Ver.3/第29話

「別に、変化の術使わなくても、ふつうに強いのか……」

 翌日、ハンゾウの能力をもう少し詳しく把握しておくために、手頃なモンスターを見つけては戦っていた。

 ハンゾウの使う武器は特殊なもので、円月輪と呼ばれるブーメランと短剣、両方の性質を持つものだった。また、忍者らしく、手裏剣やくないといった投擲武器も使用する。当然、くないは短剣としても使用可能だ。

 ステータスが低いため動きは遅いのだが、後の先に特化した動きで、相手の攻撃を躱し、逸らし、封じ、様々な方法でカウンターをとっていた。ただ、自分が攻撃を受けることは少ないのだが、ハンゾウの火力自体は低いため、相手を倒すには手数が必要なようである。

 また、物理攻撃に対してはハルマ同様めっぽう強いが、魔法や属性攻撃といったものは対処できないらしく、苦手なようである。

 とはいえ、彼は不死の術によって死なない体になっている。

 アンデッドの体となっているため、回復魔法や回復薬でダメージを受けてしまうのだが、その反面、HPがゼロになっても自動的に蘇生するのだ。蘇生するまでに一定時間かかるため、その間、戦闘に参加できない――とはいえ、15秒程度である――が、大したデメリットにも感じていなかった。

 唯一面倒なことになりそうだな、と思ったのは、この場合、変化の術は強制的に解けてしまうことだった。

 だが、変化の術を使っているハンゾウを倒すことは、極めて困難であろう。

 単純に、同じことをズキンやニノエのステータスで出来るだけでもじゅうぶんに驚異的な強さを発揮するのだが、変化した相手が使えるスキルや魔法まで使うことができるようになるからだ。つまり、変化した相手の強さに、ハンゾウそのものの技術が追加されているようなものなので、オリジナルよりも強い可能性まである。

 装備までは変えることができないので、武器由来のスキルや、種族特有のスキルといったものはダメらしいが、それでも十分すぎる性能といえよう。


 そして、ハンゾウも強力だったが、ハルマにとって大助かりだったのが、エルシアの能力の方だった。

「いやー。採掘中って、近くにモンスターがポップするとウザいけど、結界のおかげで作業が楽! しかも、ズキンやヤタジャオースがついて来られない場所でも安心して採掘できる」

 エルシアの結界術は、何の媒介も使わなければ15分で効果が切れるが、結界石と呼ばれるアイテムを併用すると、結界内にいる間は持続するというものだった。また、結界石を使った場合、30分以内なら離れても持続したままであるらしい。

「結界石を作るための素材がちょっとレア物だけど、簡易のセーフティエリアが作れると思えば、安いものだもんな」

 採掘だけであれば15分もあれば作業は終わるので使う必要もない。しかし、遠くのダンジョンなどに挑戦する場合、近くに拠点があるかどうかで、だいぶ攻略方法も変わってくるはずだ。場合によっては、ダンジョンの中に拠点を構えることもできるかもしれないのだ。

「持ち運べる拠点って何かなかったかな? テントみたいなアイテムがあっても、不思議じゃないんだけどな」

〈大工の心得〉を使って、簡易の拠点を建てることは可能だ。しかし、建材を使い捨てにするのはもったいない。何しろ、所有地以外に建てた建造物は、ハルマが転移を使うか、ログアウトすると消失してしまうからだ。

「うーん。また作りたい物が増えたな」

 未だ情報すら見つかっていない、HPとMPを同時に回復させるハイブリッドポーションだけでなく、簡易拠点のレシピ発見も、やることリストに追加されたのだった。

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