閑話 Greenhorn-onlineチャンネル
Ver.3/第8話
春休みを直前に控えた週末の21時。
Greenhorn-onlineのプロモーションビデオが流された後、画面はスタジオに切り替わる。
映っているのは、見慣れたMCのクラッチだ。
「始まりました。2か月ぶりのGreenhorn-onlineチャンネル公式生放送! お久しぶりです。MCを務めさせていただきます、声優のクラッチです。本日も、よろしくお願いします!」
番組にはいつもと同じく、プロデューサーの吉多公介とディレクターである安藤雄仁も同席している。
「先日終了したばかりの〈魔王イベント〉ですが、今回はテイムモンスターも加わって、更に盛り上がりましたね!」
いくつかの紹介の後、クラッチは切り出した。答えるのは、いつもの通り吉多の方である。
「そうですねえ。ルールもガラリと変わって、どうなるかな? とは思ったんですが、全勝魔王が5組も出るとは予想外でしたかね。おかげで、最後まで大いに楽しんでいただけたようで、良かったです」
「そこですよ! 今回、5組も全勝魔王が誕生したわけですけど! 相変わらずハルマさん驚かせてくれますねぇ。何ですか、あれ? 聞いちゃっていいのかわかりませんけど、あの方、本当にソロプレイヤーなんですか?」
クラッチは、多くの視聴者が気にしていることをズバッと口にした。
「ハハハ……。あれでも、プレイヤーキャラはハルマさんひとりなので、れっきとしたソロプレイヤー扱いなんですよ。まあ、あれだけNPCを引き連れる方が現れるとは、こちらとしては考えてもいなかったですけどね」
バツが悪そうに視線を安藤に向ける。
「そうだねえ。ハルマさんが連れてる中に、通常のプレーで仲間にできるNPCはいないんじゃないかな? テイムモンスターですら、イレギュラーなタイプだからね。私が発注した記憶だと、かなり条件が複雑な上に一筋縄ではいかないフラグを立てないといけないものばかりのはずなんだけど……。でも、絶対に見つけられないってわけじゃない、ということもハルマさんが証明してくれているので、これはこれで嬉しく思ってますよ? まだまだ見つかっていないクエストも多いですからね」
「え? ハルマさんのテイムモンスターって、私達のと違うんですか?」
「そうだねえ。詳しくは教えられないけど、ちょっと珍しいかな? でも、同じようなことになっているプレイヤーさんが他にいないわけでもないので、唯一無二というほどではないですね」
「そうなんですね。もしかしたら、ハルマさん、そういったコツみたいなものを知ってるのかもしれないですね」
「そうかもしれないですねえ。僕も知らないクエストとか、気づいたら見つけちゃってますからね」
ディレクターと違い、プロデューサーである吉多はゲーム内の仕様を全て把握しているわけではない。彼の仕事は金銭面の管理が主であるからだ。
「ハハハ……。それは、私も同じだよ。私が知らないというと語弊があるけど、全く覚えていないクエストとか知らない内にクリアしちゃってるからね。でも、第1回の〈魔王イベント〉以降、そういったことはハルマさんに限らず、増えたかな」
「あー。そうですね。ハルマさんとモカさんが、皆さんの想像以上にレベルが低かったこともあって、スキルやクエストを探す方は増えましたね。我々としても、レベル上げに時間を費やすよりは、そういった方向に時間をかけてもらえるように作り込んだ部分もあるので、嬉しい傾向ですよね」
「そうだね。それに加えて、テイムモンスターも普及したことで変化も生まれたのは、良い傾向だろうね」
「と、いうことは、やはり、今後の攻略にテイムモンスターは欠かせない要素、ということですか?」
「そうなりますかね……。と、いうわけで、新しいコンテンツの発表です!」
「おー! 今日の本題は、テイムモンスターに関することなんですね」
「そうですね。他にもいくつかありますが、まずはこれから発表したいと思います。スライドをお願いします」
そう告げながら吉多が右手で手刀を切るような仕草をすると、画面が切り替わり、ひとつのコンテンツが発表された。
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