エピローグ いつもの日常へ

 グレイザードは魔法使用違反として禁固刑1年、暴力罪で禁固刑3年の計4年、さらにサルリバーザ家は貴族としてノブレスオブリーシュを怠ったとして爵位の剥奪され、伯爵から男爵へ降格されたとのことです。


 その事を報告しにきたストゥーはため息をこぼしながら、応接室で紅茶を飲んでいました。


「君の部下の母親の強姦事件まで調査が及んだが、証拠がないことから立件は難しそうだ」


「……そう、それは仕方ないわね」


 リーリア自身も立件するつもりはないそうで、それでも告発したのは、母親のことを知ってほしかったからと言っていました。


 応接室には私しかおらず、お嬢様もリーリアも学園へいかれました。


 あの騒動以降、リーリアへの嫌がらせはなくなりました。


 主犯が捕まったのが一番の理由でしたが、リーリアを敵に回せばどうなるか……ルクシュアラ家は使用人もとんでもない悪人だ、などと噂になってしまったようです。


 そのお陰が、リーリアを見て下民だと影で嘲笑うものもいなくなっただとか。


 彼女に嫌がらせをした生徒は、次は自分が報復されると震え上がりながら登校しているそうで、それを見てお嬢様もリーリアも良い気味だと笑っていたと、レンジュ殿経由でロミアが教えてくれました。


 これでいつも通りの平和な日常に戻ったわけです。恥ずかしい演技をした甲斐があったと言うわけです。


「君の大根演技を見れただけで、来てよかったかもな」


 帰り際にストゥーにそんな意地悪を言われました。全く……あれでもずいぶんましになったと言うのに、そんなに変だったかしら?


 どうやら私は脚本の才能はあっても、演技はからっきしのようです。


 策を練る才があればそれでよかったですが、策を講じるのにもまた、才能が必要なのです。


 けれど、私一人では、そんな才能は持っていません。


 私には私の、仲間には仲間の才能がある。


 このルクシュアラ家の使用人は、皆優秀ですから。


 皆で力を合わせればなんだってできる。


 ……そう、信じていたと言うのに。

 世の中には、どうしようもできないことがあることを、私は忘れていたのです。


 その絶望を目の当たりにするのは、もう少し後の話でした。

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