Ver.3/第55話
「ここのボスは魔法攻撃主体で、全ての属性耐性が高め。ただ、物理攻撃には弱いから、ゴリとガッツンのコンビが壁をして、ミコトとソアラのコンビでカバーしながら接近して、あたしとファングのゴリ押しで前回は勝った。ちょっと前まで相手の魔法に耐えられなくて越えられなかったんだけど、魔法防御に優れた防具が見つかって、最近攻略が進んだところだね」
ゴリのテイムモンスターであるガッツンは、マシン系聖獣のガーディアン。ミコトのテイムモンスターであるソアラは、獣系聖獣のピグミーウィッチという手乗り猿。そして、スズコのファングは、マーダーシャークという水系聖獣だ。それぞれ、自身のプレースタイルを補助してくれる頼れる相棒である。
「そっか。属性耐性高めなのかあ。じゃあ、わたしの魔法剣とは相性が悪いから、スズちゃん達のサポートメインかな? でも、物理攻撃に弱いんだったら、ハルマ君とは相性悪くないんじゃないの?」
サエラは、第1回の〈魔王イベント〉で、単独で全勝した時のことを念頭に尋ねていた。
「俺、DEXにしかポイント振ってないんで火力ないんですよ。相手が物理攻撃主体だったらガードしてカウンターができるんですけど、魔法攻撃主体となると、それも難しそうですからね。ゴリさんみたいな壁ができる人がいないと、ちょっと、というか、かなり厳しいかな? って感じです」
「なるほど。色々、不落魔王の謎が解けてきたよ」
「どう? 今度の〈魔王イベント〉、一緒に不落魔王の攻略に参加しない? って、そういえば、サエラちゃん、〈魔王イベント〉で見た記憶ないな。それだけ強ければ、ピックアップ動画に取り上げられても不思議じゃないのに……」
「それ、俺も気になってたんですよね」
「ああ。わたし、対人戦って何だか怖いから、〈魔王イベント〉は見る専で、参加したことないの。それに、エンジョイソロプレイヤーには、あのイベントはそもそもハードル高いのよ」
「わかります! 対人戦、怖いですよね!」
サエラの答えに、真っ先に力強く反応したのはハルマだった。
「おいおい。そこの最強プレイヤー。こっちとしたら、不落魔王と対峙することになったら、どうやって生き延びるか、ってレベルなんだが?」
「いやいや。その最強プレイヤーの護衛してくれるのは誰ですか?」
「なーるほど。ってことは、現状、あたしらが最強? いや、ないわー。ハル君に勝てるイメージ全然わかないわー」
ハルマとスズコのやり取りに、その場が笑いで包まれる。
「ま、でも。ハル君がソロ最強なのは事実だけど、1年、長くても2年が限界かな?」
「そうなんですか?」
スズコの言葉に、疑問符を浮かべたのはゴリだった。
「ハル君の強さって、特殊でしょ? 個人の能力は、むしろ低い。それなのに勝てるのは、戦力が豊富だからってだけだもの。現状は、そのNPCがあたしらプレイヤーよりも強いから手がつけられないだけで、レベルが同じくらいになった時は、プレイヤーの方が強くなってるはずでしょ? そうなったら、ソロプレイヤーのハル君だと分が悪いのよ」
「なるほど……」
「理由は全然違うけど、テスピー達も今が全盛期なのは自覚してるから、〈大魔王決定戦〉は本気で取りにくると思うよ」
「ほえ? テスタプラスさん達がですか?」
今度はハルマが疑問符を浮かべる。
「そ。テスピーは確か、ゴリと同い年だけど、あいつのパーティメンバーは、半分は来年卒業のはず。と、なると、常に8人そろって行動するってのは難しくなるでしょ? こればかりは、どうしようもないからね。まあ、それを言ったら、あたしらもいつまで一緒に遊んでいられるかわからないんだけどね」
そこで、スズコは少しだけ寂しそうな表情を作ると同時に、別のことを思い浮かべていた。
確かに、ハルマが相対的に弱体化していく見立ては間違っていない。しかし、ハルマが現状維持で留まれば、の話だ。そして、留まるはずはないだろうということも容易に想像できていた……。
そして、弟の親友が、〈大魔王決定戦〉に出るかどうか悩んでいることも知っている。スズコからしたら贅沢な悩みであるとは思うのだが、自分から相談してくるのを待つ時期だと考えていた。
「さーて。どうなることやら……」
誰にともなく、つぶやくスズコだった。
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