Ver.4/第51話
「ハルマさん、ホントに大丈夫なんですか?」
対戦の準備のために、一度この場を離れることになったところで、チョコットが声をかけてきた。
相手は40人、それに加えてテイムモンスターも参加可能を宣言している。対して、ハルマはテイムモンスターを召喚しないとまで宣言してしまっているのだ。
チョコットも、ハルマの異常さは知っている。しかし、だからこそ、ハルマの強さの大部分を占めるテイムモンスターなしで、どうするつもりなのか、気が気ではなかった。
ナメてかかれる相手ではない。
先ほどまでケンカしていた相手は、ここ半年くらいで急拡大してきた問題児集団である。
他のゲームで違反を厭わず、追い出され、アカウント停止されを繰り返して、現在Greenhorn-onlineにたどり着いたような連中だ。
その中心にいるのが、フィクサ、サラシ、セゲツという3人の動画配信者である。この3人、勝手に自分達のことを三皇と称して、強者を気取っている。
チョコット達と同じ動画配信者であっても、提供する内容は真逆とも呼べるものだ。
チョコット達が苦楽を共有することを前提にしているのに対し、この3人は、不快感を押し付けることを前提にして行動する。
そんな動画を誰が見たいのかと、ハルマなどは思うのだが、一部の視聴者が、その行為に加担することで共犯者として苦楽を共にしているわけである。
そして、現在、彼らが重点的に行っているのが、PVPエリアでのPKである。
今回のように、数十人で取り囲み、いたぶることだけを目的にPVPを繰り返す。ただのPK行為であれば、襲われた方も死に戻りするだけで、被害も少ないのだが、彼らが悪質なのは、簡単に終わらせない点にあった。
勝負がついているというのに、PKしないのである。
PKが成立しないため、死に戻りもできない。
死に戻りができないので、連続してPVPが発生してしまう。
逃げようと思っても、数十人に囲まれているため、簡単には逃げられない。
何度も何度も、執拗に狙われ、Greenhorn-onlineを引退してしまったプレイヤーもいるほどだ。
では、彼らがいるPVPエリアに近寄らなければいいだけなのだが、PVPエリアには、リスクが伴う反面、メリットも存在する。
徘徊するモンスターが、強さの割に獲得できる経験値を多く設定されているのだ。
レベルは、どんどん上がりにくくなっていく。
少しでも、効率の良い場所で討伐したいと思うのは、自然な流れである。
さて、では、経験値の美味しいモンスターが徘徊するエリアで、プレイヤーを狙っている集団。レベルが低いということがあるだろうか?
当然、否である。
ゲームを始めたのは、〈聖獣の門〉イベントが行われていた頃であるにも関わらず、最初期に始めたプレイヤーと同等のレベルに達しているほどだ。
他人を犠牲にすることを厭わず、効率を最優先する。
「ハルマさん、ホントに大丈夫なんですか?」
改めて、チョコットは尋ねていた。
悔しいが、彼自身、人数のハンデがなくとも、まともに相手して確実に勝てる自信はない相手なのだ。
それでも……。
「んー? 負けるところは、想像できないですけどねえ?」
使い魔に対して、何やら操作していたハルマは、いつもと変わらぬ気の抜けた雰囲気で答えるだけだった。
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