Ver.3/第17話
全員そろって館に近寄ると、やはり廃墟ではないことが判明した。
「灯りが点いてるってことは、ダンジョンか? 誰かの所有地ってことはないよな?」
朽ちた雰囲気はあるが、入口の扉もしっかりしており、かなりの大きさがある。
「所有地だったら、フラッと来て入れるようなことはないよ。それより、こんなに大きいのに、何で今まで見つかってないんだ? 大きさだけなら、雨降りの迷宮と大差ないぞ?」
ハルマは周囲を見回しながら疑問を口にする。
「まあ、一番可能性が高いのは、出現条件がある、だろうな」
チップに続いて、ユキチも口を開く。
「そうだね。今の状況が条件を満たしてるとすると、夜と霧が重なったタイミングじゃないと出現しない、とかかな? ぼく達の人数も関係するかなー? いや、その可能性は低いかな? 夜に森の中に入るなんてハル君みたいな人じゃないと無理だろうし、しかも霧が重なるなんて滅多にないだろうから、見つかってなかったとしても不思議じゃないかも。特に、この辺は初心者向けのエリアだしね」
「そうだね。誰もこれ関連のクエストを受けていないっぽいから、ユキチちゃんの推測が正しいかも。でも、〈聖獣の門〉と〈ニューイヤーイベント〉で、けっこうこの辺のフィールドもにぎわってた時期があるから、それでも見つかってないとなると、もっと条件は厳しいのかも」
チップの考察にユキチが考察を重ね、シュンも同意してみせる。
「ってことは、何かしらのイベントかクエストがあるのは間違いなさそうね」
アヤネもすっかりやる気の表情だ。
しかし、やる気を見せる面々に対して、生産職のふたりは逃げ腰である。
「なあ? 俺達も行かなきゃダメか?」
目の前の謎の館よりも、周囲にある廃屋を建て直して〈大工の心得〉を取得できるかの方が重要なのだ。しかし、この館があるとわかった以上、可能性は低いと言わざるを得ないだろう。
モヤシも自分の戦闘力の低さを心配して、ハルマの後ろでそわそわしている。
「おいー。ユキチちゃんの読み通り、人数が条件に入ってる可能性は低いだろうけど、ゼロじゃないんだ。ハルマにとってはよくあることかもしれないけど、オレ達にとっちゃ、こんなチャンス滅多にないんだぜ? 協力してくれよ」
「そーだよ。こんな面白そうなチャンス、見逃すのはもったいないよ」
チップとユキチの協調具合に、このふたりの方が兄妹っぽいなと感じてしまっていた。
「はあー。わかったよ。でも、何が起こっても知らないからな? モヤシ君も、諦めてくれ」
「う……。はあ。わかりました。がんばります」
大きな体をショボンとさせるも、切り替えも早いのか、即座にテイムモンスターを召喚すると、いつでも戦える準備を整えていた。
ハルマもそれに倣い、意識を怪しい館へを向けるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます