第3章 フルレイドボス

Ver.4/第47話

『エリアボス〈クレブオアラクネ〉の討伐に成功しました。ミナドニーク地方に自由に進むことができるようになりました』


 マカリナの奥の手のおかげで、何とか討伐に成功したことで、新エリアに進むことが可能になった。

「こりゃ、また。ロシャロカ以上に山が強調されたエリアだねえ」

 モカは目の前に広がる光景を眺め、感嘆の声を上げる。

 山というよりも、壁のような険しい山脈がドーンと視界全体を占拠している。

「この距離感からすると、次のエリアに進むには、あれ越えないとダメっぽいですよ?」

 チップも、雲に隠れて頂上も見通せない壁のような山を見上げ、マップで全体像を確認する。これだけの標高がある山は、今までであれば、エリアを区切る境界線として使われているはずのものだ。

 更に、エリア内を闊歩するモンスターに目を向けてみると、見たことのないものばかり。しかも、一目で同格以上であることが窺えるものばかりだ。

「うへぇ。ポップしてくるモンスター、Cランク以上しかいねえ」

「ホントだ。あたしの〈発見〉でわからないってことは、Bランクまでいるわね」

 チップの勘が正しいことが、〈発見〉のスキルが育っているふたりによって証明される。

 Bランクのモンスター。それは、今までのエリアであればクエストボスクラスである。もちろん、このカテゴリー分けも幅が広く、ピンからキリまでいるため、あまり当てにはならないが、今の彼らが気軽に討伐できる相手ではないだろう。

 それなりにレベルの上がっているプレイヤーであれば、死力を尽くせば、何とか勝つことも可能。と、いった感じである。

「こりゃ、オレ達じゃ荷が重いな」

「ぼくは無理かなー」

 チップパーティとユキチは、早々に探索を諦める。彼らは、己の強さを高めることに喜びを見出すグループである。

 そのため、ただ勝つことだけを考えるなら、調査という名目の範囲で戦うことはあるだろうが、ここで重点的に活動するかと問われると、否という結論になったわけである。

 単純に、労力に対して得るものが少なすぎる。

 割に合わない。

 対して、ハルマとマカリナは、冒険の目的が彼らとは異なる。

「これは、新素材、期待できるわね」

「だな。さすがに、この辺まで来れば、Bランクの採取ポイント、見つかりそうだもんな」

 基本的に、ふたりとも、戦闘は求めていない。しかし、まだ見ぬ発見があるとすれば、恐怖心よりも好奇心が勝る人種である。

 結果、目を輝かせながら、新しいエリアを値踏みしている。

 そして、最後のひとりは、もっと異質であった。

「くはー! こーれは、存分に暴れられそうだね!」

 ただの戦闘民族。

 どんな格上が相手であろうと、負けることも気にせず突っ込んでいくのが、彼女だった。負けて、負けて、負け続けて、どうすれば勝てるかを模索し続ける。それが、彼女のプレースタイルだからだ。

 故に、ハルマとマカリナ同様、目を輝かせている。当然、同じ表現を使っているが、目の輝きの元にあるものは、全く別のものである。

 仲の良い者同士であろうとも、全てが一致するはずもない。

 こういう時に、互いのプレースタイルを尊重し合える仲間に出会えるかどうかというのも、MMORPGで遊ぶ上で重要なことだ。

 その点、スタンプの村に集った住人のことを思い浮かべ、ハルマは出会いに恵まれていると実感できるのだった。

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