Ver.3/第41話
「見つけた!」
フレンドチャットでモカから連絡が入る。
設定しておけば、同じエリアにいるフレンドの位置はマップ上に表示されるため、それを頼りに合流することになった。
「動かないね?」
遅れて駆け付けてきたユキチも、耳を立て、遠くを眺めるように立ち上がっているウサギを前に首を傾げた。ただのウサギではないことは、ピイン同様、ジャケットを身につけていることから明白である。何より、ハルマの〈発見〉のスキルに反応も出ている。
とはいえ、何も起こらないことにモカも不安を覚え始めていた。
「これ、だよね?」
「たぶん……」
しばらく3人でウサギを眺め、変化が起こるのを待っていると、ようやく動き始めた。
直立不動だったウサギが、徐にジャケットから懐中時計を取り出し、時間を確認したかと思ったら「あらやだ。遅れちゃう」と呟き、走り始めたのである。
「なんか、イースター・バニーって言うより、不思議の国のアリスの白ウサギって感じだね」
同じことを考えていたが、ユキチが代表して口にしていた。
表示されたクエスト名も『不思議なウサギの誘い』であった。
3人は追いかけながらクエストを受注する。ただ、ピインの時と違い、ウサギの速度は普通であり、モカもユキチも難なくついて行っている。
それでも、ハルマだけは走っても追いつけない速度であったため、すぐに諦めてシャムに頼ることにした。
追走すること5分。ウサギはどこかに向かってただ走り続けており、変化はない。しかし、変化は別のところで起こっていた。
「ウサギ、1羽だけじゃないんだね」
最初に気づいたのは、モカだった。
ユキチに気を使っているのか、コナに騎乗することなく並走していたと思ったら、視線を別の所に向けながら告げていた。
「ホントだ」
見てみると、ハルマ達と同じようにイースター・バニーを追いかけている別のグループが見つかった。
「ああー。いくつかの場所にウサギが配置されて、動き出す時間が決まってるタイプだったのか。それで待たされたんだね」
ユキチの考察に、なるほどと納得する。
案内されるエリアの出現時間が決まっているということなのだろう。確かに、たまたま入口を見つけて、ウサギを介さずに入り込んでしまうプレイヤーがいないとも限らない。特に、ハルマのような体質を持っているプレイヤーだと、そっちの可能性の方が高いくらいかもしれないのだ。
別グループのプレイヤーもこちらに気づいたらしく、手を振ってきたので、3人とも手を振り返して返答する。
こういう奇妙な連帯感が起こるのも、MMORPGの醍醐味かもしれない。
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