Ver.3/第77話
実況の呼び出しに合わせて先に闘技場に現れたのは、テスタプラス達だった。
準々決勝では難敵のモカに辛くも勝利し、続く準決勝ではモカに劣らぬ火力の持ち主、ネマキを相手に勝利をもぎ取った。
ただ、チーフプランナーによる解説の通り、この2組は事前に対策をじゅうぶんに練ることができた。
加えて、動画配信者の3組も、調べるのに苦労はしなかった。
厄介だと思っていたのは、やはり、ハルマとマカリナの謎の多い2組だ。直前まで、この2組が出場圏内に入って来るかも予想がつかなかったのも、対策が遅れた理由のひとつである。
幸い、そのうちの1組とは、戦うことを避けられたが、残って欲しくないと思っていた方が次の相手である。
「なあ? やっぱり、俺たちの山、ハズレだよな? ラスボス相手にするの、3度目だぜ?」
パーティ唯一の中衛職である男性が愚痴る。
「ははは……。でも、モカさんにもネマキさんにも勝てたじゃないか。逆に、僕達ほど、大魔王になってもケチを付けられずに済むのも、いないんじゃないかな?」
「確かにね。あのオッパイとパジャマを倒せただけも、大魔王名乗っても良い気がするもの」
8人とも、勝利に対して気負いはなかった。
もちろん、ここまで勝ち進んだからには優勝したいと思っている。それでも、根底にあるのは、この8人で後悔なく戦い終えることだけだった。何しろ、この8人で大魔王を目指せるのは、おそらく最後だからだ。
ただし、それを成し遂げるのが、もっとも難しい相手であることも理解している。
決勝だけあって、テスタプラス達が登場して、すぐにハルマが呼び出されることはなく、実況による振り返りと紹介に時間を取られていた。
それでも、ようやく両者が闘技場にそろうことになった。
素早く、相手の布陣を確認する。
人数差は、自分達に有利であるが、それがアテにならないことは、モカ戦で実感している。
まずは、先に倒すべきNPCを探す。
「「「ドラゴン、オッケー」」」
「「「オッパイ、オッケー」」」
ヤタジャオースとズキンの位置を互いに確認し合う。第2回〈魔王イベント〉で、ほとんどのプレイヤーを蹴散らしていたのが、この2体だからである。
今回、新たに追加されているNPCについては、まったく情報がないため、対策の立てようもないが、まずは、この2体をどうにかしなければ勝機はないだろうというのが、8人の共通した見解だった。
できれば、全員で1体ずつ相手にしたいところだが、それを許してくれるはずもない。最悪なのが、この2体に陣形を崩され、分断させられてしまうことである。
カウントダウンの表示が出てから、ピリピリとした緊張感が湧き出してきていた。何が起こるのかわからない一発勝負。
『3……2……1……ゼロ! Greenhorn-online公式、初代大魔王が、ついに決まります!』
体を自由に動かせるようになった瞬間、慣れた動きで陣形を整えながら、前進を開始する。
「何かやってくるよ!」
最後尾のコヤが叫ぶまでもなく、変化はすぐに起こった。
「〈カーテンコール〉」
ひとつのスキルが発動し、ハルマの軍勢が赤いカーテンに包まれ、姿を消した。
「回復要員は後方で待機! 射程に入るなよ! 残りは前進! 10秒で出てくるはずだから、それに合わせて先制攻撃を狙う! キナコとレッドさんは、警戒を怠らないように!」
何をしてくる気なのか全く予想できないが、瞬間移動できるわけではない。で、あるならば、出てきたところを一網打尽にできるチャンスでもある。
テスタプラスは瞬時に判断すると、的確に指示を飛ばす。
鍛え上げられた機敏な動きによって、隊列を乱すことなくテスタプラス達はハルマの元に迫っていた。
そうしてカーテンが消失するのと同時に、今度は煙が視界を奪ってきた。
「構わず攻撃!」
煙で視界を塞いできたということは、そこにいる、という証拠でもある。
回復も兼ねる魔法職のふたりは後方で待機しているため参加できなかったが、大楯使いのふたりを除いて、テイムモンスターも総動員して一斉攻撃が放たれた。
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