Ver.2/第70話

 クリスマスイブの夜、にぎやかなパーティは続いていたが、20時を迎えるのと同時に使い魔のコウモリに報せが届いた。

「お!? 来たな」

 チップが目敏く気づき、いち早く行動に移ると他の面々もそれに続いた。

「イベント終わったばかりなのに、次のイベント?」

「ホントだな。まあ、大々的なイベントっていうよりも、年末年始のちょっとしたにぎやかしって感じだけど」

「あー。でも、これでタロットカード関係で余ってたのにも、使い道ができるのね」

 ハルマの驚きに、チップ姉弟が応える。

 ニューイヤーイベントと題された告知には、各地に新年を祝うケセランパサランと呼ばれる何だかよくわからないものが出現するので見つけてみよう、という、何だかよくわからない内容が記されていた。

 ただ、ケセランパサランを見つけると〈魔法のおしろい〉というアイテムが手に入り、持っているタロットカード2枚を白紙のカード1枚、もしくは、タロットカードの破片10枚を白紙のカード1枚に塗り替えることができるようになるらしい。

 また、白紙のカードは今後追加されるアイテムを使って、任意の大アルカナのタロットカードに変えることができるようだ。

 ちなみに、このお知らせと一緒に、クリスマスプレゼントと称して各プレイヤーに〈魔法のおしろい〉が2つ配布されていた。

「ハルマの仲間達と同じ扱いだとすると、テイムモンスターは複数連れて歩けるはずだから、今後のことも考えるとできるだけ集めておきたいか」

 チップはすでにやる気になっている。

「そっか! テイムモンスター、1匹だけじゃなくていいのか! わたしもハル君みたいに、ぞろぞろ連れて歩きたい!」

 チップの言葉で気づいたらしいアヤネも、目的はだいぶズレているが、やる気が湧いてきたようである。

「問題は、ケセランパサランがどのくらい配置されるかよねえ。追加アイテムの入手方法も気になるし」

 スズコだけはいたって冷静に分析している。

「どうかしらねえ? ニューイヤーイベントってくらいだから、それなりにサービスしてくれるんじゃないかしら?」

「そうっすね。テイムモンスターの普及はケチらなさそうですし」

 ミコトとゴリは楽観的だ。

「そうだとイイんだけど……。ケセランパサランが出てくるゲームって、だいたいレアモンスターの扱いなのよね」

 スズコの言葉にそれぞれ思い当たる節があるのか、「うっ」と、言葉に詰まる。

「ま、地道に探すしかない、ってのに変わりはないんだけどね」

 スズコの自虐的な笑みで、この話は一区切りとなった。


「んで? 他には……」

 ニューイヤーイベントの他にもいくつか情報が記載されており、最後の方にもうひとつ目玉と呼べる情報があった。

「お? ニューイヤーイベント終わったら、Greenhorn-onlineチャンネルの公式放送やるのか。ってことは、次の魔王イベントもそろそろなのかな?」

「そういえば、そろそろあってもいい頃ね。でも、ハロウィンも聖獣の門も、今度のケセランパサランも、戦闘系って感じのイベントじゃないから、選抜どうするのかしら?」

「そういや、そうだな。今回はシード枠なしってことか? でも、正直モカさんとハルマが出ないと、盛り上がりに欠けるんじゃね?」

「何で俺が含まれるんだよ?」

「アホか。お前、前回無敗だったの忘れたのか?」

「うっ……。いや、まあ、確かにそうだけど……。あれから別に目立ったことはやってないはずだぞ?」

 ハルマの言葉に、その場の視線はヤタジャオースとニノエに向けられる。

 そのことに気づいたのか、ハルマの声は小さくなっていく。

「やって、ない……はず、です。はい」

「ふふふ。まあ、それも放送を待つしかないわね」

 声だけでなく、体まで小さくなっていくハルマを見て、改めて笑い声に包まれるのだった。

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