Ver.5/第55話
「〈料理〉持ちは、やっぱり少ないなあ」
テゲテゲ達とオアシスで合流した後で、真っ先に言われたのがこれだった。
ハルマがあちこちで作業や調査を行っている間に、第1エリアも第2エリアも難なく突破してきていた。これは、ハルマの情報とアイテム関係の支援があればこその安定したものだ。
特に、食糧とMPポーションを心置きなく消費できるのは、あらゆる面で心的負担を大幅に軽減してくれる。
「じゃあ、火を通すだけで食糧にできる食材が、安定して取れる場所かモンスターを探さないとですかね?」
「それも考えたんだけどな。おれのところのリスナーに聞いてみたら、〈料理〉を取ってるやつは、それなりにいるんだよ。ただ、このイベントって、モンスターのランクが高めだろ? それで、参加してないやつばかりみたいなんだ」
「なので、僕達がこれから案内してくる生産職プレイヤーの持込アイテムに食糧を入れてもらうようにして、外から支援してもらおうと思ってるんですよ」
「あー。なるほど」
生産職が使う設備は、権限を設定すれば、誰でも使うことができる。ハルマが場所が準備するので、その辺を持込む必要はなく、戦闘面での支援はテゲテゲ達がやってくれる。その分、持込アイテムに余裕があるはずだ。
「ん? って、ことは、生産職のプレイヤーを案内してこられそうなんですね?」
生産職プレイヤーも様々だ。
戦える生産職もいれば、戦うことを苦手とする生産職もいる。というか、単独で戦える生産職であるハルマとマカリナが例外であり、異常な部類だ。
生産能力を高めるためには、DEXを上げる必要があるのだが、DEXは一番戦闘に影響を及ぼさないステータスである。また、生産職の基本である〈錬金〉はMPを消費するため、HPよりもMPを上げる傾向にある。
ここで、選択肢がわかれる。
DEXとMPを上げた後、どうするか? だ。
生産活動が軌道に乗って、作れば作るほどお金を稼げるプレイヤーであれば、この2つに注力して能力を上げ、街から出ずに生産職として活躍できる。
しかし、そういうプレイヤーは一握りだ。
だいたいは、自分で素材を調達して、原価を抑える努力をしなければならない。つまりは、フィールドで採取をして回る必要がある。
そこで、必要になるステータスは、戦闘を回避する能力を高めるAGIか、DEXとMPを活用して、魔法職としてもそれなりに戦えるようなるINTか、となる。
結果、生産職でINTを上げているプレイヤーであれば、それなりに戦闘要員として参加できるが、そうでないプレイヤーは、そもそも戦うことを前提にしていない。とはいえ、エリアボスを攻略し、新規エリアに進む必要もあるので、全く戦えないというわけでもない。
AGI型の生産職は、戦えないなりにも回避盾としてパーティに加わるし、INT型の生産職は、魔法職としてパーティに加わる。ただ、基本は、高レベルの知り合いや、金銭で雇ったプレイヤーに手伝ってもらうことが前提となる。
そのため。どうしても、生産職のプレイヤーは最前線に到達するのは、ワンテンポ遅れてしまうのだ。
自力で新素材を集めたい生産職プレイヤーと、新素材を高値で売りさばきたい戦闘職プレイヤーのせめぎ合いみたいな構図となる。この辺のバランスによって、素材の価格も変動していくわけだ。
「チョコットの情報通り、第2エリアのモンスターは、状態異常に弱いのがわかったからな。闇属性魔法使えるやつを集めて、アイテムでの支援もあれば、生産職が2~3人いても大丈夫そうだ。配信で呼びかけてみたら、けっこう反応も良かったから、キャラバンに何人か、常駐できるくらいにはなりそうだ」
「おー。それは、すごい。さすがですね」
ハルマが心底感嘆する。自分だけでやっていたら、絶対に無理である。
「ただ、ハルマみたいに、ひとりで何でも作れるってやつはいないから、それなりに人数が必要になるけどな」
「配信でも、テゲテゲ、総ツッコミされてましたからね」
「あれは、さすがのおれも恥ずかしかったわ。ってか、ハルマができるなら、他のやつもできるって、思うじゃん!?」
「まあ、僕達、生産職の分野には疎いですからね」
「な、なんか、すみません」
テゲテゲが視聴者に、笑い者にされている場面が目に浮かび、恐縮してしまう。が、同時に、何故か「ぷふっ」と、吹き出してしまった。
「あ! ハルマ、このやろう、悪いと思ってないだろ!?」
「オモッテマスヨー」
「いーや。その顔はバカにしてる顔だ! だいたい、そのあからさまな棒読みはなんだよ!?」
「チガイマスヨー。ぷふっ!」
「あー!」
直後、照りつける太陽の下、気持ちの良い笑い声がいくつも響きわたるのだった。
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