Ver.4/第49話

「ハルちゃん、やっほー」

 マカリナの職人フレンドに会いに行く前に、ハルマは一度スタンプの村に戻って、目立つ仲間を置いていくことにした。

「ああ、皆さん、今からどこか行くんですか?」

 転移してすぐ、モカに声をかけられたが、その場には他にもネマキやテスタプラス達が集まっていた。この時間帯にそろっているのは、非常に珍しい。

「ネマキちゃんも、テスピーも、まだメンバーそろわないから、ただ雑談してるところ。ハルちゃんは?」

「俺は、これからリナの職人フレンドさん紹介してもらう予定です。色々新素材見つかったけど、数が少ないから、相談に乗ってもらおうと思って」

「ハルマ様ぁ。面白いアイテム出来たら、教えてくださいねー!」

「ははは……。わかりました」

 ハルマ達がミナドニークに進んだことは、すでに村の住人には知れ渡っている。そして、ハルマとマカリナが連日新素材を集めていることも、伝わっているため、ネマキの言葉もどことなく冗談に聞こえないトーンであった。

 簡単な挨拶を済ませ、マカリナを待たせるのは悪いと、準備を済ませると、すぐにファイアールへと転移することにした。


 転移を済ませ、マカリナにチャットを飛ばす。

「お待たせ。町に着いたよ」

「ほーい。一足先に鍛冶ギルドついてるから、待ってる。ソラマメさんも、もうすぐ来るって」

「おっけー」

 ソラマメというのが、今回紹介してもらうマカリナの職人フレンドである。他にも数人いるらしいのだが、現在インして、手が空いているのが彼だけだったらしい。

 町のほぼ中央にある転移場所から、大通りを進んでいけば、鍛冶ギルドのある建物はすぐに見つかる。


 ……のだが。


「ん?」

 大魔王ハルマであることを悟られないように、少し俯きながら歩いていると、目的地の先の方から喧騒が聞こえてきた。

 視線を上げてみると、けっこうな数の人だかりができている。100人以上は確実にいるだろうか。もしかしたら、200人を優に超えているかもしれない。この辺は、プレイヤー同士が重なって佇むことができるシステム上、正確に把握することは非常に困難だ。

「何か、突発的なクエストか?」

 そういうことが起こることがあることは聞いたことがある。ただ、こういった場合、クエストの報酬は大したものではないことがほとんどだ。

 それでも、町の防衛戦であったり、特定モンスターの大討伐だったりと、人手が必要なことが多く、参加するだけで何となく回りのプレイヤーと仲間意識が芽生え、仲良くなれるキッカケとなる。

 それは、クエスト報酬よりも貴重な存在になることも少なくない。

「あれ、チョコットさん達だよな?」

 事情を知っていそうな人物を見つけ、近寄っていくが、途中から何やら不穏な空気を感じ始めていた。

 突発クエストにしては、場の雰囲気が悪すぎる気がしたのだ。

 確かに、大きな目標を前にすると、意見の対立とかで、険悪なムードになることもあるのだが、そこはそれ、意見が対立する者が別々のグループを形成して事に当たればいいだけの話なのである。

 成し遂げる目的が同じなため、手段や方法が異なったところで、最終的には丸く収まるものだ。

 何となく、関わりを持たない方が良さそうだぞ? と、目的地を本来の鍛冶ギルドへと切り替えた瞬間だった。

 無視できない言葉が耳に届いたのだった。

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