第49話 世界の声

カナの体が黄金色に輝き始める。





「私の大切な人達を奪おうとするモノ…たとえ神であろうが…。調伏してやる…!」





倒れたままの恰好だったカナは怒りで爆発しそうになっていた。


ギリギリと歯を食いしばり、立ち上がろうとする。


しかし誰かの声がそれを引き留めた。





「駄目よ!怒りに飲み込まれてはいけないわ!」





「落ち着いて」





カナはハッとして辺りを見回した。だが誰もいない。


しかし何故かこの声は信じられると確信した。





「焦ってはいけない」





「そうよ、今はゆっくりと目を瞑り声を聞いて」





「お願いする」





「突然だけど私達を信じて欲しいの!」








カナは頷き、声に従いゆっくりと目を瞑り世界の声に耳を澄ませた。


先ほどから感じていた違和感。カナタと体が触れ合った時に気付いた暖かい声。





その声がどんどんカナの中で大きな声となって聞こえてくる。





「カナタを…私達のリーダーを助けて」





今ハッキリと聞こえて来た声、これは…カナタの仲間達?





「世界の声を聞き」





「世界と同調する」





「貴女も」





「それで…」





彼女達の声はここで途切れた。


しかしカナは自分の体に人々の声が、情報が、意思が流れてくることに気が付いた。





あぁ、こんなにたくさんの人達がカナタを応援してくれていたんだ…。





温かい意識の塊が、カナの体を通じてカナタにも流れていた。





もう、どうしてカナタはこんなに鈍感なの?





その意識にまるで気が付いていない様子のカナタに呆れる。





仕方ないから私が助けてあげなくちゃね。





クスっと笑い、カナがゆっくりと目を開けた。





瞳は黄金色に輝き、眩しい黄金色の光がカナを包む。





次の瞬間、パリンっとまるで世界が割れたような大きな音を立てて、恐ろしいほどの力がカナの体に流れた。








…異世界から来た超越者ナカタカナ。人類最後の希望。勇者、ついに覚醒。


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