても意味は無いが、嘘だと決めつけるほどの根拠も無い。
「ところで、あの亀はどうして空を飛べるんだ?」
「
―ご神体?
「ご神体と言うのは何だ?」
「ご神体は・・・、ネフロスの神がこの世界に
―
「ご神体はどんな姿でどこに現れるんだ?」
「ご神体を見ることが出来るのは神官長だけだ。我らには判らん・・・、本当だ!」
「神官長は
「朝方はいらっしゃったが、少し前から上と連絡が取れない」
―俺が攻撃したからか・・・、あるいは既に逃げたか?
「サリナ、シンディ、こいつらを見張っておいてくれ。動いたら殺して構わない」
「うん、わかった!」
―キェイゥッ!
ミーシャが連れてきたシンディはチタン棒を持ち上げてYESの返事をくれた
「ミーシャ、奥の部屋に行く。ついて来てくれ」
「了解だ」
奥の部屋の扉を開けてスタングレネード(閃光音響弾)を投げ入れてから突入した。扉の中は円形の部屋で誰もいなかったが、床には大きな石板が埋められていてネフロスの紋章―六芒星が刻まれていた。左に通路ががあり警戒しながら進んで行くと突き当りにもう一つ扉があったが、外側から太い
「助けに来ました。農場で家族が待っていますよ。ケガはありませんか?」
「あ、あなた達は?」
ライトの中には床に敷かれた布の上に4人の女性が浮かび上がったが、手前に座っていた女性がまぶしそうにサトルを見ながら応えてくれた。
「俺達はドリーミアというところから来ました。ネフロスの教団を潰すのが目的です。ドリーミアから連れてこられた人は居ますか?」
「・・・ドリーミア? 私たちはミッドランドという国の出身です。ドリーミアというのは・・・どこなのでしょうか?」
「・・・別の国だと思ってください。鉱山と農場に居たミッドランドの人も助け出しましたから、そこまで連れて行きます」
俺達がいた別の世界の事を説明しても仕方ないだろう。俺とミーシャは4人を連れて神殿の外に出た。外には農場から来てくれたストック達が俺達を待っていてくれたので、捕らわれの女性達を引き渡して農場まで連れて行ってもらうことにした。
「上手くいけば、ストックさん達とはこれでお別れです。食料と荷車を置いて行きますが、後は自力で頑張ってもらうしかありません」
「ああ、本当にありがとう。サトル達が居なければ、俺達はいずれにせよここで死んでいた・・・。どれだけ感謝しても感謝し足りない。もし、ミッドランドに来ることがあれば
「ええ、こちらに来ることがあれば、またお会いしましょう」
ストック達には3台のリアカーと積めるだけの保存食やリュック等を渡した。武器などは神殿の兵士から奪ったものがあるから、何とか無事に祖国へ戻って欲しいものだ。
「じゃあ、シンディ、お前たちともお別れだ。猿人の仲間がたくさんやられたのは残念だったけど・・・、助かったよ。ありがとう」
―キィッ・・・。
「白い狼様とみんなをこの森で待っているって・・・」
「そうか、じゃあ。また会える日までな。コンテナと食料を置いて行くから、仲良く食べてくれ」
―キャァッイ!
シンディは最後にメイの頬を撫でてから、ストック達と一緒に密林の奥へと消えて行った。少し寂しそうな表情を浮かべたような気がしたが定かではない。メイとドリーミアの鉱夫たちを連れて神殿の中に戻り、シルバーが見張っていた神官を連れて転移の間にある石板の上に立った。
「じゃあ、今から
「ここと同じように転移だけを行う部屋だ。普段は誰もいない」
「で、どうやって魔法を使うんだ?」
「俺が石板を手で触れば、石板の上にいるものは移動する」
「ふむ・・・。よし、じゃあ、サリナ、メイと一緒にシルバーの背中に乗せてもらえ。皆さんは、この・・・盾を一人ずつ持って円陣で外に向けてください」
ストレージからジュラルミンの盾を取り出して5人の鉱夫に渡した。転移した途端に襲われることも想定しておかなければならない。俺とミーシャはシルバーを挟んで背中合わせに立って、アサルトライフルをジュラルミンの盾の間から外に向けて構えた。
「よし、じゃあ。
「わかった・・・」
神官の男が片膝をついて床の石板を触ると周りの景色が一瞬で変わった・・・。
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