第100話 エピローグ、その1~新たなる冒険の始まり~
「まずは皆さんに、全ての管理者を代表して御礼申し上げます。この度は兄の…いえ、反逆者ギルゴマの企みを暴き、その野望を阻止して頂きありがとうございました」
ルクレシアはそう言って全員に礼を述べた。
「皆さんのご活躍は、神眼を通して全て拝見していました。そして、間違いなく反逆者ギルゴマの消滅を確認しました。お陰でギルゴマの管理権限も消滅した為、私もこちらに来る事が出来たのです。今まで何も出来なくてごめんなさい。でも、管理者とは、本当に色々な制約に縛られた、不都合な存在なのです」
ルクレシアは申し訳なそうに言った。
「お母様。そんな事より、カナタはどうなったのですか?!」
アルファが少しイラついたように言った。
「本来であれば、私の口から説明するべき事です。でもそれはベータの役割なのでしょう?」
ルクレシアそう言って、ベータに視線を向けた。
「…全てが視えた訳じゃない。だから今から説明する事には予想も含まれる」
ベータはため息を吐きながらそう言った。
「おそらくカナタは生きている。それはこの世界の人々が彼に祝福を捧げたから。祝福が奇跡を起こし、世界の理に干渉した。彼の魂は保護されたけど、追放は免れなかった」
ベータは淡々と、しかし確信に満ちた表情で答えた。
「って事は…あいつは、どこか未知の世界で生きているって事か!?」
ホレスが喜びとも不安ともとれる表情で叫んだ。
「未知の世界かどうかすらも分からない。そもそも世界と呼んで良い場所なのかも分からない」
ベータは不安を煽るような答えを返した。
「でも…彼は生きているのね?」
レーナは先程までの暗い表情が嘘のように、希望に満ちた表情をしていた。
「生きているのが分かれば充分です!教官は簡単に死ぬような人ではありませんから!きっとその場所でも諦めずに、何度も立ち上がって、必ず生還を成し遂げます!」
アリシアは既にカナタの生還を確信しているような表情で喜んでいた。
「待って、その未知の場所からどうやってカナタは帰って来ると言うの?もう神眼の能力は使えないのでしょう?」
アルファが現実的な見解を述べた。
「カナタが自分で帰って来れないのなら、迎えに行くだけよ」
そんな中、今まで沈黙を守っていたカナは、全員が驚く程あっさりと答えた。
おそらく、最初にベータがカナタは生きていると言った時から心を決めていたのだろう。
その言葉には何の気負いもなく、まるで当然の事を言っているように感じた。
「やはり貴女は勇者。そう言うと思っていた。昔から最後の希望は勇者だと決まっている」
ベータはニコリと微笑んでカナに言った。
そしてその言葉に全員が頷いた。
何も言わなくても全員が心を一つにしていた。
その冒険に行くのは、このパーティーメンバー以外に有り得ない。
「お母様、カナタ捜索の冒険へ行く許可をお願いします」
そして、全員の気持ちを代弁したアルファが、力強くルクレシアに新たな冒険の許可を求めた。
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